防災管理者の消防計画には、避難訓練を実施する義務が明記されています。
では、その訓練は年に何回行えばよいのか、防火管理の訓練とはどう違うのか、条文を読まないと判断がつきません。
実際には、防災管理の避難訓練と防火管理の消火・避難訓練は、根拠になる条文も回数の基準も別物です。
消防法施行規則をたどると、防災管理の避難訓練は防火管理の訓練とは別に、年に一回以上実施しなければならないことが見えてきます。
うちは防火管理者と防災管理者を両方選任していますが、避難訓練は消火訓練とまとめて年1回やれば足りますよね。
それが誤解しやすいところです。
防災管理の避難訓練は、防火管理の訓練とは別に数える訓練です。
同じ避難訓練なのに、どうして別々に数えるんですか。
根拠になる条文が違うからです。
消防法施行規則の別の条項が、それぞれの回数を定めています。
条文を順番に見ていきましょう。
- 防災管理者は、消防法施行規則第51条の8第3項により避難訓練を年1回以上実施しなければなりません
- この訓練は消防法施行令第48条第2項に基づき、防災管理に係る消防計画の中で行う訓練です
- 防火管理の訓練(消防法施行規則第3条第10項)は特定の用途に限り年2回以上を義務づけるもので、防災管理の訓練とは根拠も回数も別の義務です
- 想定する災害は地震と毒性物質の発散その他の特殊な災害の2種類です(消防法施行令第45条)
- 訓練を実施するときは、あらかじめ消防機関へ通報する手続きも規則に定められています
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目次
防災管理の避難訓練とは何を指すのか

その計画に基づいて、実際に避難訓練を行うところまでが義務です。
令第48条第2項は、防災管理者に対して消防計画に基づいた避難訓練の実施を義務づけています。計画を作成し届け出るだけでは、この条文の要件を満たしません。
同項は「その他防災管理上必要な業務」も合わせて求めており、避難訓練はその中でも中心的な位置づけにあります。
防火管理者が行う避難訓練(規則第3条)とは別の条文に基づく義務である点を、まずは押さえておいてください。
自分の建物の消防計画を開き、避難訓練の実施が具体的にいつ・どのように行われているかを確認するところから始めます。
消防計画を作るだけでは終わらないんですね。
そうです。
計画に基づく実施までが条文の義務です。
次は、その訓練が何回必要かを見ていきましょう。
防災管理の避難訓練は年に何回実施する義務があるのか

回数を定めているのは、施行規則の別の条文です。
規則第51条の8第3項が、令第48条第2項の避難訓練について年1回以上という具体的な頻度を定めています。令第48条第2項自体には回数の記載がないため、この規則を見落とすと頻度の根拠がわからなくなります。
「年1回以上」なので、2回以上実施すること自体は問題ありません。下限が1回という点だけが定められています。
この義務は、建物の用途にかかわらず防災管理対象物であれば一律に適用されます。
まずは自分の建物で直近の避難訓練がいつ行われたかを確認し、そこから1年以内に次回を計画してください。
令第48条ではなく、規則第51条の8の方に回数が書いてあるんですね。
そのとおりです。
義務づける条文と回数を定める条文が分かれています。
次は、どんな災害を想定して行う訓練なのかを見ていきましょう。
避難訓練では何を想定して行うのか

対象になる災害は、あらかじめ政令で決まっています。
一 地震
二 毒性物質の発散その他の総務省令で定める原因により生ずる特殊な災害
消防法第36条第1項は火災以外の災害を対象にしており、令第45条がその内容を地震と毒性物質の発散その他の特殊な災害の2つに限定しています。
規則第51条の8第1項は、この災害ごとに消防計画へ書く事項を号で分けており、地震は第2号、特殊な災害は第3号に定められています。避難訓練は、これらの号に書かれた通報連絡や避難誘導の想定に沿って行います。
火災を想定した訓練は防火管理側(規則第3条)の役割であり、防災管理の避難訓練とは想定する場面そのものが異なります。
訓練の企画書を作るときは、火災ではなく地震(または自分の建物に関係する特殊な災害)を想定したシナリオになっているかを確認してください。
火災の避難訓練とは、想定している場面がそもそも違うんですね。
そこが混同されやすい点です。
火災以外の災害を想定するのが防災管理の避難訓練です。
次は、防火管理の訓練との関係を整理しましょう。
防火管理の訓練をしていれば防災管理の訓練は不要なのか

この訓練で防災管理側の義務も済んだと考えるのは早計です。
規則第3条第10項の消火訓練・避難訓練は年2回以上ですが、対象は令別表第一の一部の用途に限られます。一方、規則第51条の8第3項の防災管理の避難訓練は用途を問わず防災管理対象物であれば年1回以上必要です。
防火管理の訓練を年2回きちんと実施していても、それだけでは防災管理の避難訓練を実施したことにはなりません。想定する災害も、火災(防火管理側)と地震等(防災管理側)で異なるためです。
逆に、自分の建物が規則第3条第10項の対象用途に入っていなくても、防災管理対象物に該当していれば防災管理の避難訓練は別に必要です。
訓練の実施記録を見るときは、「防火管理の訓練」と「防災管理の避難訓練」がそれぞれ別の記録として残っているかを確認してください。
うちは消火訓練を年2回やっているので、それで十分だと思っていました。
そこがよくある誤解です。
防災管理の避難訓練は別に実施記録が必要です。
訓練を実施するときに何をすればよいのか

実施の前後にも、規則が定める手続きがあります。
(準用される第三条第十一項) 前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。
規則第51条の8第4項が第3条第11項を準用しており、防災管理者は避難訓練を実施する場合、あらかじめその旨を所轄の消防機関に通報しなければなりません。実施後の報告だけでは、この条文の要件を満たしません。
通報の書式は各消防本部が指定している場合があるため、事前に所轄消防署のホームページ等で確認しておくと手続きがスムーズです。
また、規則第51条の8第1項第1号トは訓練の結果を踏まえた消防計画の検証・見直しも定めています。訓練をやりっぱなしにせず、気づいた点を計画に反映させるところまでが実務です。
次回の訓練を計画する際は、①事前通報の宛先と方法を確認する、②実施後に記録を残す、③記録を消防計画の見直しに使う、の3つを順番に行ってください。
訓練の前に消防署へ連絡するところまでが義務なんですね。
そのとおりです。
あらかじめの通報と、実施後の記録の両方が必要です。
よくある質問
まとめ
防災管理の避難訓練が、防火管理の訓練とは別の義務だとわかりました。
まずは実施記録を確認します。
そのとおりです。
年1回以上の実施と、事前の消防機関への通報を忘れずに。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第36条第1項
- 消防法施行令第45条
- 消防法施行令第48条
- 消防法施行規則第3条第10項・第11項
- 消防法施行規則第51条の8第3項・第4項
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





