防災管理者が作成する消防計画は、火災だけを想定した書類ではありません。
消防法施行規則は、地震による被害の軽減に関する事項を、防火管理の消防計画にはない独立した号として定めています。
その中には、オフィス家具や什器の転倒防止対策まで含まれていることは、あまり知られていません。
条文をたどると、地震対策は防災管理の消防計画に欠かせない記載事項として位置づけられていることが見えてきます。
うちのビルは防災管理者を選任していますが、消防計画の地震対策の欄は防火管理のときと同じ書き方で大丈夫でしょうか。
そこが違います。
防災管理の消防計画には、地震対策だけをまとめた号が別に定められています。
地震対策というと、備蓄や避難訓練くらいしか思いつきません。
実はそれだけではありません。
家具や什器の転倒防止まで条文に書かれた項目です。
条文の中身を順に見ていきましょう。
- 防災管理に係る消防計画には、地震による被害の軽減に関する事項が消防法施行規則第51条の8第1項第2号として独立して定められています
- 対象になる災害は地震と毒性物質の発散その他の特殊な災害の2種類です(消防法施行令第45条)
- 地震対策には、被害想定と対策・自主検査・設備資機材の点検整備・家具什器等の転倒防止措置・応急措置の5項目を書きます
- 家具、じゅう器その他の物品の転倒、落下及び移動の防止は、任意の対策ではなく消防計画の記載事項として条文に明記されています
- 避難訓練の結果を踏まえて消防計画の内容を検証し、必要に応じて見直すことも規則に定められています
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目次
防災管理の消防計画にはなぜ地震対策の項目があるのか

消防法施行規則は、地震による被害の軽減を独立した項目として書くよう定めています。
二 令第四十五条第一号に掲げる災害(以下この号において「地震」という。)による被害の軽減に関する事項として次に掲げる事項
防災管理者は、規則第51条の8第1項の柱書に基づき、建物の使用状況に応じておおむね次に掲げる事項を消防計画に書き込みます。そのうち第2号が、地震による被害の軽減だけを取り出して定めた項目です。
第1号(自衛消防の組織や避難訓練などの基本的な事項)と第2号(地震対策)は別の号に分かれているため、片方だけを書いて済ませることはできません。
防火管理の消防計画(消防法施行規則第3条)では、地震はほかの災害とまとめて一行で触れられるだけで、これほど細かい号立てにはなっていません。防災管理特有の書き方だと意識しておいてください。
まずは自分の建物の消防計画を開き、地震対策の項目が第2号として独立して立てられているかを確認するところから始めます。
防火管理の消防計画とは、地震の書き方が違うんですね。
そうです。
防災管理では地震対策だけの号が別に立てられています。
次はどんな災害が対象になるかを見ていきましょう。
防災管理の消防計画で対象になる災害とはどんな災害か

消防法施行令が、対象となる災害の範囲をあらかじめ定めています。
一 地震
二 毒性物質の発散その他の総務省令で定める原因により生ずる特殊な災害
消防法第36条第1項が対象とする火災以外の災害のうち、政令で定めるものが令第45条に列挙されています。第一号の地震と、第二号の毒性物質の発散その他の特殊な災害の2つです。
規則第51条の8第1項は、この2つの災害ごとに号を分けています。地震は第2号、特殊な災害は第3号です。この記事で扱う地震対策は、そのうちの第2号にあたります。
毒性物質の発散等は化学工場や研究施設のような一部の建物にしか関わりませんが、地震はどの防災管理対象物にも共通して関わる災害です。まずは地震の号から手を付けるのが実務的です。
自分の建物にとって、地震以外にこの特殊な災害が想定されるかどうかも、消防計画を見直すときにあわせて確認しておいてください。
うちは工場ではないので、特殊な災害は関係ないですよね。
建物の用途によります。
地震はどの防災管理対象物にも共通する対象です。
まずは地震対策の号から確認していきましょう。
地震対策として消防計画に何を書かなければならないのか

