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テナントが決まらない区画は内装をしないまま使用を開始してよいのか|スケルトン状態の防火対象物に必要な区画と管理を解説

テナント未定の空きスペースを内装なしで使えるかを解説した記事のアイキャッチ

ビルが竣工したのにテナントが決まらない区画だけが残ってしまう。
その部分の内装をわざわざ仕上げてから 入居が決まって また壊す。
費用も産業廃棄物も無駄になるので 内装をしないまま先に使い始めたいという声は昔からありました。
消防庁はこの求めに対して 一定の条件を満たす場合に限って建物の一部だけで検査を受けることを認めています

うちのビル 三階だけテナントが決まっていなくてコンクリートむき出しのままなんです。
この状態で下の階の営業を始めてもいいものか迷っています。

その状態を消防庁はスケルトン状態と呼んでいます。
条件がそろえば その部分を外した形で設置検査を受けられます。

条件というのは工事の仕方の話ですか。
それとも書類の話でしょうか。

両方です。
区画と防火管理という現場の話と 届出と検査という手続の話が セットで求められています。

この記事の結論
  • 内装や設備が未施工のまま残っている部分をスケルトン状態と呼びます
  • 消防庁は平成12年3月27日付けの消防予第74号で スケルトン状態の部分を外した形で設置検査を受けられる運用を示しました。
  • 認められるには スケルトン区画で他の部分と防火上有効に仕切り 開口部に常時閉鎖の防火戸を設けることが要ります。
  • 火気の使用制限と可燃物の制限と人の入出管理の三つを守る必要があります
  • テナントが決まって工事に入るときは 改めて手続と検査が必要になります。

スケルトン状態のまま使い始めるために区画と防火管理をそろえて届出と検査を受けるまでを並べた図

内装が決まらないまま使い始めたいという要望はどこから出てきたのか

内装が未施工のまま残ったフロアと 使い終わった建材を捨てる容器
賃貸のビルでは 竣工の時点で全部の区画が埋まっているとは限りません。
それでも消防の検査は建物全体で受けるのが原則でした。
スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について(平成12年3月27日 消防予第74号 消防庁予防課長) 近年、事務所ビル、店舗ビル等の賃貸を主とする防火対象物においては、利用者未定の空きスペースについても標準的な内装・設備工事を実施して竣工し、後日利用者が決定した段階で当該内装仕上げ等を施工しなおすという例が見られる(略)。しかしながら、後日内装仕上げ等を施工しなおす場合には、コスト負担、不必要な産業廃棄物の創出などの問題があることから、未使用部分をスケルトン状態(内装仕上げや設備の一部について未施工部分が存する状態をいう。以下同じ。)のままで、防火対象物の他の部分の使用を開始することができるよう弾力的な運用を行うことが要望されており、当該項目は「規制緩和推進3か年計画(改定)」(平成11年3月30日閣議決定)にも計上されているところである。
消防法施行令第32条 この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない
きっかけは事故ではなく規制緩和です
使う予定のない区画に標準的な内装と設備をいったん入れ それを入居時にまた壊すという流れが 費用と産業廃棄物の両方を生んでいました。
そこで消防庁は 令第32条の特例を使う道筋を示しました。
令第32条は 位置や構造や設備の状況から見て火災の危険が著しく少ないと消防長または消防署長が認めるときに 本来の基準を適用しないという条文です。
つまりスケルトン状態の建物だけの特別な法律があるわけではなく 既にある特例の条文を当てはめているだけだと理解しておくと 話が早くなります。

