避難器具は、階段が使えなくなったときに残された最後の逃げ道です。
何個いるのか、どこに置くのか、ほかの設備で代えられるのか。
昭和30年代から40年代にかけて、消防庁はこの3つを図面つきの照会に対して一つずつ答えてきました。
そこから読み取れるのは実際に通り抜けられる出口がいくつあるかで数えるという見方です。
うちのビルは外に階段が付いているので、避難器具はいらないと言われました。
本当にそれで足りているのか気になっています。
屋外避難階段については、ほかの避難器具と同等以上の効力があると認められた場合はさしつかえないと回答されています。
付いていれば自動的に免除、という書き方ではありません。
フロアに1箇あれば、その階は済んだことになりますか。
中はテナントごとに区切ってあるのですが。
区切ってあると、その置き方では足りないとされた例があります。
個数と場所を決めた5つの照会を順に見ていきます。
- 相隣接する建築物の屋上に設けた客用連絡通路を避難橋として認めてよいかという照会にお見込のとおりと回答されました
- 避難橋として認められるものは位置や構造のいかんを問わず安全に避難できるものであればよいとされています
- テナントで区切られた貸ビルに避難器具を1箇だけ設けた例は令第25条第2号の規定に適合していないとされました
- 地上に直接避難することが困難な階は設置可能階に降下できる避難はしご等を設ける扱いが示されています
- ろう下で接続され令第8条により1棟とみなされる場合でも各棟の部分にそれぞれ1個設置されるべきとされました
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目次
隣り合う建物の屋上をつなぐ通路は避難橋になるか

その通路を避難の手段として数えてよいか、という照会がありました。
(2) (1)で避難橋として認めた場合、A、B棟共それぞれ避難橋1か所を設けたものと解してよいか。
(3) 位置、構造、隣接、間隔、幅員等で避難橋として認められるものはどのようなものか。
(3) 通常人がすみやかに、かつ、安全に避難できるものであれば、その位置、構造等のいかんにかかわらず避難橋として認めてさしつかえない。
照会された建物は、A・B両棟の経営者が同じで、午後5時になると両棟の階段の使用を禁じ、階段室の扉に施錠してエレベーターだけが使える状態でした。
両棟をつなぐ客用連絡通路は幅2メートルの鉄製固定式で、隣棟間隔は0.5メートル、屋上の収容人員は両棟あわせて約100人という条件です。
この通路を令第25条の避難橋として認めてよいか、認めた場合はA・B棟それぞれが避難橋を1か所設けたことになるかが問われ、いずれもお見込のとおりと回答されました。
どのようなものなら避難橋と認められるかについては、通常人がすみやかに、かつ、安全に避難できるものであれば位置や構造のいかんを問わないとされています。
隣の建物と屋上でつながっているなら、その通路が夜間や休日に施錠されていないかを、まず確かめてください。
隣のビルとは屋上の通路でつながっています。
これも避難の手段として数えてよいのでしょうか。
まさにその形が照会され、避難橋として認めてよいと回答されています。
ただし通れなければ意味がないので、施錠の運用を先に確かめてください。
貸ビルの階に避難器具を1箇だけ設ければ足りるか

避難器具を1箇だけ置いた状態で足りるかが問われました。
照会された貸ビルは、同じ階にA・B・C・Dの4社が入り、各社の休日が互いに違い、休日や退社後は各社とも出入口に施錠し、建物管理人は建物内にいないという条件でした。
避難器具はA社の区画にだけ置かれており、その状態でよいかが問われています。
回答は、設問の避難器具は令第25条第2号の規定に適合していないので、A及びC(3階以上の無窓階又は地階に限る。)にそれぞれ設けることを要する、というものでした。
区画ごとに施錠されていれば、隣の区画の避難器具まではたどり着けません。テナントの割り方を変えたときは、避難器具の位置もあわせて見直してください。
うちの階も4社で分けていて、避難器具は端の区画にしかありません。
夜はどの会社も出入口に鍵をかけています。
照会の条件とほぼ同じ形です。
その例では令第25条第2号の規定に適合していないとされました。
区画図を持って所轄消防署に相談してください。
地上へ直接おりられない階の避難器具はどこに設けるか

その場合に下の階へ振り替えてよいかが照会されました。
1 建築基準法第58条の規定により建築された防火対象物の避難器具設置について
(1) 消防法施行令(以下令という。)第25条第1項の規定により避難器具を設けなければならない階(以下要設置階という。)で建築基準法第58条の規定により建築されているため、地上に直接避難することが困難であり、かつ、他の部分に避難器具を設ける場所がないときは、要設置階より設置可能階(要設置階の下層階で露台またはバルコニーを有する階をいう。)に降下できる避難はしご(固定式)または緩降器を設けた場合は、要設置階に設けなければならない避難器具を設置可能階に設けることにより、令第32条の規定により、当該避難器具を設けたものとみなす。
(2) 前(1)号により、各階に設ける避難器具の個数算定に用いる収容人員は、それぞれの避難器具を用いる当該階及びその上層階の収容人員の合計を、令第25条第2項第1号に規定する収容人員として算定した必要個数を設けること。
1〜(2) お見込みのとおり。
避難器具を設けなければならない階を要設置階、その下層階で露台またはバルコニーを有する階を設置可能階と呼び分けています。
要設置階から地上に直接避難することが困難で、かつ他の部分に避難器具を設ける場所がないときは、設置可能階へ降下できる固定式の避難はしごまたは緩降器を設ける形が示されました。
この形で指導することが適切であると回答されており、そのときの収容人員は、その避難器具を使う当該階とその上層階の合計で算定するとされています。
つまり下の階へ振り替えれば数が減るのではなく、上の階のぶんまで背負うので必要個数はむしろ増える向きに働きます。
自分の建物で避難器具のある階を見つけたら、その階と上の階の人数を足して数え直してみてください。
その階には避難器具を置ける場所がありません。
下の階のバルコニーなら空いているのですが。
その振り替えを認める運用が示されています。
ただし人数は上の階のぶんまで合計するので、個数が増える点に注意してください。
屋外避難階段を設ければ避難器具は不要になるか

