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防災管理対象物の点検報告義務はいくつあるか|建築基準法と消防法で分かれる5つの制度を解説

点検報告の制度が建築基準法と消防法にまたがって5つあることを示すイメージ

防災管理者を選任した建物では、消防用設備等の点検防火対象物点検という言葉が次々に出てきて、同じ点検を何度も求められているように感じることがあります。
ところが実際には、建築基準法と消防法という別々の法律が、それぞれ異なる対象・資格者・報告先を定めています。
どれか一つを済ませれば残りが不要になる、という関係ではありません。
条文をたどると、実は5つの制度が同時に動いていることが見えてきます

消防設備の点検はしているのに、また別の点検の話が出てきました。
これは同じことを二重に求められているのでしょうか。

別々の制度です。
建築基準法の点検と消防法の点検は、そもそも法律が違います

うちは防災管理者もいる建物なので、なおさら分からなくなります。

防災管理対象物になると、点検の数はさらに増えます。
5つの制度を一つずつ確認していきましょう。

この記事の結論
  • 建物の点検報告制度は建築基準法と消防法にまたがって5つ並行しています
  • 建築基準法第12条は特定建築物の定期調査建築設備等の定期検査を別々に求めます
  • 消防法は消防用設備等点検・防火対象物点検・防災管理点検の3つを別の条文で定めています
  • 5つは対象・資格者・報告先がそれぞれ違うため、一つを済ませても他が免除されることはありません
  • 資格者の一部は法律をまたいで重なっており、担当が同じでも報告は制度ごとに別々に必要です

建築基準法と消防法にまたがる5つの点検報告制度が並行して走ることを示した図解

点検報告の制度はいくつあるのか

建築基準法と消防法にまたがる5つの点検制度が並んで走っていることを示したイメージ
建物を維持するための点検報告の義務は、消防法だけに書かれているわけではありません。
まず全体の数を条文から数えてみます。
建築基準法第十二条第一項 (略)特定建築物(略)で特定行政庁が指定するものの所有者は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者にその状況の調査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない
建物を維持するための点検義務は、消防法だけでなく建築基準法にも置かれています
建築基準法第12条第1項が求める特定建築物の定期調査は、特定行政庁が指定した建物の敷地・構造・建築設備の劣化状況を確認する制度です。
同条第3項は、昇降機を含む建築設備等の定期検査を別に求めています。
消防法側はさらに消防用設備等点検(第17条の3の3)・防火対象物点検(第8条の2の2)・防災管理点検(第36条第1項)の3つに分かれ、建築基準法の2つと合わせると根拠の異なる点検が5つ並ぶ計算になります。
防災管理対象物に指定される規模の建物ほど、この5つが同時に当てはまりやすくなります。

点検の種類がそんなに分かれているとは知りませんでした
まとめて一つの点検だと思っていました。

見た目は似た「点検」という言葉でも、根っこの法律が違います。
まず自分の建物にどれが当てはまるかを一つずつ確認しましょう。

どの制度がどの建物にあたるのか

特定建築物と防火対象物と防災管理対象物のそれぞれ違う指定基準を示したイメージ
5つの制度は、同じ「建物」でも当てはまる範囲がそれぞれ違います。
指定のされ方を条文で確認します。
消防法第八条の二の二第一項 第八条第一項の防火対象物のうち火災の予防上必要があるものとして政令で定めるものの管理について権原を有する者は、総務省令で定めるところにより、定期に、(略)防火対象物点検資格者に、(略)点検させ、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない
建築基準法の2つは特定行政庁が指定した建物、消防法の3つは政令で定める防火対象物が対象です
建築基準法第12条の特定建築物・特定建築設備等は、用途と規模で特定行政庁が個別に指定した建物に限られます。
消防用設備等点検(第17条の3の3)はほぼすべての防火対象物が対象ですが、防火対象物点検(第8条の2の2)は政令で定める防火対象物に絞られています。
防災管理点検(第36条第1項)はさらに絞られ、防災管理対象物に指定された建物にしか当てはまりません。
同じ建物でも、規模が上がるほど当てはまる制度の数が積み上がっていく仕組みです。

うちは規模が大きい建物なので、当てはまる制度も多いということですか。

そのとおりです。
防災管理対象物に指定された建物は、5つのうち多くが同時に当てはまります

誰が点検してどこに報告するのか

資格者が異なる書類を作成し特定行政庁と消防長にそれぞれ報告する場面を示したイメージ
資格者と報告先も、法律ごとに別に決められています。
表にして整理します。
消防法施行規則第三十一条の六第三項 防火対象物の関係者は、(略)点検を行った結果を、(略)次の各号に掲げる防火対象物の区分に従い、当該各号に定める期間ごとに消防長又は消防署長に報告しなければならない
一 (略)令別表第一(一)項から(四)項まで等 一年に一回
二 (略)令別表第一(五)項ロ等 三年に一回
制度根拠資格者報告先
特定建築物定期調査建築基準法第12条第1項一級建築士・二級建築士・建築物調査員特定行政庁
建築設備等定期検査建築基準法第12条第3項一級建築士・二級建築士・建築設備等検査員特定行政庁
消防用設備等点検消防法第17条の3の3消防設備士・消防設備点検資格者消防長又は消防署長
防火対象物点検消防法第8条の2の2防火対象物点検資格者消防長又は消防署長
防災管理点検消防法第36条第1項防災管理点検資格者消防長又は消防署長
法律も資格者も報告先も、5つとも別々です
建築基準法側の2つは特定行政庁に、消防法側の3つは消防長又は消防署長に報告します。
消防用設備等点検の報告頻度は、特定防火対象物が1年に1回、非特定防火対象物が3年に1回です。
防火対象物点検と防災管理点検は、対象になればいずれも1年に1回の点検が求められます。
消防署に一つ報告書を出せば、それで特定行政庁への報告も済んだ、ということにはなりません。

