石油コンビナート等特別防災区域にある大型タンクには、敷地内距離が求められます。
ただし書には、地形上火災が生じた場合においても延焼のおそれが少ないことという事情が置かれています。
では、敷地の外が原野であれば延焼のおそれが少ないといえるのでしょうか。
この記事では敷地内距離の特例と保安距離をめぐる回答を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
敷地の外が原野なら、燃え移るものがありません。
特例は使えるでしょうか。
そこが分かれました。
工業専用地域内の原野は認められ、無指定地域内の農作地及び原野は認められません。
同じ原野なのに、なぜ結論が違うのでしょうか。
用途地域の違いです。
工業専用地域なら住宅は建ちませんが、無指定地域では将来何が建つか分かりません。
この記事でまとめて解説します!
- 工業専用地域内の原野は延焼危険の媒介がないものとして認めてさしつかえない
- 無指定地域内の農作地及び原野は認められない
- 既設の屋外タンク貯蔵所の上空に特別高圧架空電線を設置することは認められない
- 同一敷地内でのタンクの移設も消防法第11条第1項後段に規定する変更許可を要する
- 敷地の外縁が道路や護岸等に接する部分には防火上有効なへい又は水幕設備の措置を要する
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目次
工業専用地域内の原野は延焼のおそれが少ないと認められる

昭和53年4月13日付け消防危第48号は、各都道府県の消防主管部長あてに出された回答です。
石油コンビナート等特別防災区域内の大型タンクについての取扱いが示されました。
そのうえで、敷地の外にあるものが延焼危険の媒介がないといえるかを尋ねました。
挙げられたのは二つの土地です。
工業専用地域は、都市計画法により住宅を建てることができない地域です。
いま原野であるだけでなく、将来も燃えるものが並ぶ可能性が低いという点が効いています。
将来まで見られます。
工業専用地域なら、認められるのですね。
住宅が建たない地域だからです。
敷地の周りの用途地域を、都市計画の図で確かめてください。
無指定地域内の農作地及び原野は認められない

二つめの土地については、結論が変わりました。
同じ「いま何も建っていない土地」であっても同じではありません。
無指定地域は用途地域の定めがない地域で、住宅も工場も建てられます。
現時点で農作地や原野であっても、将来そこに建物が建つ可能性があります。
敷地内距離の特例は、一度認めれば長く続きます。
そのためいまの状態ではなく、続く状態かどうかで判断されているという整理になります。
用途地域で分かれます。
将来の可能性まで見るのですね。
特例は長く続くためです。
周辺の開発の動きも、把握しておきましょう。
タンクの上空に特別高圧架空電線を設置することは認められない

同じ日付の回答には、送電線についての項目もあります。
タンクの上を電線が通るという計画でした。
対象は第4類第2石油類(灯油)153.5キロリットルの屋外タンク貯蔵所でした。
計画は、A市郊外からB株式会社構内を経てC変電所まで11万ボルトの特別高圧架空電線を設置するというもので、経路のB社構内には保安距離規制対象になる屋外タンク貯蔵所が6基ありました。
照会側は保護措置も用意しています。
屋外タンク貯蔵所の周囲に、鉄骨造の保護施設を設置するとし、さらに当高圧架空電線が強風等で切断された場合、その瞬間は火花を発するが、緊急自動送電中止機構が機能し送電を中止すると説明しました。
保護施設を設け、切断時に送電を止める仕組みまで備えても、通りませんでした。
上空も対象です。
タンクの上を電線が通る計画は、認められないのですね。
保護の措置を示しても難しいとされました。
経路の計画は、早めに調整してください。
同一敷地内での移設も変更許可を要する

昭和52年10月12日付け消防危第149号は、福島県からの照会に答えたものです。
手続についての短い問いです。
回答はお見込みのとおりです。
同じ敷地の中で動かすだけでも、位置の変更にあたります。
敷地が変わらないから届出でよい、とはなりません。
位置が変われば、保安距離も保有空地も、隣のタンクとの関係もすべて変わります。
そのため許可の対象になるという整理です。
敷地内でも許可です。
同じ敷地の中で動かすだけでも、許可が要るのですね。
位置の変更に当たります。
移設の計画は、手続きの期間を見込んでください。
敷地の外縁が道路や護岸に接する部分には措置を要する

同じ昭和53年4月13日付け消防危第48号には、水幕設備についての項目もあります。
石油基地が港湾施設に指定されている区域での取扱いです。
この港湾施設部分が規則第1条第1号ニに該当するかが問われ、回答は該当しないとしたうえでただし、臨港交通施設である道路部分は、危険物の規制に関する規則第1条第1号ハに該当するものであると付け加えています。
ここでいう措置とは、敷地内境界に防火上有効なへい又は水幕設備を設置することです。
道路も護岸も荷さばき地も緑地も、いずれも措置が必要とされています。
接する側は要ります。
道路に接する部分には、措置が要るのですね。
部分ごとに扱いが分かれます。
敷地の外縁の状況を、図面に整理しておきましょう。
よくある質問
まとめ
- 石油コンビナート等特別防災区域の1,000キロリットル以上の既存タンクには敷地内距離が求められる
- ただし書により地形上火災が生じた場合においても延焼のおそれが少ないこと等の事情があれば特例が認められる
- 工業専用地域内の原野は延焼危険の媒介がないものとして認めてさしつかえない
- 無指定地域内の農作地及び原野は認められない
- 既設の屋外タンク貯蔵所の上空へ特別高圧架空電線を設置することは認められない
- 鉄骨造の保護施設や緊急自動送電中止機構を備えても結論は変わらなかった
- 同一敷地内での移設も位置の変更として消防法第11条第1項後段の変更許可を要する
- 敷地の外縁が道路や護岸や荷さばき地や緑地に接する部分には防火上有効なへい又は水幕設備の措置を要する
いまの景色ではなく、これから建つもので見られるのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
敷地内距離の特例や移設の手続も、所轄消防署との事前協議からお手伝いします。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第11条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第11条・第23条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第1条・第19条の3 e-Gov法令検索
- 石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84号) e-Gov法令検索
- 既設屋外タンク貯蔵所の保安距離について(昭和53年4月13日付け消防危第48号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 危険物の規制に関する疑義について(昭和53年4月13日付け消防危第48号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 特定屋外タンク貯蔵所の水幕設備の設置について(昭和53年4月13日付け消防危第48号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 同前(昭和52年10月12日付け消防危第149号 危険物規制課長から福島県あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