同じ照会の中で、この点も並べて問われていました。
令第25条の規定により避難器具(避難はしご又は避難用タラップ。以下同じ。)を設けなければならない防火対象物に同条第2項第2号の規定に従い建築基準法施行令第123条第2項に規定する屋外避難階段を設けた場合は、令第32条の規定により避難器具を設けたものとみなす。(当該対象物は観覧場とする。)
照会は、屋外避難階段を設けた場合は令第32条により避難器具を設けたものとみなす、という運用でよいかを尋ねたものでした。
回答はこれをそのまま認めたのではなく、屋外避難階段の位置、構造、避難能力等からみて、他の避難器具と同等以上の効力があると認められた場合はさしつかえないと解する、という形になっています。
外に階段が付いているという事実だけで自動的に免除されるわけではなく、実際にそこから地上まで安全に降りられるかを見て判断するということです。
自分の建物に屋外避難階段があるなら、途中の扉が施錠されていないか、地上まで通じているかを図面と現地の両方で確かめてください。
屋外避難階段があれば、それで代わりになると聞いていました。
建築確認のときに付けたものです。
回答は、位置と構造と避難能力等からみて認められた場合、という言い方になっています。
まずは地上まで降りきれる階段かどうかを見てください。
ろう下でつながって1棟とみなされる建物は何個必要か

消防用設備等の上では1棟とみなされる場合の数え方が問われました。
ロ 当該防火対象物のL棟に対し、令第25条第2項第1号後段のただし書きの「当該防火対象物の位置、構造又は設備の状況により避難上支障がないと認められるときは」を「避難上支障がある」と読みかえ、L棟の3階、4階にそれぞれ適応する避難器具を各1個設置させてよいか。
ハ 当該防火対象物で各室およびろう下の天井を不燃材料、準不燃材料又は難燃材料で仕上げたときは、昭和40年1月30日付自消丙予発第14号の「避難器具に関する運用基準」第1(3)イに該当させ令第32条を適用し避難器具の設置を免除してよいか。
ハ 上記の見解からして、避難器具の設置が免除されることは適当でない。避難器具の設置に関する特例基準については、各室並びにろう下の壁及び天井の室内に面する部分を不燃材料、準不燃材料又は難燃材料で仕上げることのみならず、昭和40年1月30日付自消丙予発第14号「消防法施行令第32条の避難器具に関する運用基準について」によられたい。
照会された建物はJ・K・Lの3棟が1階のろう下で接続され、2階以上は各棟ごとに別棟の形になっていて、各棟の階段室とろう下の出入口には自閉甲種防火戸が設けられ、各棟に屋外避難階段が1つずつ設置されていました。
令第8条の適用については照会のとおりでよいとされましたが、令第25条の避難器具については、J棟とL棟の3階と4階の部分は別個に設置されるべきものと解するのが妥当であるとして、当該部分にそれぞれ1個設置されるべきであると回答されています。
天井を不燃材料や準不燃材料等で仕上げたことを理由に令第32条で免除してよいかという問いには、免除されることは適当でないと答えられました。
棟の数え方と避難器具の数え方は別の話だということです。渡り廊下でつながった建物を持っているなら、棟ごとに避難器具の有無を確かめてください。
つまり1棟とみなされても、避難器具は棟ごとに要るということですね。
うちも渡り廊下でつながっているだけでした。
そのとおりです。
天井の仕上げだけを理由にした免除も認められないとされています。
棟ごとの図面で置き場所を洗い出してください。
よくある質問
まとめ
数と場所の決め方が、ようやくつながりました。
うちの建物でも数え直してみます。
ぜひそうしてください。
避難器具は実際に通り抜けられる出口がいくつあるかで数えます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 避難器具設置数の算定について(昭和39年8月31日 自消丙予発第93号 予防課長から東京消防庁予防部長あて回答)
- 防火対象物の避難器具の設置と緩和について(昭和39年9月30日 自消丙予発第108号 予防課長から大阪府民生部長あて回答)
- 消防法施行令第25条の避難器具に関する基準の運用について(昭和40年4月27日 自消丙予発第80号 予防課長から岡山県総務部長あて回答)
- 消防法施行令第32条の避難器具に関する運用基準について(昭和40年1月30日 自消丙予発第14号)
- 消防法施行令第25条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は各通知が発出された当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





