倉庫の棚に置いてある溶剤や洗浄剤の缶を前にして、これは消防法の危険物になるのだろうかと迷ったことのある方は多いはずです。
容器のラベルに書かれた名前だけを見て判断すると、同じ名前でも危険物にならない物品を取りこぼします。
消防法は品名を並べただけで話を終えておらず、その物品が示す性状まで満たしてはじめて危険物として扱う作りになっています。
その性状をどうやって確かめるのかまで法令は決めていますので品名から性状そして試験へと順にたどっておきます。
倉庫にある洗浄剤の缶が危険物なのか判断できません。
ラベルの名前を消防法の表と見比べるだけでよいのでしょうか。
名前を見比べるだけでは足りません。
消防法は品名と性状の両方がそろったものだけを危険物と呼んでいます。
性状というのは誰がどうやって確かめるのですか。
そこは政令が試験の名前まで指定しています。
どこにどう書かれているのかを順に見ていきましょう。
- 消防法第2条第7項は危険物を別表第一の品名欄に掲げる物品で性質欄の性状を有するものと定めています
- その性状は政令で定める試験において政令で定める性状を示すことという書き方で決められています
- 試験の中身は危険物の規制に関する政令第1条の3から第1条の8までが類ごとに指定しています
- 硫黄や鉄粉やカリウムのように試験を待たずに性状を示すものとみなされる物品もあります
- 気体は別表第一の定義から外れており消防法の危険物にはなりません
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目次
消防法の危険物とはどこまでを指すのか

その範囲は法律の本文にたった一文で書かれています。
別表第一には第1類から第6類までの区分があり、それぞれの項に品名が並び、その左側に酸化性固体や引火性液体といった性質の名前が置かれています。
つまり品名欄に自分の物品と同じ名前を見つけても、それだけでは結論は出ません。
さらに備考第1号は固体を定義するにあたって液体と気体を明示的に除いており、気体は消防法の危険物にならないことがここから読み取れます。
自分の建物にある物を仕分けるときは、まず常温で固体なのか液体なのかを見て、そのうえで品名欄をたどるのが早道です。
ボンベに入ったガスは危険物ではないのですね。
消防法の危険物という枠には入りません。
ただし別の法律や条例の対象になりますので、危なくないという意味ではありません。
危険物かどうかはなにで決まるのか

その定義の書き方が、この記事のいちばんの要点です。
備考第1号の酸化性固体も、備考第8号の自然発火性物質及び禁水性物質も、備考第18号の自己反応性物質も、同じように政令で定める試験を経由する書き方になっています。
その試験を具体的に指定しているのが危険物の規制に関する政令第1条の3から第1条の8までで、たとえば第1条の4は可燃性固体について小ガス炎着火試験を指定し、試験物品が10秒以内に着火して燃焼を継続することを政令で定める性状としています。
第4類の引火性液体については第1条の6がタグ密閉式引火点測定器による測定を指定し、引火点が80度以下の温度で測定されない場合などに別の測定器へ切り替える手順まで書き分けています。
さらに第1条の9が細目を総務省令に委ねており、それを受けているのが危険物の試験及び性状に関する省令です。
試験の名前まで政令に書いてあるとは思いませんでした。
装置の名前と合格の線まで書き込まれています。
だから同じ名前の製品でも組成が違えば結論が変わるのです。
試験をしなくても決まる物品はあるのか

そこで備考は、試験を経ずに結論が出る物品を別に並べています。
危険性がはっきりしている物質については、法律のほうで結論を先に置いてしまうという整理です。
もうひとつの近道が数値による線引きで、備考第7号は引火性固体を固形アルコールその他一気圧において引火点が40度未満のものと定め、第1石油類から第4石油類までも備考第12号と備考第14号から備考第16号までがそれぞれ引火点の幅で区切っています。
第1石油類は21度未満、第2石油類は21度以上70度未満、第3石油類は70度以上200度未満、第4石油類は200度以上250度未満という並びで、いずれも一気圧における引火点が物差しです。
つまり製品の安全データシートに引火点が載っていれば、その一点だけで第何石油類にあたるかの当たりを付けられます。
つまり引火点さえ分かれば見当が付くのですね。
第4類についてはそのとおりです。
まずは手元の安全データシートを集めるところから始めてください。
実務で見落としやすいのはどこか

別表第一の備考は最後の号でその場合の扱いを示しています。
どの類に入れるかは総務省令が決めるという作りなので、酸化性と自己反応性の両方を示すような物品を現場の判断で振り分けてはいけません。
見落としやすいのは、危険物にあたらないからといって規制が無いわけではないという点も同じです。
綿花類や再生資源燃料のような指定可燃物は市町村の火災予防条例の別表で数量とともに定められており、危険物とは別の枠で貯蔵と取扱いの基準がかかります。
もうひとつは測定器の使い分けで、第1条の6は引火点が零度以上80度以下で測定され、かつその引火点における動粘度が10センチストークス以上である場合にはセタ密閉式へ切り替えると書いていますので、測定条件まで含めて確かめないと数値だけの比較では足をすくわれます。
危険物でなければ何も要らないと思い込んでいました。
そこは条例が受け持っている部分です。
危険物と指定可燃物は別々の表で数量が決まっていますので両方を見てください。
明日からなにを確認すればよいのか

その場合に消防へ持ち込む道が条例に用意されている地域があります。
危険物だと分かっている物だけでなく、判断が付かない段階の物品についても申出ができる書き方になっています。
同じ条の第3項は、危険物や指定可燃物を貯蔵するタンクとそこに設置する安全装置について、水圧検査や水張検査や機能検査を行って結果を証明することができるとも定めています。
まずは建物の中にある薬品や燃料を置き場所ごとに一覧にし、それぞれの安全データシートから状態と引火点を書き写してください。
そのうえで判断の付かない物品に印を付け、一覧を持って所轄消防署に相談すれば、確認の申出ができる制度が自分の市町村にあるかどうかも同時に分かります。
迷ったまま置いておくよりも一覧にして相談したほうが早いですね。
その一覧はそのまま立入検査の備えになります。
置き場所と量が分かれば次の届出の要否まで見えてきます。
よくある質問
まとめ
今週じゅうに薬品の一覧と安全データシートを集めます。
判断の付かない物には印を付けておきます。
その印が相談すべき物品のしるしになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第7項・第4条第1項・別表第一備考
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条の3から第1条の9まで
- 危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)
- 東京都火災予防条例(昭和37年東京都条例第65号)第63条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 東京都例規集データベース
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





