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立入検査はビルのどこまで及ぶのか|専有部や機械室も含む関係のある場所の範囲を解説

立入検査はビルのどこまで及ぶのかを解説する記事のアイキャッチ画像、オフィス廊下で作業着姿の担当者が機械室の扉の中を確認している写真

立入検査というと、受付やロビーなど建物の共用部だけを見に来るものだとイメージされていないでしょうか。
しかし消防法の条文を読むと、立入検査の対象になる場所は思っているよりも広く定められています。
テナントの専有部や機械室まで対象になるのか、逆に立ち入れない場所はあるのか、条文の定義を押さえておくことが重要です。
この記事では、消防法第4条・第2条第5項の条文にもとづいて、立入検査が及ぶ場所の範囲と唯一の例外である個人の住居の扱いを解説します。

立入検査って、受付や廊下だけ見て終わりですよね。

実は専有部や機械室まで対象になることがあります。

うちのテナントの事務所も見られるということですか。

はい、条文の定義を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 消防職員は火災予防のため、あらゆる仕事場・工場・公衆の出入する場所その他「関係のある場所」に立ち入って検査できます(消防法第4条第1項)
  • 「関係のある場所」とは防火対象物又は消防対象物のある場所を指し、共用部だけに限られません(消防法第2条第5項)
  • テナントの専有部や機械室・倉庫も、その建物の一部である以上は立入検査の対象に含まれます
  • 唯一の例外は個人の住居で、承諾を得た場合か火災発生のおそれが著しく大きい緊急時でなければ立ち入れません(消防法第4条第1項ただし書)
  • 消防職員には証票の携帯・提示義務のほか、業務をみだりに妨害してはならない義務も課されています(同条第2項・第3項)

立入検査は仕事場 工場 公衆の出入する場所 専有部や機械室にも及ぶが 個人の住居だけは承諾か緊急時に限られることを示した図解

立入検査で消防職員が入れる範囲はどこまでなのか

事務所 工場 公衆の出入する場所の3つの建物の前でクリップボードを持つ作業着姿の人物のイラスト
立入検査は建物の共用部だけを見に来るものだと考えている方は少なくありません。
まずは条文が定める立入検査そのものの権限を確認しましょう。
消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防職員(略)にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。(消防法第4条第1項)
条文は立入検査の対象を「あらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所」と幅広く定めています。
「あらゆる」という言葉が示すとおり、業種や施設の種類を限定していません。
つまり事務所・工場・店舗・興行場など、建物の用途を問わず対象になり得るということです。
では、この「関係のある場所」という言葉が具体的にどこまで指すのか。
次の項で条文の定義に沿って確認します。

うちは受付や廊下だけ見られると思っていました。

実は対象になる場所はもっと広いんです。

どこまでが関係のある場所に含まれるのか

共用廊下からテナントの事務所と機械室に向かって歩く作業着姿の人物のイラスト
「関係のある場所」という言葉は、条文の別の箇所で定義が示されています。
定義を確認すると、専有部や機械室が対象から外れないことがわかります。
関係のある場所とは、防火対象物又は消防対象物のある場所をいう。(消防法第2条第5項)
「関係のある場所」とは、防火対象物や消防対象物がある場所そのものを指す定義です。
共用部か専有部かで区別する文言は条文のどこにも出てきません。
テナントが賃借している事務所や店舗の区画も、建物という防火対象物の一部である以上、この定義に含まれます。
機械室・倉庫・バックヤードのような従業員以外が普段立ち入らない場所も同じです。
条文上、立入検査は共用部だけで完結する仕組みにはなっていません。

うちのテナントの事務所も対象になるんですか。

はい、防火対象物の一部である以上は対象になります。

個人の住居だけがなぜ特別に扱われるのか

自由に出入りできる事務所のドアと承諾が必要な住宅のドアを対比したイラスト
対象が広いとはいえ、条文には例外がひとつだけ用意されています。
それが個人の住居です。
ただし、個人の住居は、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立ち入らせてはならない。(消防法第4条第1項ただし書)
個人の住居だけは、承諾または緊急時でなければ立ち入りが認められません。
これは事業用の建物と違い、住居にはプライバシー保護の要請が強く働くためです。
共同住宅の共用廊下や機械室は住居そのものではないので、この例外には当たりません。
一方でテナントの事務所や店舗の専有部は事業用スペースであり、個人の住居ではありません。
つまり事業用の区画は、ただし書の対象外として通常どおり立入検査の対象になります。

