建築設備定期検査のうち、換気設備・排煙設備・給水設備及び排水設備の一部の項目は「国土交通大臣が定める検査項目」として、毎年ではなく1年から3年の間隔で検査すればよいことになっています。
東京都はこれを「3年までの間に1回行う検査項目」として運用しており、対象となる14項目の内訳や実施状況表そのものの書き方は、当サイトの別記事ですでに解説しました。
今回はその実施状況表のなかでも判断に迷いやすい、初年度の決め方・報告のなかった年の扱い・検査と報告の年度がずれたときの数え方という、年度そのものの数え方に焦点をあてて解説します。
実施状況表の年度カウントで迷いやすい場面を、一つずつ確認していきましょう。
うちのビルは去年
大臣項目のある排煙設備の検査をしなかったんですが
それでも2年目として数えるんでしょうか。
はい、実施しなかった年もそのまま2年目・3年目に数えます。
実施状況表の年度の考え方を順番に見ていきましょう。
検査した年度がそのまま初年度になるわけじゃないんですね。
うちのビルだと何年度が初年度になるのか気になります。
初年度の決め方にはいくつかパターンがあるので
順番に確認していきましょう。
- 検査を実施したかどうかにかかわらず、年度そのものは機械的に1年目→2年目→3年目と進む
- 初年度は、その検査項目を最初に実施し報告した年度になるのが原則
- 前回・前々回の実施状況が不明な年は、実施が無かったものとみなして記入する
- 初年度がいったん確定すれば、途中の年度に報告が無くても2年目・3年目のカウントは動かない
- 検査と報告の年度がずれる「年度またぎ」は、報告を行った年度を基準に数える
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目次
なぜ検査をしなかった年も2年目3年目に数えるのか

実施状況表の記入要領には、検査を実施しなかった年も2年目・3年目として数えると書かれています。
まずはこの考え方の根拠から確認します。
年度のカウントは検査の実施状況とは切り離して機械的に進みます。
建築基準法施行規則第6条第1項は、国土交通大臣が定める検査項目について「1年から3年まで」の間隔で検査するよう定めており、東京都はこれを細則で「3年までの間に1回」と運用しています。
もし検査をしなかった年をカウントから除いてよいことにすると、報告を先延ばしにするほど期限が伸びてしまい、3年以内に全数を終えるという制度の趣旨が崩れてしまいます。
そのため実施状況表では、検査の有無にかかわらず年度そのものは進め、未実施の項目は「次年度に繰越」として扱う仕組みになっています。
自分のビルの検査履歴を振り返るときは、まず年度の欄を先に埋めてから、その年に何を実施したかを当てはめると整理しやすくなります。
検査をサボると期限が伸びるわけじゃないんですね。
むしろ早く終わらせないといけない感じがします。
そのとおりです。
3年目までに全数を終える前提で計画を立てるのがおすすめです。
初年度はどうやって決まるのか

年度が機械的に進むとして、では「起点」となる初年度はどう決まるのでしょうか。
実施状況表には初年度と終年度を記入する欄があります。
初年度は、その建築設備で大臣項目の検査を最初に実施し報告した年度になるのが基本形です。
たとえば令和7年度に入ってから検査を行い、その年度のうちに報告書を提出した場合は、令和7年度が初年度になります。
終年度は初年度から数えて3年目にあたる年度なので、初年度が決まれば自動的に終年度も定まります。
これまで一度も国土交通大臣が定める検査項目を報告したことがない建築設備であれば、今回検査を実施して報告する年度がそのまま初年度になると考えて差し支えありません。
逆に、以前から大臣項目の検査を続けている建築設備では、過去の報告書控えをさかのぼって初年度を確認する必要があります。
初年度は自分で選べるものじゃなくて
最初に報告した年度で自動的に決まるんですね。
そのとおりです。
迷ったら過去の報告書控えを一度確認してみてください。
前回や前々回の実施状況が分からないときはどう扱うのか

古いビルなどでは、過去の検査記録がすべて残っているとは限りません。
そうした場合の扱いも実施状況表の記入要領に定められています。
記録が残っていない年は、実施していない年として扱います。
これは検査を行った証拠が無い以上、実施したと自己申告することはできないという考え方によるものです。
実施が無かったものとみなされた年は、そのまま未実施として次年度以降に繰り越して扱います。
管理を引き継いだばかりのビルや、検査会社を切り替えたばかりのビルでは特に起こりやすい場面なので、契約時に過去の報告書控えの有無を確認しておくと迷いを減らせます。
控えが見当たらない場合は、無理に推測で埋めず、不明として正直に扱うのが安全です。
前のビル管理会社からの引き継ぎ書類が薄くて
正直、去年の記録があるか自信がありません。
その場合は無理に埋めず、不明として扱って大丈夫です。
今回の検査から改めて記録を残していきましょう。
初年度が確定した後、途中の年度に報告が無くても3年目のカウントは変わらないのか

初年度が一度確定した後、途中の年度に定期検査そのものの報告が無かった場合はどうなるのでしょうか。
これも実施状況表の考え方が明快です。
初年度が確定すれば、その後の年度は報告の有無にかかわらず淡々と進みます。
たとえば初年度が令和5年度であれば、令和6年度に定期検査そのものの報告が無かったとしても、令和7年度は自動的に3年目の報告年度になります。
これは前の章で確認した「実施しなかった年も数える」という考え方と同じ発想で、報告が滞ったことを理由に期限を延ばせない仕組みになっています。
途中で管理者が変わったビルなどでは、初年度がいつだったのかを引き継ぎ資料で確認しておくことが特に重要になります。
初年度さえ分かれば、あとは3年後の年度を数えるだけで終年度も自動的に決まります。
報告が抜けた年があっても
そこで期限がリセットされるわけじゃないんですね。
はい、初年度さえ分かれば期限は動きません。
引き継ぎ資料に初年度をメモしておくと安心です。
検査と報告の年度がずれる「年度またぎ」はどちらの年度で数えるのか

最後に、年度の変わり目に検査と報告がまたがってしまう場合を確認します。
東京都の年度は毎年4月1日から翌年3月31日までです。
年度をまたぐ場合は、検査日ではなく報告日の年度で数えます。
たとえば令和7年3月に検査を行い、報告書の提出が令和7年4月にずれ込んだ場合、この報告は令和7年度の1年目報告として扱われます。
逆にいえば、検査自体は前の年度のうちに終えていても、報告が遅れて年度をまたぐと、カウント上は後の年度の実施として記入することになります。
年度末に検査が集中しがちなビルでは、報告書の提出まで含めてどちらの年度になるかを意識しておくと、実施状況表の記入で迷いにくくなります。
迷ったときは検査日と報告日の両方を記録に残しておくと、あとから見直すときにも役立ちます。
検査した日じゃなくて
報告した日の年度で決まるのは意外でした。
はい、検査日と報告日は分けて記録しておくと安心です。
年度末が近いときは特に意識してみてください。
よくある質問
まとめ
実施状況表の年度の数え方、これでかなりすっきりしました。
次の検査のときは初年度をきちんと確認しておきます。
3年という期限を意識しておけば、慌てずに計画的な検査ができます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行規則第6条第1項(国土交通省)
- 東京都建築基準法施行細則第13条第1項(東京都)
- 東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版(東京都)に掲載の実施状況表の記入要領を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年9月時点の情報にもとづいて作成しています。年度の数え方の具体的な取扱いは特定行政庁や建築設備・昇降機センター等の窓口によって確認方法が異なる場合がありますので、個別の判断に迷う場合は報告先の特定行政庁にご確認ください。