報告書の宛先まで違うんですね。うっかり一つにまとめて出してしまいそうです。

窓口が別なので、まとめては出せません。
誰が・いつ・どこに出すのかを、制度ごとに一覧にしておくと安全です。

実務で見落としやすいのはどこか

建築設備の資格者が消防設備の点検資格者を兼ねている一方で報告は別々に必要なことを示したイメージ
資格者の世界は、法律の境界をまたいで重なっている部分があります。
ここが見落とされやすい落とし穴です。
消防法施行規則第三十一条の六第七項 法第十七条の三の三に規定する総務省令で定める資格を有する者は、次の各号のいずれかに該当する者で(略)とする。
五 建築基準法第十二条第一項に規定する建築物調査員資格者証の交付を受けている者又は同条第三項に規定する建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者
建築基準法側の資格者が、消防法側の点検資格者講習を修了すれば消防用設備等点検も担えます
つまり同じ担当者が建築設備等定期検査消防用設備等点検を兼ねて行っている建物が実際にあります。
ここで見落としやすいのは、担当者が同じでも報告書は別々の制度として提出されているという点です。
「点検業者にまとめて頼んでいるから安心」という感覚のまま、5つのうちどれかの報告が抜けていないかまで確認していない建物は少なくありません。
担当が一人でも、報告先と提出期限は制度ごとに管理する必要があります。

同じ人が担当してくれているので、てっきり全部まとめて報告されていると思っていました。

担当者が同じでも提出先は別々です。
一度、5つそれぞれの報告書が実際に出ているかを担当者に確認してください。

明日からなにをすればよいのか

5つの点検制度をチェックリストにして確認する防火管理者の姿を示したイメージ
最後に、自分の建物で確かめる手順を整理します。
特別な調査をしなくても、条文と台帳から確認できます。
消防法施行規則第四条の二の四第二項 法第八条の二の二第一項の防火対象物の管理について権原を有する者は、前項の規定により点検を行った結果を防火管理維持台帳(略)に記録するとともに、これを保存しなければならない。
まずは自分の建物にどの制度が当てはまるかを、台帳と条文で洗い出すことから始めます
建築基準法第12条の対象になっているか特定行政庁の指定を確認し、防火対象物点検・防災管理点検の対象になっているかを規模で確認します。
そのうえで、5つそれぞれの資格者・頻度・報告先を一覧にした社内チェックリストを作ります。
維持台帳は消防法側だけでなく、建築基準法側の報告書の写しも一緒に編冊しておくと、次の点検の抜けを見つけやすくなります。
迷ったときは所轄の消防署と特定行政庁の担当窓口の両方に、対象になっている制度を確認してください。

チェックリストを作れば、抜け漏れは防げそうです。

はい。
資格者・頻度・報告先の3項目を制度ごとに並べるだけで、抜けはかなり減らせます

よくある質問

Q建築基準法の点検を受けていれば消防法の点検は不要になりますか?
A不要になりません。建築基準法第12条の点検は建築物・建築設備そのものの劣化状況を確認する制度で、消防法の点検は消防用設備等の機能や防火管理の運用状況を確認する別の制度です。片方を受けても、もう片方の義務は残ります。
Q防災管理点検は防火対象物点検を兼ねられますか?
A兼ねられません。消防法第36条第1項が読み替えて準用する第8条の2の2は、本来の防火対象物点検(第8条の2の2)とは別の点検として行われます。防災管理対象物に指定された建物は、対象になれば両方の点検・両方の報告が必要です。
Q建築設備等定期検査の資格者に消防用設備等点検も頼めますか?
A頼める場合があります。消防法施行規則第31条の6第7項第5号は建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者を消防設備点検資格者の資格の一つに数えています。ただし別の資格として扱われるため、実際に依頼できるかは相手の資格の保有状況を確認してください。
Q5つの制度をまとめて代行してもらうことはできますか?
A制度ごとに資格者と報告先が異なるため、依頼先が同じでも報告は別々の手続きとして進みます。㈱防災屋のような専門業者に相談すれば、対象になる制度の洗い出しから報告までまとめて窓口を一本化できます。

まとめ

建物の点検報告制度は建築基準法と消防法にまたがって5つ並行しています
建築基準法第12条は特定建築物の定期調査建築設備等の定期検査を別々に求めます
消防法は消防用設備等点検・防火対象物点検・防災管理点検の3つを別の条文で定めています
対象になる建物の範囲は制度ごとに異なり、規模が上がるほど当てはまる数が増えます
報告先は特定行政庁消防長又は消防署長に分かれます
資格者は一部重なっており、建築基準法側の資格者が消防用設備等点検も担える場合があります
担当が同じでも報告は制度ごとに別々に行う必要があります

5つに分かれていると聞いて身構えましたが、表にして考えると整理できました。
まず自分の建物の台帳を見直してみます。

資格者・頻度・報告先の3項目さえ押さえれば大丈夫です
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法第八条の二の二
  • 消防法第十七条の三の三
  • 消防法第三十六条第一項
  • 消防法施行規則第四条の二の四
  • 消防法施行規則第三十一条の六
  • 建築基準法第十二条
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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