自宅と同じように断れないんですか。

事業用の区画は住居の例外に当たらないんです。

テナントビルで見落としやすいのはどこか

作業着姿の人物とビルオーナーとテナントの担当者が図面を囲んで打ち合わせるイラスト
複数のテナントが入る建物では、立入検査の範囲をめぐって行き違いが起きやすくなります。
条文が求める職員側の義務もあわせて確認しておきましょう。
消防職員は、前項の規定により関係のある場所に立ち入る場合においては、市町村長の定める証票を携帯し、関係のある者の請求があるときは、これを示さなければならない。消防職員は、(略)関係のある場所に立ち入る場合においては、関係者の業務をみだりに妨害してはならない。(消防法第4条第2項・第3項)
証票の携帯・提示と、業務を妨害しない配慮の両方が消防職員に義務づけられています。
テナントビルでよくあるのが、「自分の区画は管理会社の管轄外だから対象外」という思い込みです。
しかし対象になるかどうかは第2条第5項の定義で決まり、区分所有や賃貸借の関係とは別の話です。
機械室や倉庫の鍵の管理者が分からず、検査当日に立ち会いが遅れるケースも見られます。
事前にオーナー・管理会社・各テナントの三者で立ち会う範囲を調整しておくと、当日の進行がスムーズになります。

テナントごとに鍵の管理者がバラバラで困ることがあります。

事前に立ち会う範囲を三者で決めておきましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

デスクでチェックリストと鍵の束を確認する作業着姿の担当者のイラスト
立入検査の対象範囲を理解しておけば、当日になって慌てることは減らせます。
次の点を確認しておきましょう。 大事なのは、立入検査の対象を「共用部だけ」と思い込まないことです。
以下のポイントを、社内やテナントとの間で確認しておきましょう。
  • 各テナントの専有部・事務所・店舗も立入検査の対象になることを周知しているか
  • 機械室・倉庫・バックヤードの鍵の管理者を把握しているか
  • 検査当日にオーナー・管理会社・テナントの立ち会う範囲を事前に調整しているか
  • 消防職員が提示する証票を確認する担当者を決めているか
  • 社宅や寮の居室など個人の住居に当たる部分がある場合、扱いが変わることを理解しているか

テナントにも事前に周知しておきます。

共用部だけではないと伝えておくと安心です。

よくある質問

Q立入検査は事前予告なしに来ることもありますか?
A消防法第4条は事前通知を必須とする規定を置いていません。実務上は事前連絡が行われることが多いですが、条文上は無予告の立入りも制度上排除されていません。
Q個人の住居に当たるかどうかは誰がどう判断しますか?
A条文は「個人の住居」とだけ定めており、社宅や寮の各居室のような生活の場は住居に当たると考えられます。事業用の事務所や店舗はこれに含まれません。
Qテナントが立入検査を拒否した場合はどうなりますか?
A消防法第4条にもとづく検査を正当な理由なく拒む行為には別途の罰則規定が用意されています。区画の管理者や占有者は基本的に応じる立場にあります。
Q機械室の鍵を管理会社しか持っていない場合はどうすればよいですか?
A検査当日に立ち会いが遅れる原因になります。事前に管理会社・オーナー・テナントの間で鍵の管理者と当日の対応を確認しておくと安心です。

まとめ

立入検査の対象は「あらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所」と幅広く定められています(消防法第4条第1項)
「関係のある場所」とは防火対象物又は消防対象物のある場所を指す定義です(消防法第2条第5項)
テナントの専有部や機械室・倉庫も、建物という防火対象物の一部である以上は対象に含まれます
唯一の例外は個人の住居で、承諾または緊急時でなければ立ち入れません(消防法第4条第1項ただし書)
消防職員には証票の携帯・提示義務と、業務をみだりに妨害しない義務が課されています
「自分の区画は対象外」という思い込みが、テナントビルで見落としの原因になります
検査当日に慌てないよう、オーナー・管理会社・テナントで立ち会う範囲を事前に調整しておきましょう

専有部や機械室も対象になると分かって、準備の仕方が見えてきました

テナントビルの立入検査対応について、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第4条(立入検査の権限・個人の住居の例外・証票携帯・秘密保持等)
  • 消防法第2条第5項(関係のある場所の定義)
  • 消防法第2条第3項・第4項(消防対象物・関係者の定義)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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