事務所の裏手や倉庫の片隅に、灯油のポリタンクや発電機用の燃料をまとめて置いている建物は珍しくありません。
量が一定を超えると少量危険物として市町村の火災予防条例の規制がかかり、消防署長への届出が要ります。
その届出は置き始めるときだけの話だと思われがちですが、条例は使い始める前の検査ややめたときの届出まで並べています。
どこにどんな手続が書かれているのか置き始めから廃止までを条文の順に確かめておきます。
事務所の裏に灯油を200リットルほど置いています。
届出は置くときに一度出したので、あとは触らなくてよいですよね。
条例は使い始める前の検査と廃止したときの届出も別に定めています。
出して終わりという作りにはなっていません。
置くのをやめたときにも出すものがあるのですか。
はい、遅滞なくという言い方で廃止の届出が書かれています。
どこに置かれた決まりなのかから順に見ていきましょう。
- 指定数量未満の危険物と指定可燃物の基準は消防法第9条の4により市町村条例で定められます
- 指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物が少量危険物と呼ばれる範囲です
- ひな型である火災予防条例(例)第46条は廃止する場合にも同じ届出を準用しています
- 東京都火災予防条例は使い始める前に消防署長の検査を受けるという項を独自に置いています
- 灯油の販売を業とする場合は主たる取扱者を定めて届け出る項が別にあります
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目次
少量危険物の届出は出したら終わりなのか

決まりの置き場所は市町村の条例のほうです。
同条第2項 前項の規定は、同項の貯蔵及び取扱いを廃止する場合について準用する。
消防法第9条の4は、指定数量未満の危険物と指定可燃物の貯蔵及び取扱いの技術上の基準を市町村条例で定めると書いているだけで、手続の中身は条例に預けられています。
そこで消防庁が示しているひな型が火災予防条例(例)で、昭和36年11月22日付けの自消甲予発第73号として通知されています。
その第46条は第1項で置き始めるときの届出を求め、第2項でその規定を廃止する場合に準用すると書いており、始めと終わりの2回が想定されています。
まず自分の建物のある市町村の条例を開き、指定数量未満の危険物等の貯蔵及び取扱いの届出という見出しの条を探すところが出発点になります。
準用という一行で廃止のときまで決まっているのですね。
短い一行なので読み飛ばしやすいところです。
お住まいの市町村の条例で番号を確かめてみてください。
だれがいつまでに届け出ることになるのか

条文は置こうとしている本人を名指ししています。
主語は設置しようとする者なので、貸しビルにテナントとして入って自分の資材を置くのであれば、そのテナントが届出をすることになります。
ここで出てくる少量危険物貯蔵取扱所という言葉の中身は第58条には書かれておらず、同じ条例の第31条が「指定数量の五分の一以上指定数量未満の危険物(以下「少量危険物」という。)を貯蔵し、又は取り扱う場所(以下「少量危険物貯蔵取扱所」という。)」と括弧書きで定義しています。
灯油であれば危険物の規制に関する政令別表第三の第二石油類の非水溶性液体にあたり指定数量は1,000リットルなので、その5分の1の200リットルから少量危険物の範囲に入ります。
期限も条例ごとに違い、東京都は10日前までと定めていますので、置く日が決まった時点で逆算しておくと慌てずに済みます。
うちはテナントなので、大家さんが出すものだと思っていました。
条文が指しているのは設置しようとする者です。
置くのが自社ならご自身の名前で出すことになります。
使い始める前になぜ検査を受けるのか

東京都の条例には届出のあとにもう一段の手続があります。
同条第4項 第1項の規定による届出をした者は、少量危険物又は指定可燃物の貯蔵又は取扱いを開始する前に、当該少量危険物貯蔵取扱所又は指定可燃物貯蔵取扱所の位置、構造及び設備について、消防署長の検査を受けなければならない。
第3項が図面などの内容を審査する規定で、第4項が実際にできあがった場所を見る規定なので、二つは並んでいるようで役割が違います。
検査の対象として条文が挙げているのは位置と構造と設備の三つで、置く物の中身ではなく入れ物のほうが見られます。
そして時期は貯蔵又は取扱いを開始する前と書かれているので、先に運び込んで使い始めてから連絡するという順番は条文の想定と逆になります。
消防庁のひな型である火災予防条例(例)第46条にはこの検査の項がなく、東京都が独自に置いている手続なので、自分の市町村の条例に同じ項があるかどうかを必ず見ておきます。
運び込む前に見てもらう段取りが要るということですね。
そのぶんの日数を工程表に入れておくと安心です。
検査の要否は所轄消防署にご確認ください。
実務で見落としやすいのはどこか

条例の後ろのほうに二つの項が控えています。
同条第6項 指定数量未満の灯油の販売を業とする者は、規則で定めるところにより、貯蔵し、又は取り扱う場合の主たる取扱者を定めて消防署長に届け出なければならない。
設置は10日前までという事前の届出なのに対し、廃止のほうは遅滞なくと書かれているので、やめてから出す形になります。
片づけた時点で条例上の手続が一つ残るという作りなので、倉庫を空にした日や設備を撤去した日が来たら思い出す必要があります。
第1項の後段には届出の内容の変更も同様とすると書かれており、量や場所を変えたときも軽微な変更を除いて同じ届出の対象です。
さらに第6項は灯油の販売を業とする場合に主たる取扱者という人を定めて届け出るよう求めていて、場所ではなく人についての届出がここだけ別に立っています。
つまり片づけて終わりにしてはいけないということですね。
撤去の日程が決まった段階で控えておくと確実です。
変更のときも同じ届出になります。
明日からなにを確認すればよいのか

立入検査でも管理の状況として見られる部分になります。
検査の対象に管理の状況が入っているので、届出の控えがそろっているかどうかは資料の提出を求められたときにそのまま効いてきます。
まず建物のどこに危険物や指定可燃物を置いているかを一覧にし、それぞれの量が条例の線を超えているかを確かめます。
次に、その場所ごとに届出の控えがあるか、使い始める前の検査を受けたか、すでにやめた場所が混ざっていないかを突き合わせます。
条例の条番号も期限も市町村ごとに違いますので、一覧ができたら所轄消防署に持って行って抜けがないかを見てもらうのがいちばん早い方法です。
置き場所の一覧と控えを突き合わせればよいのですね。
その一覧が次の立入検査の備えになります。
迷う場所があれば所轄消防署にご確認ください。
よくある質問
まとめ
今週じゅうに置き場所の一覧と届出の控えを突き合わせます。
撤去済みの場所も洗い出してみます。
その突き合わせが廃止の届出の抜けを見つけてくれます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第4条第1項・第9条の4・別表第一備考十四
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)別表第三
- 消防庁「火災予防条例(例)」(昭和36年11月22日自消甲予発第73号)第46条・第47条
- 東京都火災予防条例(昭和37年東京都条例第65号)第30条・第31条・第58条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 東京都例規集データベース
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





