文化財に指定された建物や古い民家を店舗や宿として使う話が増えています。
ところが基準どおりに消防用設備を付けようとすると景観や構造が壁になります。
消防庁は平成28年に事務連絡を出して、全国の消防本部が実際に特例を認めた事例を集めました。
集まったのは誘導灯をはじめとする設備を条件付きで免除した事例でした。
古い蔵を改装して飲食スペースにする話が出ています。
誘導灯を天井に付けたら台無しだと言われて困っています。
その悩みには消防法施行令第32条という受け皿があります。
実際に全国で免除が認められた事例が公表されています。
免除してもらえるなら助かります。
お願いすれば通るものなのでしょうか。
お願いで通る仕組みではありません。
公表された事例には必ず理由と条件が付いているので、そこから見ていきましょう。
- 消防法施行令第32条は消防長又は消防署長が認めるときに基準の規定を適用しないとする条文です
- 判断のもとになるのは防火対象物の位置と構造と設備の状況です
- 消防庁が集めた事例で目立つのは誘導灯を誘導標識に代える形の免除です
- 免除された事例には訓練や点検などの条件が付けられています
- 決めるのは所轄の消防なので工事の前に相談から始めます
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目次
文化財の建物で特例の事例が全国から集められたのはなぜか

古民家を宿や店に使う流れが先に動き、消防の側が判断の材料をそろえることになりました。
この事務連絡より前にも、平成26年4月1日の消防予第114号で歴史的建築物の適用事例の報告が求められていました。
そこへタスクフォースの議論が重なり、古民家をカフェやレストランや物販店や宿泊施設に使った事例まで報告の対象に広げられています。
報告の期限は平成29年1月20日と決められましたが、それ以降に該当する事例が出たときも随時報告するようにと書かれています。
つまりこの分野の判断材料は今も積み上がっている途中で、前例が無いから諦めるという場面ではないということです。
国が事例を集めているとは知りませんでした。
うちの建物のような話も届いているということですか。
各地の消防本部から報告された事例が別紙にまとめられています。
まずは同じような用途の事例があるかを探すところからです。
消防法施行令第32条はどんなときに使える規定なのか

ただしその三つが誰の判断にかかっているかが要点です。
条文は建物の側に免除を請求する権利を与えているのではなく、消防長又は消防署長が認めたときに基準の規定が適用されないと書いています。
判断のよりどころは、防火対象物の位置と構造と設備の状況という三つの事実です。
そのうえで火災の発生や延焼のおそれが著しく少なく、かつ被害を最少限度に止められると認められることが必要になります。
文化財だからという理由だけでは足りず、建物ごとの事実を並べて説明する準備がいるということです。
文化財という肩書きだけでは通らないわけですね。
建物の中身を説明する必要があるということですか。
そのとおりです。
間取りと避難経路と使い方の三つを図面と言葉で示せるように整理しておいてください。
集められた事例ではどの設備がどんな理由で免除されたのか

その中でいちばん多いのが誘導灯をめぐる判断でした。
この事例では飲食店として使うことで生じた誘導灯の義務を、誘導標識に置き換えることで整理しています。
同じ別紙には、歌舞伎の舞台として年に5回程度しか使われない演芸場で屋内消火栓設備や誘導灯を免除した事例や、客席誘導灯を置く場所そのものが無い演芸場の事例も載っています。
文化財の中に配管を通すと価値が失われるとして、増築した部分に屋内消火栓設備を置き、包含されない部分には消火器を増設することで認めた事例もあります。
どの事例も設備をただ減らしたのではなく、建物の造りや使い方の事実を並べたうえで別の手段に振り替えている点が共通しています。
なくすのではなく別の物に替えるという考え方なんですね。
それなら景観も守れます。
置き換える先を自分から提案できると話が進みます。
標識の位置や消火器の本数まで図面に落として持っていってください。
免除と引き換えになにを求められるのか

認められた事例の多くには、そのあとずっと守るべき条件が付いています。
この事例では、位置と構造と使用形態を変えないことが条件の先頭に置かれています。
つまり免除を受けたあとに間取りを変えたり営業のしかたを変えたりすれば、その前提は崩れるということです。
訓練を年1回以上行うこと、設置してある消防用設備等の点検と報告を行って適正に管理することも条件に並んでいます。
別の事例では利用人数を制限する誓約書の提出や、二階の収容人員を30人以上にしないことを条件にした管理も行われています。
認めてもらったら終わりだと思っていました。
そのあとの使い方まで縛られるんですね。
縛られるというより前提を守るということです。
条件は消防計画にも書き写して引き継げるようにしておいてください。
明日からなにを確認すればよいのか

規則にはじめから免除が書かれている場合があるからです。
誘導灯には消防法施行規則第28条の2という免除の規定があり、居室から避難口を見通せて歩行距離が短い階などが並んでいます。
実際に別紙の事例でも、令第26条第1項ただし書と規則第28条の2を使って設備の設置を緩和した消防本部があります。
そこに当てはまらないときにはじめて、建物の位置と構造と設備の状況を並べて第32条の相談に進みます。
持っていくものは図面と用途がわかる書類と使い方の説明で、着工前に所轄消防署へ相談するのが結局いちばん早い道です。
まず規則の免除に当たるかを見るという順番ですね。
図面を用意して来週相談に行ってみます。
その順番なら話が通りやすくなります。
同じ用途の公表事例を印刷して持っていくと説明がさらに早くなります。
よくある質問
まとめ
免除には条件が付くという線がやっとわかりました。
図面をそろえて相談に行ってきます。
建物ごとの事実をそろえた側から話が進みます。
置き換える設備の選び方に迷うところがあれば㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 歴史的建築物に係る消防法施行令第32条の適用事例の情報提供等について(依頼) 平成28年12月19日 事務連絡
- 歴史的建築物に係る消防法施行令第32条の適用事例の報告期限等について(依頼) 平成28年12月21日 事務連絡
- 歴史的建築物に係る消防法施行令第32条の適用事例の報告等について(依頼) 平成26年4月1日 消防予第114号
- 文化財建造物に係る消防用設備等の取扱いについて 平成16年2月6日 消防予第26号
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第32条 基準の特例
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第26条 誘導灯及び誘導標識に関する基準
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第28条の2 誘導灯及び誘導標識を設置することを要しない防火対象物又はその部分
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





