建物の造りを決めているのは消防法だけではありません。
その敷地が防火地域や準防火地域に入っているかどうかで、屋根も外壁も窓も、選べるものが先に絞られています。
立入検査で構造の話になったとき、根拠が建築基準法の側にあることは意外と知られていません。
地域の指定は建物が建つ前から決まっている前提条件です。
立入検査で外壁と窓の造りを聞かれたのですが、消防法のどこにその決まりがあるのですか。
その話の根拠は建築基準法の側にあります。
建物がどの地域に建っているかで求められる造りが変わります。
地域というのは、番地のような住所のことでしょうか。
いいえ、都市計画で線を引いた防火地域と準防火地域のことです。
どこで線が引かれ、そこで何が変わるのかを順に見ていきましょう。
- 防火地域と準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とされています(都市計画法第9条第21項)
- そのどちらでもない市街地にも、屋根と外壁の規制がかかる法第22条の区域があります
- 建築物に求められる造りは地域の別と階数と延べ面積の組み合わせで四つの号に分かれます(建築基準法施行令第136条の2)
- 防火地域では、建物の屋上に設ける看板や高さ3メートルを超える広告塔も不燃材料で造るか覆う必要があります(建築基準法第64条)
- 敷地が地域の内外にまたがるときは、原則として建物の全部に厳しいほうの規定がかかります(建築基準法第65条)
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目次
防火地域や準防火地域はだれが定めているのか

市町村や都道府県が都市計画として定め、地図の上に線を引いたものです。
防火地域と準防火地域は都市計画として定められる地域で、市街地の火災の危険を防除することがその目的です。
これに対して建築基準法第22条第1項は、防火地域でも準防火地域でもない市街地について、特定行政庁が区域を指定する仕組みを別に置いています。
実務ではこの区域を法第22条の区域と呼び、防火地域・準防火地域とあわせて三段階で語られます。
どの区域にも入っていない土地もありますが、自分の建物がそのどれなのかを知らないままだと、増築や改修のときに設計の前提から食い違います。
指定されていることを建物側に知らせる通知のようなものは届くのですか。
個別の通知ではなく、都市計画の図書を一般の縦覧に供する形で公開されています。
まずは自分の敷地がどの色で塗られているかを確かめてください。
防火地域と準防火地域で建物の造りはどこで分かれるのか

同じ準防火地域でも、階数と延べ面積によって求められる造りは別のものになります。
建築基準法施行令第136条の2は、防火地域内で階数が3以上か延べ面積が100平方メートルを超えるもの、準防火地域内で地階を除く階数が4以上か延べ面積が1,500平方メートルを超えるものを、いちばん重い第一号に置いています。
防火地域内で階数が2以下かつ延べ面積が100平方メートル以下のものと、準防火地域内で地階を除く階数が3のもの、または地階を除く階数が2以下で延べ面積が500平方メートルを超え1,500平方メートル以下のものが第二号です。
準防火地域内で地階を除く階数が2以下かつ延べ面積が500平方メートル以下のものは、木造建築物等かどうかで第三号と第四号に分かれます。
どの号に入っても延焼のおそれのある部分の開口部に防火設備を設けることは共通なので、まずは隣地境界線から1階で3メートル、2階以上で5メートルの範囲に何があるかを見てください。
隣が公園なら、その側の窓は延焼のおそれのある部分から外れるということですか。
条文は防火上有効な公園や広場や川に面する部分を除いています。
面していれば自動的に外れるわけではないので、図面を持って窓口で確かめてください。
屋根と外壁にはなにが求められるのか

市街地の火災では飛んできた火の粉が屋根に落ちて次の火災が始まるため、条文もそこを名指ししています。
一 屋根が、市街地における通常の火災による火の粉により、防火上有害な発炎をしないものであること。
二 屋根が、市街地における通常の火災による火の粉により、屋内に達する防火上有害な溶融、亀裂その他の損傷を生じないものであること。
火の粉で有害な発炎をしないことと、火の粉で屋内に達する溶融や亀裂を生じないことで、防火地域でも準防火地域でも同じ基準がかかります(建築基準法第62条)。
法第22条の区域では屋根に加えて外壁も見られますが、外壁の規制がかかるのは木造建築物等の延焼のおそれのある部分に限られます。
さらに延べ面積が1,000平方メートルを超える木造建築物等は、地域の指定と関係なく外壁及び軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造とし、屋根を法第22条第1項の構造にしなければなりません(建築基準法第25条)。
屋根の葺き替えや外壁の張り替えを検討するときは、材料を選ぶ前にこの三つのうちどれがかかるのかを設計者に確認してください。
屋根の葺き替えは修繕のつもりでしたが、材料まで決められているのですね。
条文が求めているのは材料名ではなく性能です。
国土交通大臣が定めた構造方法か認定を受けたものかを、見積書の段階で確かめておきましょう。
屋上の看板や高い塀にも規制はかかるのか

防火地域では、屋上に載っているものと敷地の境に立っているものにも別の条文が用意されています。
防火地域内であれば、建物の屋上に設けるものは高さを問わず、地上に立てるものは高さが3メートルを超えれば、主要な部分を不燃材料で造るか覆う必要があります。
テナントの入れ替わりで袖看板や屋上看板を作り替えるときに見落とされやすい条文で、意匠だけを決めて発注すると後から骨組みごとやり直しになります。
門や塀については、高さが2メートルを超えるもので防火地域内の建築物に附属するものなどが延焼防止上支障のない構造とされ(建築基準法施行令第136条の2第五号)、高さ2メートル以下のものは法第61条第1項のただし書で外れます。
逆に外壁が耐火構造であれば隣地境界線に接して外壁を設けられるという緩和もあるので、敷地いっぱいに建てたいときはここを見てください。
屋上の看板は前からあるものですが、作り替えるときに関係してくるのですね。
看板屋さんへの発注書に防火地域であることを書き添えておくのが確実です。
骨組みの材料が決まってからでは直しが大きくなります。
明日からなにを確かめればよいのか

敷地が地域の境目にかかっている場合の扱いも、条文がはっきり書いています。
2 建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては、その全部について防火地域内の建築物に関する規定を適用する。(略)
防火地域と指定のない区域にまたがれば全部が防火地域の扱いになり、防火地域と準防火地域にまたがれば全部が防火地域の扱いになります。
外れるのは防火壁で区画されている場合の、その防火壁の外側の部分だけです。
法第22条の区域についても同じ考え方の規定が置かれています(建築基準法第24条)ので、境目の敷地ほど早めに確かめる価値があります。
やることは3つで、都市計画の図書の縦覧で敷地の地域を確かめ、確認済証や検査済証で今の建物がどの号で建てられたかを押さえ、改修や看板の入れ替えを決める前に設計者と所管の建築部局に当てるという順番です。
つまり、まず地図で自分の敷地を確かめるところからですね。
そのとおりです。
地域が分かれば残りの条文はほとんど自動的に決まります。
よくある質問
まとめ
地図の色から確かめればよいと分かって気が楽になりました。
さっそく縦覧を見に行きます。
地域と規模の二つが分かれば、屋根も外壁も看板も筋道が通ります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第6号・第22条・第23条・第24条・第25条・第61条・第62条・第63条・第64条・第65条
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条・第136条の2・第136条の2の2
- 都市計画法(昭和43年法律第100号)第9条第21項・第20条第2項
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。地域の指定や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所管の建築部局および所轄消防署にご確認ください。





