校内や店内に不審者が入ってきた。
そのとき、壁の赤い押しボタンを押して建物じゅうに知らせてよいのでしょうか。
火事ではないのに鳴らすことは、消防法が禁じているようにも読めます。
実は消防庁が、火災以外の緊急時に自動火災報知設備を使ってよい場合の考え方を通知で示しています。
うちの施設に不審者が入ってきたら、非常ベルを鳴らして一斉に知らせたいと思っています。
でも火事ではないのに鳴らしたら、法律違反になりませんか。
消防法は火災報知機のみだりな使用を禁じています。
ただし消防庁は、火災以外の緊急時でもみだりな使用に当たらない場合があると示しています。
どこで線が引かれるのですか。
その場で判断できる目安がほしいです。
鳴らして守られる利益と、鳴らすことで失われる利益を比べます。
この記事では通知の原文で、その比べ方を確認していきます。
- 自動火災報知設備は消防法第18条第1項の火災報知機に当たりみだりな使用が禁じられています
- 火災以外の緊急時に使ってよいかの考え方は平成13年6月21日付け消防予第206号が示しました
- 判断は確保しようとする利益と同項が保護しようとする利益との比較考量と代替手段の有無等によります
- 人命に差し迫った危難が及んでいる場合の使用はみだりな使用ではないと通知は述べています
- 鳴らしたあとは火災でない旨を人々へ早急に周知し消防機関へ速やかに連絡する配慮が望ましいとされています
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目次
消防庁はなぜ火災以外の使用について通知を出したのか

学校で起きた事件から13日後に出されたものです。
去る6月8日に発生した大阪府池田市内の小学校における児童等に対する無差別殺人並びに殺人未遂事件に鑑み、火災以外の緊急時における自動火災報知設備の使用については下記の事項に留意されるようお願いします。
現場では、火事ではない危険を建物全体へ一斉に知らせる手段が、自動火災報知設備しか無いことがあります。
一方で火災報知機は、消防法が使い方そのものを縛っている設備でもあります。
その二つがぶつかったときにどう考えればよいのかを、消防庁が正面から示したのがこの通知です。
あて先は各都道府県消防主管部長で、都道府県内の市町村への周知もあわせて求めています。
事件のあとすぐに出た通知なんですね。
現場が困っていたことが伝わってきます。
そのとおりです。
火事以外の危険をどう一斉に知らせるかは、いまも施設ごとの課題として残っています。
自動火災報知設備は消防法のどの禁止にかかっているのか

出発点は消防法のひとつの条文です。
何人も、みだりに火災報知機、消火栓、消防の用に供する貯水施設又は消防の用に供する望楼若しくは警鐘台を使用し、損壊し、撤去し、又はその正当な使用を妨げてはならない。
自動火災報知設備は、早期に火災の発生を感知し、防火対象物内又はその付近の人々に報知することを目的とする設備であり、消防法第18条第1項の「火災報知機」に該当するものであることから、同項によって「みだり」な使用が禁じられているものであること。
条文の火災報知機という言葉は古い言い回しのままですが、通知はここに自動火災報知設備が含まれるとはっきり書きました。
そして違反には罰則があります。消防法第44条第13号で30万円以下の罰金又は拘留です。
つまり鳴らしてよいかは社内の運用の問題ではなく、罰則のある禁止に触れるかどうかの問題になります。
だからこそ、線引きを示す通知が必要とされました。
罰則まであるとは思いませんでした。
ボタンひとつのことなのに重いですね。
いたずらで鳴らされると、消防隊が空振りで出動してしまいます。
その損失を防ぐための条文だと考えると分かりやすいです。
みだりな使用かどうかはなにを比べて判断されるのか

では、なにがみだりに当たるのかを通知は具体的に書いています。
しかしながら、火災以外の緊急時における自動火災報知設備の使用が同項の禁じる「みだり」な使用にあたるか否かについては、その使用によって確保しようとする利益と、いたずらに人心に不安を与えることを防止し、あるいは、消防機関若しくは通報者が誤認することによって消防機関が出動した場合の人的又は物的な損失を未然に防ぐという同項が保護しようとする利益との比較考量、代替手段の有無等から判断されるものであり、例えば、本事件のように人命に差し迫った危難が及んでいる場合において自動火災報知設備を使用することは「みだり」な使用ではないと考えられること。
一方の皿に載るのは、鳴らすことで確保しようとする利益です。
もう一方の皿に載るのは、いたずらに人心へ不安を与えないことと、消防機関が誤認して出動したときの人的または物的な損失を防ぐことです。
これに代替手段の有無が加わります。館内放送で足りる場面なのかどうか、という視点です。
そのうえで通知は、人命に差し迫った危難が及んでいる場合の使用はみだりな使用ではないと考えられる、と述べています。
代替手段があるかどうかも見るのですね。
放送設備があるなら、まずはそちらということでしょうか。
通知は代替手段の有無を判断の要素として挙げているだけで、使う順番まで決めてはいません。
とはいえ、放送で伝わる状況なら放送のほうが誤解は少ないです。
鳴らしたあとに忘れられやすいのはどこか

実務で抜けやすいのは、むしろこちらです。
なお、火災以外の緊急時において自動火災報知設備を使用したときは、消防法第18条第1項の趣旨に鑑み、その緊急の内容と火災ではない旨を当該報知を受けた人々に早急に周知するとともに、火災でない旨を消防機関に速やかに連絡する等の配慮がなされることが望ましいこと。
ベルだけが鳴り続けると、館内の人は火災だと思って避難を始めます。
避難の途中で転倒したり、かえって危険な方向へ動いたりすることも起こり得ます。
だから通知は緊急の内容と火災ではない旨を、報知を受けた人々へ早急に周知することを求めています。
あわせて消防機関への連絡も挙げていますが、どちらも望ましいことという書き方で、義務としては書かれていません。
鳴らした人が、そのあと放送もするということですね。
そこまで決めておかないと現場は動けません。
そのとおりです。
誰が鳴らし、誰が放送し、誰が消防へ連絡するかを先に決めておくと迷いません。
明日から消防計画になにを書き足せばよいか

自分の建物の言葉に置き換えておく必要があります。
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施(略)その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
誰が鳴らしてよいのか、鳴らしたあと誰が放送するのか、消防機関への連絡は誰がするのか。
この役割分担を消防計画の自衛消防の組織の欄に落とし込んでおけば、当日に迷いません。
訓練でも、火災の想定だけでなく火災以外の緊急時の一斉知らせを一度は通しておくと差が出ます。
実際に鳴らすかどうかは現場の状況によるので、判断に迷いそうな場面は所轄消防署へ事前に相談しておくのが確実です。
消防計画に書いておけばよいのですね。
次の見直しのときに足しておきます。
その一手間で、当日の迷いがなくなります。
訓練の想定は、初期消火や通報の訓練とセットで組むと無理がありません。
よくある質問
まとめ
もやもやが晴れました。
まずは消防計画に手順を書き足します。
それがいちばん確実な備えです。
消防計画の見直しや訓練の組み立ては、㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 火災以外の緊急時における自動火災報知設備の使用について(平成13年6月21日付け消防予第206号)
- 消防法第18条第1項(火災報知機等のみだりな使用等の禁止)
- 消防法第44条第13号(罰則)
- 消防法第8条第1項(防火管理者による消防計画の作成及び訓練の実施)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





