重要文化財のお堂や古民家を カフェや宿泊施設として使う例が増えています。
文化財の建物には延べ面積に関係なく消火器具や自動火災報知設備が要ることは よく知られています。
ところが実際に人を入れて商売をするとなると 求められる設備はそれだけでは足りません。
消防庁は平成16年2月の通知で 文化財としての基準と使い方に応じた基準の両方をあてる考え方を示しています。
市の重要文化財に指定されている蔵を 来月から喫茶店として貸すことになりました。
消火器と自動火災報知設備は前から入っているので これで足りますよね。
そこが分かれ目です。
喫茶店として使い始めた時点で 飲食店としての基準も重ねてかかります。
どちらか重いほうを選ぶという話ではないのですか。
文化財として扱われるなら そちらが優先されるものだと思っていました。
選ぶ形にはなっていません。
令別表第一の備考四が 両方に該当するものとみなすと書いています。
- 文化財の建物は令別表第一(17)項に位置付けられ 延べ面積を問わず消火器具と自動火災報知設備が必要です。
- 平成16年2月6日付けの消防予第26号が 利用形態の多様化を踏まえた運用の考え方を示しました。
- 令別表第一の備考四により (17)項であるほか実際の用途の項にも該当するものとみなされます。
- 喫茶店や旅館として使えば 特定防火対象物としての基準が重なります。
- 令第32条による緩和は自動ではなく 所轄消防署との協議が前提になっています。
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目次
文化財の建物に用途に応じた設備まで求める通知はなぜ出されたのか

変わったのは建物ではなく その使われ方のほうです。
かつて文化財の建物といえば 見学のために公開されるか そのまま保存されるかのどちらかでした。
いまは同じ建物に飲食店や宿泊施設が入り 逆に営業中の施設があとから文化財に指定されることもあります。
そうなると 文化財として求めてきた設備だけでは 実際に生じる火災の危険に届きません。
そこで消防庁は平成16年2月6日付けの通知で 改正の趣旨と現場での扱いを各都道府県消防主管部長あてに示しました。
火災事故を受けて厳しくなった話だと思っていました。
使い方が変わったから追いついた通知なんですね。
そのとおりです。
同じ日に文化庁からも各都道府県教育委員会あてに通知が出ています。
重ね掛けの対象になるのはどの建物のどの部分か

令別表第一の末尾に置かれた備考が この重ね掛けの根拠です。
(17)項は 文化財保護法によって重要文化財や重要有形民俗文化財や史跡などに指定された建造物と 旧重要美術品等の保存に関する法律で重要美術品として認定された建造物を指します。
その建物が喫茶店として使われていれば (3)項ロにも該当するものとみなされ 旅館として使われていれば(5)項イにも該当するものとみなされます。
条文が「又はその部分」と書いている点も大事で 建物の一室だけを店にした場合でもこの備考は働きます。
指定の範囲と営業の範囲が食い違っているときほど 部分ごとに紙に書き出して整理しておくと話が早くなります。
母屋の一部だけを店にする場合も対象になるということですね。
建物まるごとの話ではないと分かって助かりました。
はい。
まずは平面図に 指定の範囲と営業する範囲を色分けして書き込んでみてください。
消防庁の通知は設置の指導に何を求めているのか

通知はそこに もう一段の手当てを求めています。
位置と構造と設備に加えて 文化財的価値の重要性まで総合的に判断したうえで指導することとされています。
判断の材料は消防だけでは集まらないので 必要に応じて教育委員会や所有者の意見も踏まえるという道筋が示されました。
実務では ここが所有者側から相談を持ち込む入口になります。
配管の露出や壁の穴あけが問題になりそうなときは 図面を持って早い段階で所轄消防署に相談しておくと 選べる案が残ります。
つまり 相談してよい仕組みが最初から用意されているということですね。
黙って工事を進めるほうが損だと分かりました。
そのとおりです。
工事が始まってからでは 直せる範囲がぐっと狭くなります。
実務で見落としやすいのはどこか

通知は緩和の条文に触れていますが 自動的に効くとは書いていません。
令第32条は 消防長または消防署長が認めるときに基準を適用しないという条文なので 認める判断が先に要ります。
もう一つの見落としは 用途変更の扱いです。
用途が変わった場合には従前の基準のままでよいという緩和がありますが 変更後の用途が特定防火対象物にあたるときはその緩和が働きません。
喫茶店も旅館も特定防火対象物なので 現行の基準に合わせる必要があります。
昔からある建物だから そのままでよいと考えていました。
店にした時点で見方が変わるのですね。
使い方が変わった日が区切りになります。
開店の日を決める前に 必要な設備を洗い出しておきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

順番を守るだけで 手戻りがほとんど消えます。
はじめに 指定書を見て重要文化財なのか史跡なのか どの範囲が指定されているのかを確かめます。
つぎに 平面図の上で部屋ごとの使い方を書き出し 客に使わせる部分と保存だけの部分を分けます。
そのうえで (17)項としての基準と その部分の用途の項の基準を並べて 足りない設備を拾い上げます。
最後に その一覧を持って所轄消防署に相談し 文化財としての制約があるところは令第32条の適用を含めて相談します。
指定の範囲と使う範囲を分けて書き出すところから始めます。
これなら今日のうちに手を付けられそうです。
その一枚があるだけで 相談の中身が変わります。
持っていく資料は図面と指定書の写しで足ります。
よくある質問
まとめ
指定の範囲と営業の範囲を分けた一枚の図を作ってから相談に行きます。
これで開店の日程も組みやすくなりました。
その一枚があれば話が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 文化財建造物に係る消防用設備等の取扱いについて(平成16年2月6日 消防予第26号 消防庁予防課長)
- 文化財建造物に係る消防用設備の取扱いについて(平成16年2月6日 15財伝文第98号 文化庁文化財部伝統文化課長)
- 消防法施行令別表第一(17)項および同表備考四
- 消防法施行令第10条第1項第1号イ(消火器具)・第21条第1項第1号イ(自動火災報知設備)
- 消防法施行令第32条(基準の特例)
- 消防法第17条(消防用設備等の設置及び維持)・第17条の3(用途変更の場合の特例)
- 消防法第17条の2の5第2項第4号および消防法施行令第34条の4第2項(特定防火対象物の範囲)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





