倉庫の中で火元になりそうな場所を挙げてくださいと言われて、すぐに指を差せるでしょうか。
大量の商品と、それを動かす機械と、あとから付け足された電気設備が同じ屋根の下に並んでいます。
そして倉庫には、従業員が何年も足を踏み入れていない空間が残っていることがあります。
この記事では倉庫の火災危険性を把握する通知の中身を解説します。
うちは倉庫なので消防計画は簡単でよいと言われてきました。
本当にそれで足りているのか気になっています。
倉庫を名指しにした消防庁の通知が出ています。
火元になり得る場所を書き出すところから始めてください。
火元になり得る場所というのは、火気を使う場所のことでしょうか。
うちの倉庫では火は一切使っていません。
火を使わなくてもフォークリフトや電気設備が火源になります。
通知はそこまで見なさいと言っています。
- 令和3年の消防庁の通知が倉庫の火災危険性を事前に把握するよう求めています。
- 対象は令別表第1(14)項などの防火対象物で収容人員が50人以上のものです。
- 見るのは多量の可燃物がある場所と火源になり得るものがある場所です。
- あわせて初動対応が困難な場所も確かめることとされています。
- 把握した内容は消防計画に書き足して教育訓練で従業員に伝えます。
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目次
倉庫の火災危険性を把握せよという通知はなぜ出されたのか

まず消防庁がなにを見てこの通知を出したのかを押さえてください。
通知に添えられた統計によると、平成21年から平成30年までの10年間に発生した倉庫火災は5,229件で、そのうち2,209件(42.2%)が全焼に至っています。
延べ面積が10,000平方メートル以上の倉庫にしぼると火災は118件と少ないのですが、1件当たりの焼損床面積は716平方メートルで、倉庫火災全体の120平方メートルの約6倍にふくらみます。
1件当たりの損害額も7,630万円で、けた違いに大きくなります。
つまり倉庫の火災は数が増えているのではなく、一度起きたときの被害の大きさが問題になっているということです。
大きな倉庫ほど燃えると止まらないということでしょうか。
設備は入れているつもりなのですが。
通知が求めているのは設備を増やすことではありません。
燃え出す前にどこが危ないかを知っておくことです。
どの倉庫がこの通知の対象になるのか

通知はその線をはっきり引いています。
令第1条の2第3項第1号ハは、倉庫を含む非特定の用途について収容人員が50人以上なら防火管理者を定めなければならないと決めています。
つまり(14)項の倉庫についていえば、通知の対象はすでに防火管理者を選任して消防計画を届け出ている倉庫と重なります。
新しい義務が増えたのではなく、いま持っている消防計画の中身を厚くしなさいという話だと読めます。
なお通知は、収容人員が50人未満の倉庫であっても消防本部の判断で同様に指導してよいとしているので、規模が小さいから関係ないとは言い切れません。
倉庫が入っている複合用途のビルも対象になるのですね。
階の一部が倉庫という建物を管理しています。
倉庫として使われている部分があれば対象に入ります。
建物全体の収容人員で判定してください。
倉庫のどこを確認して火災危険性を把握するのか

見る場所が二種類に分けて書かれています。
通知が指定しているのは、消防計画にもともと定めてある自主検査と訓練の場です。
そこで見るものが二種類で、ひとつは火災発生の可能性のある場所、もうひとつは初期消火などの初動対応が困難な場所です。
前者は商品や可燃性の断熱材やパレットのように可燃物が積み上がっている場所と、フォークリフトや電気設備やヒーターのように火源になり得るものが置かれている場所を指します。
後者は従業員が普段立ち入ることのない、そもそも空間として認識されていない場所を指していて、ここを言葉にしてある通知はほとんどありません。
つまり自主検査の見る項目を増やせばよいのですね。
そこなら消防計画にもう書いてあります。
そのとおりです。
検査表に見る場所の欄を足すところから始めてください。
実務で見落としやすいのはどこか

ここが読者にとっていちばん重い部分です。
通知によると、冷凍庫の点検用通路内に結露防止対策として敷設されていた電熱線ヒーターが出火箇所として推定されています。
その上部には難燃性でないウレタンフォームが剥き出しで吹き付けられていて、これが延焼経路となり、隣接する冷凍庫のサンドイッチパネルに燃え移ったことが延焼拡大の要因の一つである可能性が考えられるとされました。
点検用通路は、まさに通知が言う従業員が普段立ち入ることのない空間です。
そしてもうひとつの落とし穴が通報で、黒煙を見つけた従業員は商品の移動と初期消火を優先したため、通報までに黒煙発見から18分がかかっています。
荷物を守ろうとして通報が遅れたということですか。
従業員を責められない気がします。
だからこそ手順として決めておく話になります。
迷わせない書き方を消防計画に置いてください。
明日からなにを確認すればよいのか

いま持っている書類に足していくだけで形になります。
足す欄は、可燃物が積み上がっている場所と、火源になり得るものが置かれている場所と、普段立ち入らない空間の3つです。
次に建物を使い始めたあとで増設した電気設備を洗い出します。後付けのヒーターや送風ファンやその配線は、竣工図にも消防計画にも載っていないことがあるからです。
そのうえで、火や煙を見つけた人がその場で通報するという順番を消防計画に書き、訓練でそこだけを繰り返します。通報を先にという一行があるかどうかで、結果が十数分変わります。
テナントが複数入っている倉庫では地区隊がばらばらに動きがちなので、合同での訓練まで計画に落としておくと通知の趣旨にかないます。
検査表と消防計画と訓練が一本につながりました。
今週の自主検査から欄を足してみます。
その順番で問題ありません。
消防計画を直したら届出も忘れないでください。
よくある質問
まとめ
まずは冷凍庫の点検用通路から見に行ってきます!
見つけた人がその場で通報する順番まで書き足してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 倉庫における火災危険性の把握等について(通知)(令和3年3月26日 消防予第132号)
- 大規模倉庫における効果的な訓練の実施推進について(平成30年1月24日 消防予第20号)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2第3項・別表第一
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