事故があって厳しくなった通知だと思い込んでいました。
むしろ緩める側の話なんですね。

そのとおりです。
緩める代わりに条件が細かく付いているので そこを外すと通りません。

どんな建物のどの部分がスケルトン状態にあたるのか

使用中の区画と未施工の区画が混ざった事務所ビルと共同住宅
通知は対象になる建物の種類を限定していません。
そのかわり どういう場面を想定しているかを具体例で示しています。
スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について(平成12年3月27日 消防予第74号)記1(1)ア (略)具体的な利用形態が確定していない部分についてスケルトン状態としたままで、それ以外の部分の使用を開始するというケースが想定されるところである。〈想定される例〉 テナントビル:テナントが確定しない部分については、当分の間、空きスペース(継続的にテナント募集)とし、テナントが確定している部分だけで営業を開始するケース 共同住宅:入居者が確定しない住戸については、当分の間、空き住戸(継続的に入居者募集)とし、入居者が確定している住戸だけで居住を開始するケース
建物の用途ではなく部分の状態で決まります
通知が定義するスケルトン状態は 内装仕上げや設備の一部について未施工部分が存する状態です。
そしてスケルトン状態の部分を持つ建物のことを スケルトン防火対象物と呼び分けています。
挙げられている例は テナントビルの空きスペースと 共同住宅の空き住戸の二つです。
どちらも継続的に募集をしている状態であることが前提になっているので 使う予定がないまま放置している倉庫のような部分とは分けて考えてください。
なお その部分の用途や規模や収容人員は 原則として事前に計画されていた内容によるとされています。

マンションの空き住戸も対象になるとは思っていませんでした。
事務所ビルだけの話ではないんですね。

共同住宅も名指しで書かれています。
まずご自身の建物のどこが未施工で残るのかを 図面に印を付けて拾ってみてください。

スケルトン区画にはなにが求められているのか

常時閉鎖の防火戸で仕切られた未施工の部屋と 設備がそろった共用の廊下
ここが通知の核です。
求められる条件は 壁の話と管理の話に分かれています。
スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について(平成12年3月27日 消防予第74号)記2(2)ア (ア) スケルトン状態の部分は、他の部分と防火上有効に区画されていること(直接外気に開放されているバルコニーその他これに類する部分を除く。)。この場合において、当該区画(以下「スケルトン区画」という。)は、建築基準法上の防火区画若しくは不燃材料による区画又はこれらと同等以上の強度、耐熱性等を有する区画であるとともに、当該区画の開口部には常時閉鎖の防火戸又は不燃材料で造った戸が設置されていること。 (イ) スケルトン区画部分を含め、消防計画の作成、管理体制の整備等により、適切な防火管理が実施されていること。特に、スケルトン区画部分については、次の事項を遵守する必要があること。 a 火気使用制限 b 可燃物制限 c 人の入出管理
仕切って締め出すことが条件です
壁の側では スケルトン区画として建築基準法上の防火区画か不燃材料による区画で仕切り 開口部には常時閉鎖の防火戸か不燃材料の戸を付けます。
管理の側では 火気の使用制限と可燃物の制限と人の入出管理の三つを守ります。
そのうえで 使用を始める側の部分と 共用部分のうち規則第30条第2号イの消火活動拠点および第2次安全区画については 本来の技術基準に適合させることが求められます。
スケルトン区画の内側についても 影響の少ない事項は原則として本来の基準に合わせ 難しい場合は準ずる措置か代替措置を優先して検討します。
通知は共用部分の屋内消火栓で包み込む方法や 共用部分の補助散水栓でスプリンクラーヘッドを代替する方法を具体例として挙げています

設備を全部つけなくていいわけではないんですね。
共用部分でカバーするという発想が面白いです。

免除ありきではなく 代替を先に考える順序になっています。
設計の打合せの段階で 所轄と共用部分の使い方を相談しておくと早いです。

使用を始めたあとに見落としやすいのはどこか

施錠された防火戸の内側に段ボールや缶を持ち込んではいけないことを示す図
条件は検査の日だけ守ればよいものではありません。
通知は守れなくなったときの扱いまで書いています。
スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について(平成12年3月27日 消防予第74号)記2(2)イ(イ) スケルトン防火対象物の使用を認める際に確認した本則基準又は前記アに掲げる要件に適合しなくなった場合においては、法第17条に不適合となることから、違反処理の対象となること。ただし、スケルトン状態の部分における工事に伴い、本則基準又は前記アに掲げる要件に適合しないこととなる事項については、(一般の防火対象物の場合と同様に)工事中の消防計画により対応することとしてさしつかえないこと
空いているからと物置にした時点で違反になります
いちばん多い落とし穴が この可燃物の持ち込みです。
検査のときは空だった区画に 使わない什器や段ボールを置いてしまうと 前提が崩れて法第17条に不適合となり 違反処理の対象になります。
防火戸を開けたままにしたり 施錠管理をやめたりするのも同じです。
もう一つの落とし穴は テナントが決まったあとの扱いで スケルトン状態が変わるときは改めて手続と提出書類の変更が要り 建物全体に対する設置検査等が必要になります
従前の状態から用途が変わる場合には 法第17条の3の規定が適用される点にも注意してください。

