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立入検査の頻度はどうやって決まるのか|法令の規定と優先順位の付け方を解説

立入検査の頻度と優先順位の決まり方を解説するアイキャッチ画像

立入検査はいつ来るのか分からないという声をよく耳にします。
実際に消防法を見ても、実施の周期を定めた条文はありません。
その代わりに、消防本部ごとの実施計画と優先順位の付け方で頻度が決まっています。
条文の構造と優先順位の考え方を知れば、次の検査への備え方も変わってきます

うちは長年、消防の立入検査を受けていません。
このまま何も言われないなら安心していいのでしょうか。

そうとは言えません。
法律には検査の周期を定めた規定がなく、順番が来ていないだけの可能性があります

頻度に基準がないなら、いつ来るかは運次第ということですか。

運ではありません。
消防本部は優先順位を決めて計画的に検査しています。
その決め方から見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法第4条は「火災予防のために必要があるとき」に立入検査を行う権限を定めた規定であり、検査の周期そのものは定めていません
  • 実施頻度や優先順位は、消防本部ごとの実施計画と規程で決まります
  • 火災が発生した場合の人命の危険が高い防火対象物ほど、優先的に検査されます
  • 消防法令違反や点検報告の不備がある防火対象物は重点的な立入検査の対象になりやすいです
  • 検査が来ていないことは免除ではなく順番が来ていないだけと考えるのが安全です

消防法第4条の権限の要件から優先順位の検討と重点対象への検査と長期未実施の防止までの流れを示した図解

立入検査には決まった周期があるのか

建物の入口に虫眼鏡を添えて立入検査の対象になることを示したイメージ
消防法が消防職員に与えているのは、立ち入って検査する権限です。
その条文の中に、実施の周期を定めた言葉はありません。
第四条 消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防職員(消防本部を置かない市町村においては、当該市町村の消防事務に従事する職員又は常勤の消防団員。第五条の三第二項を除き、以下同じ。)にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。ただし、個人の住居は、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立ち入らせてはならない。
条文が定めているのは要件であって周期ではありません
「火災予防のために必要があるとき」という要件を満たせば、消防長又は消防署長の判断で立ち入って検査させることができるという構造です。
つまり何年に一回という下限も上限も、この条文には書かれていません。
実際の実施頻度は、総務省消防庁が公表している立入検査標準マニュアルを踏まえて、各消防本部が規程と実施計画を定めて運用しています。
自分の建物にいつ来るかを条文から逆算することはできないと知っておいてください。

条文を読んでも、次にいつ来るかは分からないんですね。

そうです。
実施計画を立てているのは消防本部の側で、こちら側から周期を知る手段はありません。

どんな防火対象物が優先して検査されるのか

二つの外部階段を持つ建物と外部階段が一つしかない建物を並べて優先度の違いを示したイメージ
すべての防火対象物が同じ扱いを受けるわけではありません。
消防庁の資料は、優先して検査すべき対象の特徴を具体的に挙げています。
  • 消防法令に違反している防火対象物
  • 直通階段が一つしかない防火対象物(避難路が限られる建物)
  • 自力での避難が困難な人が利用する社会福祉施設など
優先されるのは火災時の人命の危険が大きい建物です
消防庁の資料は、消防法令に違反している防火対象物や、避難に使える階段が一つしかない防火対象物を、優先的かつ重点的に検査すべき対象として挙げています。
避難階段が一系統しかない建物は、その一系統がふさがれると逃げ場が無くなるため、火災が発生した場合の人命の危険が高いと判断されます。
自力での避難が難しい人が利用する社会福祉施設なども、同じ理由で優先度が上がります。
自分の建物がこうした特徴に当たるかどうかは、日頃の避難経路の確保にそのまま跳ね返ってくる話です。

うちは避難階段が一つしかない古いビルです。優先される側ということですか。

そのとおりです。
避難経路をふさがない管理を普段からしておくことが、いちばんの備えになります。

優先順位はどんな視点で判断されるのか

高さの違う書類フォルダが並ぶ中から一つを手前に引き出して優先順位を示したイメージ
優先順位の付け方も、消防庁の資料に具体的な視点が示されています。
建物の用途や規模だけで決まるわけではありません。
  • 過去の立入検査で指摘した違反が是正されているかどうか
  • 防火対象物点検や消防用設備等の点検報告がきちんと出されているかどうか
  • 火災が発生した場合の人命の危険や社会的な影響の大きさ
  • 避難階段が一つしかない防火対象物かどうか
  • 地域の気候や地理といった特性
  • 建築基準法令の基準に適合しているかどうか
  • 消防法令の改正で新しい規定の対象になった防火対象物かどうか
優先順位は用途や規模だけでなく複数の視点を組み合わせて決まります
過去に指摘した違反の是正状況や、点検報告がきちんと出されているかどうかも、優先順位を左右する材料です。
つまり検査を受けた後の対応や、点検報告書を出しているかどうかが、次の検査の時期にも影響しているということです。
建築基準法令の基準に適合しているかどうかまで考慮されるため、消防だけでなく建築側の状態も見られていると考えておいたほうが安全です。
是正の記録と点検報告をきちんと残しておくことが、遠回りに次の優先順位を下げることにつながります。

