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滑り棒や避難ロープは3階でも使えるのか|適応する階と器具ごとに異なる設置基準を解説

滑り棒や避難ロープを設けられるのは2階だけなのかを示したアイキャッチ画像

避難器具というと避難はしごや緩降機を思い浮かべる方が多いはずです。
けれども消防法施行令の表には滑り台滑り棒や避難ロープや避難橋も並んでいます。
この四つは避難はしごとは別の号に分かれていて、設け方もそれぞれ決められています。
この記事では適応する階と器具ごとの降下空間を、令と規則と告示の条文だけを見て順に確かめます

うちのビルの避難器具の一覧に滑り棒と書いてあります。
避難はしごや緩降機とはなにが違うのでしょうか。

棒をつかんで滑り降りる避難器具です。
ただし設けられる階が限られているので一覧をよく見てください。

階まで決まっているのですか。
2階のものを3階へ付け替えたいという話が出ていました。

滑り棒と避難ロープが挙がっているのは2階の欄だけです。
3階以上の階には適応する避難器具として並んでいません。

この記事の結論
  • 消防法施行令第25条第2項第一号の表は階ごとに適応する避難器具を定めており、どの器具もどの階にでも設けられるわけではありません
  • 滑り棒と避難ロープが挙がっているのは2階の欄だけで、3階以上の階には適応する避難器具として並んでいません
  • 告示は滑り台と滑り棒と避難ロープと避難橋のそれぞれに号を立て、降下空間や避難空地の広さを別々に決めています
  • 降下空間は滑り棒と避難ロープが半径0.5メートルの円柱形、滑り台が滑り面の上方1メートル以上、避難橋が踏面の上方2メートル以上です
  • 四つの器具はいずれも避難はしごの規定を借りており、どの号を借りるかが器具ごとに違います

滑り台と滑り棒と避難ロープと避難橋の降下空間の違いを並べた図解

滑り棒や避難ロープはどんな避難器具なのか

建物の開口部から地面まで伸びる滑り棒と垂らした避難ロープを並べた図
滑り棒も避難ロープも、名前のとおり棒とロープだけの器具です。
それでも消防法施行規則は号を立てて設け方を決めています。
消防法施行規則第27条第1項第八号(すべり棒及び避難ロープ) 八 すべり棒及び避難ロープは、次のイからハまでに定めるところにより設けること。 イ すべり棒及び避難ロープの長さは、取付け位置から地盤面その他の降着面までの長さとすること。 ロ すべり棒は、その上部及び下部を取付け具で固定できるものであること。 ハ すべり棒及び避難ロープの取付け具は、第五号イ及びロの規定の例により設けること。
棒とロープにも条文の裏づけがあります
長さは取付け位置から降着面までとされているので、途中で終わってしまうものは基準を満たしません。
滑り棒は上部と下部の両方を取付け具で固定できることが条件で、上だけを留めたものは該当しません。
取付け具はつり下げはしごと同じ第五号イ及びロの規定の例によるとされ、柱や床など構造上堅固な部分に取り付けます。
まずは自分の建物の一覧に滑り棒や避難ロープが載っていないかを確かめてください。

棒とロープにも条文があるとは思いませんでした。
点検票で名前を見たことはあります。

長さと取付け具が決められています。
上部と下部の取付け具が緩んでいないかを見てください。

滑り棒と避難ロープは何階に設けられるのか

2階の滑り棒と3階の滑り棒を並べて適応する階の違いを示した図
避難器具は建物の階ごとに設けるものが決まっています。
その組み合わせを定めているのが消防法施行令の表です。
消防法施行令第25条第2項第一号(避難器具に関する基準) 2 前項に規定するもののほか、避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。 一 前項各号に掲げる階には、次の表において同項各号の防火対象物の区分に従いそれぞれの階に適応するものとされる避難器具のいずれかを、(略)設置すること。
表に載っていない器具はその階の避難器具になりません
表は階を地階と2階と3階と4階又は5階と6階以上の階に分け、防火対象物の区分ごとに適応する器具を並べています。
このうち滑り棒避難ロープが挙がっているのは2階の欄だけです。
しかも令第25条第1項第二号と第三号と第五号の防火対象物の2階に限られ、同項第一号の防火対象物の2階には並んでいません。
滑り台と避難橋が2階から6階以上の階まで広く挙がっているのとくらべると、同じ四つでも扱いがまったく違います。

2階の欄だけというのは意外です。
3階へ移すのは難しいということですね。

表に挙がっていない階では、その階の避難器具として選べません。
移す前に防火対象物の区分と階の欄を必ず確かめてください。

器具ごとに求められる降下空間はどれだけ違うのか

滑り台と滑り棒と避難橋のまわりに空ける降下空間の形を示した図
降下空間は器具を使って降りるときに人が通る空間のことです。
この空間の取り方が器具ごとにまったく違います。
避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目 第三(避難器具の設置方法等) 四(四) 降下空間は、滑り台の滑り面から上方に一メートル以上及び滑り台の両端からそれぞれ外方向に〇・二メートル以上の範囲内であること。 五(一) 降下空間は、滑り棒を中心とした半径〇・五メートルの円柱形の範囲とすること。 六(一) 降下空間は、避難ロープを中心とした半径〇・五メートルの円柱形の範囲とすること。ただし、壁面に沿って降下する場合の壁面側に対しては、この限りでない。 七(四) 降下空間は、避難橋の踏面から上方二メートル以上及び避難橋の最大幅以上であること。
同じ降下空間という言葉でも形が違います
滑り棒と避難ロープは器具を軸にした円柱形で、半径はどちらも0.5メートルです。
滑り台は滑り面の上に1メートルを空け、さらに両端から外へ0.2メートルずつ広げます。
避難橋は人が歩く踏面の上に2メートルを空け、幅は避難橋の最大幅以上とされています。
避難ロープだけは壁面に沿って降りる場合の壁面側が除かれていて、壁に沿わせて張ることが想定されています。