条文を実際に見てみましょう。
イ 地震発生時における建築物その他の工作物及び建築物その他の工作物に存する者等の被害の想定並びに当該想定される被害に対する対策に関すること。
ロ 建築物その他の工作物についての地震による被害の軽減のための自主検査に関すること。
ハ 地震による被害の軽減のために必要な設備及び資機材の点検並びに整備に関すること。
ニ 地震発生時における家具、じゅう器その他の建築物その他の工作物に備え付けられた物品の落下、転倒及び移動の防止のための措置に関すること。
ホ 地震発生時における通報連絡、避難誘導、救出、救護その他の地震による被害の軽減のための応急措置に関すること。
イの被害想定と対策から始まり、ロの自主検査、ハの設備及び資機材の点検整備、ニの家具や什器等の転倒・落下・移動の防止のための措置、ホの通報連絡・避難誘導・救出救護等の応急措置と続きます。
これらは建物の規模や用途を問わず、防災管理対象物であれば共通して書く項目です。空欄のまま提出すると、届出の段階で消防署から補正を求められることになります。
特にニの家具等の転倒防止は、備蓄や避難誘導に比べて見落とされがちな項目です。次の章で詳しく見ていきます。
自分の建物の消防計画に、イからホまでの5項目がそれぞれ具体的に書き込まれているかを、まず突き合わせてみてください。
被害想定から応急措置まで、思ったより広い範囲を書くんですね。
そうです。
5項目のうちどれか一つでも欠けると規則の要件を満たしません。
次は特に見落とされがちな項目を見ていきましょう。
地震対策として実務で見落としやすいのはどこか

それが家具や什器の転倒防止です。
キャビネットや書棚、テレビや複合機といったオフィス什器の転倒・落下・移動の防止は、条文の文言どおり消防計画に定めなければならない事項です。防災の心構えとして紹介されることが多いため、任意の推奨事項だと誤解されがちです。
防火管理の消防計画(消防法施行規則第3条第1項第1号リ)では、地震その他の災害への対応は消火活動・通報連絡・避難誘導という一行にまとめられており、什器の転倒防止までは名指しされていません。防災管理特有の記載事項だと押さえておいてください。
消防計画に「転倒防止対策を講じる」とだけ書いて、実際の什器が固定されていないケースも見られます。書面と現場を一致させることが、この項目のいちばんの実務です。
執務室を一周して、キャビネットや書棚に転倒防止金具が付いているかを確認するところから始めてください。
うちの消防計画にも「転倒防止対策を講じる」とは書いてありますが、金具までは確認したことがありません。
そこが実務のずれになりやすい部分です。
書面の記載と現場の固定状況を一度突き合わせてみてください。
地震対策の記載事項は明日からどう見直せばよいのか

訓練の結果を踏まえて見直すことも、条文に明記されています。
防災管理者は、令第48条第2項の避難訓練を年に1回以上実施し、その結果を踏まえて消防計画の内容を検証し、必要があれば見直すところまでが規則第51条の8第1項第1号トに定められています。
地震対策の5項目についても、この見直しのサイクルに乗せて確認します。被害想定は建物の使用状況が変われば見直しが必要ですし、設備や資機材の点検整備は定期的な実施を記録に残しておくと後で説明がしやすくなります。
家具等の転倒防止については、東京消防庁が公表している資料にチェックリスト形式で金具の種類や取付け方法がまとめられており、実際の確認に使いやすくなっています。
まずは訓練の実施記録と消防計画の地震対策の項目を並べて開き、書いてあることと実際にやっていることがそろっているかを確認してください。
訓練をやりっぱなしにせず、計画に反映させる必要があるんですね。
そのとおりです。
記録を残しておくと次の見直しが楽になります。
よくある質問
まとめ
地震対策が消防計画の独立した記載事項だとわかりました。
まずは自分の建物の計画を開いて確認します。
被害想定、点検整備、家具の転倒防止、応急措置。
この5項目が書かれているかを確認するところから始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第36条第1項
- 消防法施行令第45条
- 消防法施行令第48条
- 消防法施行規則第51条の8第1項
- 東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