検査のあと違反をきちんと直しているかどうかも、次の順番に関係するんですね。

そうです。
是正の記録を残しておくことが、いちばん地味で確実な備えです。

検査が来ないことを安心の材料にしてよいのか

五棟並んだ建物の列の中に一棟だけ間隔が空いている様子で検査待ちを示したイメージ
検査の連絡がしばらく無いと、つい安心してしまいがちです。
ですが消防庁の資料が前提にしているのは、まったく逆の考え方です。
  • 令別表第一に掲げる防火対象物は長期間検査が未実施のままにならないよう実施計画を立てること
  • 火災が発生した防火対象物には直ちに立入検査を実施すること
来ていないのは免除ではなく順番待ちだと考えるのが安全です
消防庁の資料は、防火対象物が長期間にわたって立入検査を受けないままにならないように、実施計画を立てることを消防本部に求めています。
つまり検査が無い期間が続いているのは、優先順位がまだ回ってきていないだけで、対象から外れたわけではありません。
一方で、火災が発生した防火対象物には直ちに立入検査が行われ、再発防止の視点から重点的な検査に切り替わります。
事前の連絡があるかどうかも法令には定めがなく、本部ごとの運用に委ねられている点も覚えておいてください。

何も言われていないだけで、順番がまだ来ていないだけかもしれないんですね。

そのとおりです。
来ていないことを理由に管理を後回しにしないのが安全です。

日頃から何を整えておけばよいのか

消火器と点検記録を置いた避難経路の通路で日頃の備えを示したイメージ
優先順位の付け方が分かれば、日頃の備え方も見えてきます。
消防庁の資料が重点的な検査の対象として挙げる違反の裏返しが、そのまま備えになります。
  • 防火管理者を選任し届出を済ませておく
  • 防火対象物点検や消防用設備等の点検結果をきちんと報告する
  • 避難口や階段に避難の支障になる物件を置かない
  • 防火戸やシャッターの閉鎖を妨げる物件を置かない
  • 消防用設備等を技術上の基準どおりに維持管理する
重点的に検査される違反の裏返しが、そのまま備えるべき項目になります
防火管理者の未選任や点検報告の未実施は、優先順位を上げる典型的な要因として挙げられています。
避難口や階段をふさぐ物件、防火戸の閉鎖を妨げる物件も同じ扱いです。日頃の見回りでこれらを無くしておくだけで、優先順位は上がりにくくなります。
消防用設備等の維持管理も同様で、技術上の基準どおりに保たれているかを点検のたびに確認しておくべきです。
明日からできることは、上の一覧を自分の建物に当てはめて、当たっているものから先に手を付けることです。

何か一つでも当たっていたら、優先順位が上がってしまうということですね。

可能性はあります。
日頃の点検記録を残しておくことが、いちばん確実な備えです。

よくある質問

Q立入検査には決まった年数の基準があるのですか?
A消防法第4条は「火災予防のために必要があるとき」に検査させることができるという権限を定めた規定で、何年に一回という基準は書かれていません。実施の頻度や優先順位は消防本部ごとの実施計画で決まります。具体的な運用は所轄消防署にご確認ください。
Q事前に連絡が来るのが普通なのですか?
A消防法第4条には事前連絡を要件とする規定はありません。事前に連絡するかどうかは消防本部ごとの運用に委ねられています。連絡の有無について不安がある場合は、所轄消防署に直接確認するのが確実です。
Q過去に指摘された違反を直せば優先順位は下がりますか?
A消防庁の資料は是正状況を優先順位の判断材料の一つとして挙げています。是正を済ませ記録を残しておくことが優先順位を下げる方向に働きます。ただし他の要素も合わせて総合的に判断されるため、確実に下がるとは言えません。
Q個人の住居も立入検査の対象になりますか?
A消防法第4条は個人の住居について、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大きく特に緊急の必要がある場合でなければ立ち入らせてはならないと定めています。一般の防火対象物とは異なる特別な扱いがされています。

まとめ

消防法第4条は「火災予防のために必要があるとき」に立入検査を行う権限を定めた規定であり周期は定めていません
実施の頻度や優先順位は消防本部ごとの実施計画で決まります
避難階段が一つしかない防火対象物などは優先的に検査されます
優先順位は是正状況や点検報告の有無など複数の視点で判断されます
検査が来ていないことは免除ではなく順番待ちと考えるのが安全です
火災が発生した防火対象物には直ちに立入検査が行われます
重点的に検査される違反の裏返しが、そのまま日頃の備えになります

頻度や優先順位の決まり方が分かって、次の検査への構え方が見えてきました。
まずは避難経路と点検記録を見直します。

条文を確かめてから点検記録を整えれば十分です。
避難経路の確保と是正の記録、この2つを続けてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法第4条
  • 総務省消防庁「立入検査標準マニュアル」(予防課)
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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