棒とロープは同じ半径なのですね。
それなら覚えやすくて助かります。

形は同じでも壁面側の扱いが違います。
避難ロープは壁面に沿う場合だけが別に書かれています。

避難はしごの規定をどこまで借りているのか

避難はしごの規定を滑り棒と避難ロープと避難橋が借りている関係を示した図
告示の四つの号は、どれも短く見えます。
基本の条件を避難はしごの規定から引いてくる書き方になっているためです。
同告示 第三(各器具の柱書) 四 滑り台 滑り台は、一(一)ロ、ハ、ト及びヌによるほか、次によること。 五 滑り棒 滑り棒は、一(一)イからニまで、ト及びヌによるほか、次によること。 六 避難ロープ 避難ロープは、一(一)イからニまで、ト、リ及びヌによるほか、次によること。 七 避難橋 避難橋は、一(一)ヌによるほか、次によること。
借りている号が器具ごとに違います
一(一)のイは取付部の開口部の大きさ、ロは開口部の下端の高さ、ハは窓や扉のストッパー、ニは操作面積の規定です。
滑り棒と避難ロープはイからニまでを丸ごと借りますが、滑り台が借りるのはロとハだけで、開口部の大きさと操作面積は自分の号に別に置かれています。
避難橋が借りるのはヌの一つだけで、これは降下空間と架空電線との間隔を1.2メートル以上とする規定です。
避難ロープだけはリが加わり、使用状態にしたときの下端から降着面等までの高さが0.5メートル以下という条件も掛かります。

つまり条文を行ったり来たりして読むわけですね。
短い号ほど気をつけないといけません。

そのとおりです。
器具ごとに借りている号をたどらないと条件を読み落とします

明日からなにを確かめればよいのか

滑り棒の上部と下部の取付け具を点検する担当者を示した図
条文の読み方が分かれば、確かめる順番も決まってきます。
まずは自分の建物にどの器具がどの階にあるかからです。
消防法施行規則第27条第1項第七号・第九号 七 すべり台は、次のイからニまでに定めるところにより設けること。 イ すべり台は、防火対象物の柱、床、はりその他構造上堅固な部分又は堅固に補強された部分に取り付けること。(略) ニ 転落を防止するための適当な措置を講じたものであること。 九 避難橋及び避難用タラツプは、次のイ及びロに定めるところにより設けること。(略) ロ 避難橋及び避難用タラツプは、一端をボルト締め、溶接その他の方法で堅固に取り付けること。
まず器具の種類と階を突き合わせます
消防用設備等の点検票や設計図書を出して、どの階にどの器具が載っているかを書き出してください。
次にその器具が令第25条第2項第一号の表でその階に適応するものとされているかを確かめます。
そのうえで降下空間にあたる場所に物が置かれていないかを見て、取付け具の緩みや転落防止の措置を点検の記録で確認します。
表と告示のどちらか一方だけを見ていると、階の条件か空間の条件のどちらかを落とします。

点検票を出して階ごとに並べてみます。
令の表と見くらべれば分かりそうです。

それがいちばんの早道です。
表と食い違うものが見つかったら所轄消防署に相談してください。

よくある質問

Q滑り棒や避難ロープは3階に設けてはいけないのですか?
A令第25条第2項第一号の表は階ごとに適応する避難器具を定めていて、滑り棒と避難ロープが挙がっているのは2階の欄だけです。表に挙がっていない階では、その階に必要な避難器具として選べません。
Q滑り台と避難橋はどの階でも使えますか?
A表では滑り台と避難橋が2階から6階以上の階まで広く挙がっています。ただし防火対象物の区分ごとに行が分かれているので、自分の建物の区分の行を見て確かめてください。
Q避難ロープの降下空間は壁のすぐそばでもよいのですか?
A告示は降下空間を半径0.5メートルの円柱形としたうえで、壁面に沿って降下する場合の壁面側についてはこの限りでないとしています。除かれるのは壁の側だけで、反対側や左右まで詰めてよいという意味ではありません。
Q滑り棒は上だけ固定してあれば足りますか?
A消防法施行規則第27条第1項第八号ロは、すべり棒についてその上部及び下部を取付け具で固定できるものであることと定めています。下部の取付け具が無いものはこの号を満たしません。

まとめ

避難器具は避難はしごや緩降機だけでなく、滑り台と滑り棒と避難ロープと避難橋も令の表に並んでいます
令第25条第2項第一号の表は階ごとに適応する避難器具を定めていて、階と器具の組み合わせが決まっています
滑り棒と避難ロープが挙がるのは2階の欄だけで、しかも防火対象物の区分も限られています
降下空間は滑り棒と避難ロープが半径0.5メートルの円柱形、滑り台が滑り面の上方1メートル以上です
避難橋の降下空間は踏面の上方2メートル以上で、幅は避難橋の最大幅以上とされています
四つの器具はいずれも避難はしごの規定を借りていて、借りる号が器具ごとに違います
令の表と告示の両方を突き合わせないと、階の条件か空間の条件のどちらかを落とします

点検票と令の表を並べて確かめてみます。
棒とロープが2階だけというのは今日いちばんの収穫です。

器具の種類と階の組み合わせは見落とされがちです。
避難器具の適応や設け方のことなら㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第25条(避難器具に関する基準)
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第27条(避難器具に関する基準の細目)
  • 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年4月16日消防庁告示第2号・最終改正 平成18年5月19日消防庁告示第16号)第三

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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