製造所や一般取扱所の中にあるタンクは、20号タンクと呼ばれて別に規制されます。
ところが工場の現場には、上が開いた油槽や、機械の土台がそのまま油だめになっているものが数多くあります。
これらが全部20号タンクにあたるとすると、実務は立ち行きません。
この記事では20号タンクに該当しないとされた事例を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
機械の台がそのまま油だめになっているのですが、これもタンクの扱いになるのでしょうか。
それは外れます。
回答は工作機械と一体とした構造のものについてタンクに該当しないとしています。
上が開いている槽はどうでしょうか。
ふたができない構造です。
そちらも外れます。
ただし条件はその機能上、槽上部を開放して使用する構造であることです。
この記事でまとめて解説します!
- 政令第9条第20号のタンクは屋内タンク貯蔵所の基準を例として位置や構造や設備が定められている
- 工作機械等と一体とした油圧タンクは20号タンクに該当しないとされている
- チップコンベアを取り付けるため上部が開放された切削油タンクも該当しない
- 工作機械と一体とした構造の切削油タンク及び作動油タンクも該当しない
- 混合攪拌槽がその機能上、槽上部を開放して使用する構造のものは該当しない
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目次
20号タンクは屋内タンク貯蔵所の基準を例として規制される

まず用語の整理からです。
危険物の規制に関する政令第9条第20号は、製造所において危険物を取り扱うタンクの位置や構造や設備について定めています。
実務ではこの条文の番号をとって20号タンクと呼ばれます。
一般取扱所についても、政令第19条によってこの規定が準用されます。
照会文では政令第9条第20号において例とする政令第11条第1項第4号の基準という言い方がされています。
つまり20号タンクにあたると判断されると、貯蔵所と同じ水準の構造が求められることになります。
上が開いていて、気密でもない機械の油槽が、そのまま基準を満たすことはありません。
該当するかが分かれ目です。
20号タンクは、屋内タンクの基準で見られるのですね。
その例によります。
該当するかどうかで、必要な工事が変わります。
工作機械等と一体とした油圧タンクは該当しないとされている

この論点には出発点となる通達があります。
昭和58年3月9日付け消防危第21号によって、20号タンクの運用指針が示されました。
機械の中に組み込まれた油圧タンクは、機械の一部であって独立したタンクではない、という考え方です。
この整理があったうえで、では似た構造のほかのタンクはどうなるのか、という照会が続きました。
機械に組み込まれたものは、独立したタンクではないのですね。
一体の構造として扱われます。
設備ごとに、構造を写真で残しておきましょう。
チップコンベアのため上部を開放した切削油タンクも該当しない

昭和58年11月7日付け消防危第107号は、新潟県からの照会に答えたものです。
一つめが、別置きの切削油タンクについてのものでした。
基準に適合していないという事実を、照会側が自ら述べている点が特徴です。
適合させられないのだから、そもそも対象なのかを確かめたい、という問いになっています。
切削くずを排出するという機能のために上部が開いているのであれば、対象外という判断です。
機能上の開放は認められます。
上部を開けて使う構造なら、外れる場合があるのですね。
機能上の必要が前提です。
使い方の理由を、説明できるようにしてください。
工作機械と一体とした構造の切削油タンクと作動油タンクも該当しない

同じ照会の二つめは、機械と一体になっている場合です。
添付された図面には、容量800リットルの作動油タンクを内蔵した工作機械が示されていました。
油圧タンクが該当しないなら、切削油タンクも同じではないか、という筋の通し方です。
回答は一つめとまとめて示されました。
容量が800リットルあっても、機械と一体であれば独立したタンクとは扱われません。
容量では決まりません。
容量が大きくても、一体なら該当しないのですね。
構造で判断されます。
設備の一覧に、容量と構造を並べて書いておきましょう。
機能上上部を開放して使用する混合攪拌槽も該当しない

同じ年の少しあとに、化学工場についての照会もありました。
昭和58年11月29日付け消防危第123号は、兵庫県からの照会に答えたものです。
二つめは、これが該当する前提で、屋内に設置する場合の気密に造ることと通気管等を設けることの基準について政令第23条を適用できるかを尋ねています。
照会側は、該当することを前提にして、そのうえで基準を緩めてもらえないかと組み立てていました。
しかし回答はその前提のほうを外しています。
条件として置かれているのはその機能上、槽上部を開放して使用する構造であることです。
単にふたをしていないというだけでは足りず、開放していなければ用をなさないという構造であることが求められます。
該当しない以上、気密や通気管の基準を政令第23条で緩めるという議論も不要になりました。
前提から外れました。
前提そのものが外れることもあるのですね。
該当性から確かめるのが先です。
緩和を求める前に、区分を整理してください。
よくある質問
まとめ
- 政令第9条第20号のタンクはいわゆる20号タンクと呼ばれ一般取扱所にも政令第19条により準用される
- その基準は屋外タンク貯蔵所や屋内タンク貯蔵所や地下タンク貯蔵所の基準を例として定められている
- 昭和58年3月9日付け消防危第21号の運用指針により工作機械等と一体とした油圧タンクは該当しないとされている
- 切削くず排出用のチップコンベアを取り付けるため上部が開放された切削油タンクも該当しない
- 工作機械と一体とした構造の切削油タンク及び作動油タンクも該当しない
- 照会の図面では容量800リットルの作動油タンクを内蔵した工作機械が示されていた
- 混合攪拌槽がその機能上槽上部を開放して使用する構造のものは該当しない
- 該当しない場合は気密に造ることや通気管等を設けることの基準を論じる前提そのものがなくなる
機械の一部か、独立したタンクか。
そこを見るのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
工場の設備が20号タンクにあたるかの整理も、所轄消防署との事前協議からお手伝いします。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条・第11条・第12条・第19条・第23条 e-Gov法令検索
- 製造所及び一般取扱所における危険物を取り扱うタンクの範囲について(昭和58年11月7日付け消防危第107号 消防庁危険物規制課長から新潟県あて回答)
- 製造所及び一般取扱所における危険物を取扱うタンクの範囲について(昭和58年11月29日付け消防危第123号 消防庁危険物規制課長から兵庫県あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