空いているからと備品を置いてしまいそうです。
ここが一番あぶないところですね。

設備を落としてもらった見返りが 空のままにしておくという約束です。
鍵の管理者を決めて 誰がいつ開けたかを残す運用にしておいてください。

明日からなにを確認すればよいのか

図面と書類をそろえて消防機関の窓口へ届け出る場面
最後は手続です。
通知は必要な届出を条番号まで挙げています。
スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について(平成12年3月27日 消防予第74号)記3(1)ウ 防火対象物の新築のほか、使用開始後におけるスケルトン状態の変更に当たっても、法第8条、第17条の3の2及び第17条の14の規定等に基づき、防火管理者の選任・消防計画の作成(工事中の消防計画を含む。)、着工届、設置届・検査等の手続が必要となること
減るのは検査の範囲であって手続ではありません
防火管理者の選任と消防計画の作成は 法第8条に基づき建物全体で必要です。
設置届と検査は法第17条の3の2 着工届は法第17条の14がそれぞれ根拠になります。
消防計画はスケルトン状態の部分を含めた内容にし 誰がその部分の防火管理に責任を持つのかを書き分けておいてください。
検査済証を受け取ったら 未施工で残っている部分と そこに設置予定の設備の種類が余白や別紙で明確になっているかを見てください。
建築基準法第7条の6の仮使用の手続と並行して進める必要があるので 建築の担当部局と消防への相談は同じ時期に始めるのが安全です。

つまり検査の範囲は減っても 防火管理者と消防計画は最初から要るということですね。
先に消防計画を書き直します。

その順番で合っています。
検査済証の余白に書かれた条件を 消防計画の記載と突き合わせておくとさらに安心です。

よくある質問

Qスケルトン状態にしておけば消防用設備等は一切つけなくてよいのですか?
Aいいえ。通知は免除を約束したものではありません。スケルトン区画の内側でも 利用形態が確定しても影響が少ない事項は原則として本来の基準に適合させ 難しい場合も準ずる措置や同趣旨の代替措置を優先して検討することとされています。
Q共用部分の廊下や階段まで手を抜いてよいのですか?
Aできません。スケルトン区画以外の部分に加えて 共用部分のうち消火活動拠点と第2次安全区画については 本来の技術基準に適合していることが基本的要件として挙げられています。消火活動拠点は消防法施行規則第30条第2号イが定める用語です。
Qスケルトン区画の防火戸は施錠しておいてよいのですか?
A通知の別紙が挙げる運用例では 立入禁止としたうえで施錠管理することが示されています。ただし密閉や施錠管理がされることから 火災時の初期対応や消防活動との整合性について十分留意する必要があるとも書かれているので 所轄消防署と事前に詰めてください。
Q検査済証はスケルトン状態のままでも交付されますか?
A交付されますが対象は実際に検査を実施した部分に限られます。通知は そのとき未施工で残っている部分や設置予定の設備の種類などを 検査済証の余白や裏面への追記または別紙の添付で明確にしておくこととしています。

まとめ

スケルトン状態とは内装仕上げや設備の一部について未施工部分が存する状態のことです。
平成12年3月27日付けの消防予第74号が 建物の一部だけで設置検査を受ける運用を示しました
根拠は消防法施行令第32条の特例で 火災予防上支障のないことが確認できる場合に限られます。
スケルトン区画は防火区画か不燃材料による区画とし 開口部には常時閉鎖の防火戸か不燃材料で造った戸を設けます。
火気使用制限と可燃物制限と人の入出管理を守り続けることが前提になっています
要件に適合しなくなると法第17条に不適合となり違反処理の対象になります
防火管理者の選任と消防計画の作成は 検査の範囲が減っても建物全体で必要です。

空き区画を物置にしないという一点を 管理会社と共有しておきます。
これで安心して下の階の営業を始められます。

そこが守れるかどうかで結論が変わります
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について(平成12年3月27日 消防予第74号 消防庁予防課長)
  • 消防法第8条(防火管理者)・第17条(消防用設備等の設置及び維持)・第17条の3(用途変更の場合の特例)・第17条の3の2(設置届及び検査)・第17条の14(工事着手の届出)
  • 消防法施行令第32条(基準の特例)
  • 消防法施行規則第30条第2号イ(消火活動拠点)
  • 建築基準法第7条の6(検査済証の交付を受けるまでの建築物の使用制限)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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