防火対象物点検報告の特例認定には、法令が直接定める要件のほかに、市町村長が独自に定める基準もあります。
この「市町村長が定める基準」は、いつでも・何でも定められるわけではありません。
テナントの一部に設備の不備があるだけで、認定全体が受けられなくなるのかという疑問もよく聞かれます。
消防庁の執務資料が示す、認定の技術基準の境界線を見ていきましょう。
うちのテナントの1つで、スプリンクラーが故障中なんです。
それだとそのテナントの認定要件を満たしません。
市町村独自の基準って、どこまで自由に決められるんですか。
決められる範囲は限られています。順番に見ましょう。
- 市町村長が定める基準は制度の施行前から前倒しで効力を持ちます
- 市町村長は危険物や建築基準法に関する事項までは定められません
- 施行令の緩和規定があっても認定の技術基準は緩和されません
- 一部テナントの設備不備はそのテナントの認定要件を満たさない結果になります
- 点検報告の基準不適合は直ちに設備点検側の要件不適合を意味しません
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目次
市町村長が独自に定める基準はいつから効力を持つのか

この前倒し期間に、市町村長独自の基準はどう扱われるのでしょうか。
特例認定そのものが平成15年1月1日から前倒しで受けられる仕組みになっており、それに合わせて市町村長が定める基準も同じタイミングから効力を持ちます。「本施行日はまだ先だから独自基準は関係ない」という理解は誤りです。
前倒し期間に申請を受け付ける自治体では、独自基準の内容も含めて早い段階から周知しておく必要があります。
このあと見る「市町村長が定められる範囲」を理解しておくと、前倒し期間の審査でも迷いにくくなります。
前倒し期間でももう効いてるんですね。
はい。ただし定められる中身には限界があります。
市町村長は危険物や建築基準法の基準まで定められるのか

実際に危険物や建築基準法の事項まで含められるのか、執務資料で確認します。
危険物に関する事項は、消防法の危険物規定という別の体系で扱うべきものなので、特例認定の独自基準には持ち込めません。
建築基準法に関する事項も、条文上「この法律又はこの法律に基づく命令」に該当しないという理由で対象外とされています。根拠となる法律の枠組みそのものが違う、という整理です。
独自基準の中身を確認するときは、それが本当に消防法の範囲内の話かどうかをまず見てください。
危険物と建築基準法は別の法律の話だからなんですね。
そのとおりです。次は緩和の話です。
令第2条や第8条の緩和は認定基準の検査にも及ぶのか

この緩和は、点検報告の点検基準だけでなく、特例認定の検査にも及ぶのでしょうか。
複合用途の建物を一つの防火対象物とみなす、あるいは管理権原ごとに分けて扱うといった令第2条・第8条の緩和規定は、通常の点検報告の点検基準には及びます。
ですが特例認定の要件である規則第4条の2の8第1項第1号の基準は、この緩和の対象外です。点検報告では緩和されている建物でも、特例認定の検査では緩和前の基準で見られることになります。
点検報告で緩和を受けている建物ほど、特例認定を検討する際にこの違いを見落としやすい点に注意してください。
点検では緩和されてても、認定では別なんですね。
はい。テナント単位の話も見てみましょう。
テナントの消防用設備等に不備があると認定は受けられないのか

自分のテナントだけの申請でも、設備の不備が認定に影響するのでしょうか。
自分のテナント内の設備そのものの不具合と、建物全体で設置されている設備の点検報告の未実施は、原因は違いますが、どちらも同じ第3号の認定要件を満たさない結果になります。
テナント単位で申請する場合でも、自分の区画の設備だけでなく、建物全体に関わる設備の点検報告状況まで確認しておく必要があります。
管理権原者が複数いる建物で申請を検討するなら、他のテナントや建物全体設備の状況を事前に共有してもらうことが欠かせません。
自分のところだけ見てても足りないんですね。
建物全体まで確認してください。
点検基準に適合しないと消防用設備等点検の認定要件も満たさないのか

では消防用設備等点検のほうの点検基準に適合しない場合も、同じように考えてよいのでしょうか。
防火対象物点検の点検基準への不適合は第2号ニの要件に直結しますが、消防用設備等点検の点検基準への不適合は、第3号の要件(点検報告の遵守)とは別の話です。点検報告さえしていれば、その点検結果の中身自体は第3号の直接の判断材料にはなりません。
ただし現実には、点検基準に適合しないような設備の状態であれば、別の第2号の基準(設備が技術基準に従って維持されていること)のほうで引っかかる可能性が高いとも指摘されています。
「点検さえ報告していれば大丈夫」と考えず、設備そのものが技術基準に適合しているかを別途確認する視点を持ってください。
点検報告と設備の中身は別で見られてるんですね。
設備の中身まで確認してください。
よくある質問
まとめ
うちのテナントの設備、もう一度点検し直してもらいます。
建物全体の状況も他のテナントに確認してみます。
判断に迷ったら
管轄消防署への相談をおすすめします。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 防火対象物点検報告制度に関する執務資料について(平成14年12月12日 消防安第122号)問20・問21・問22・問23・問24
- 消防法第8条の2の3、消防法施行令第2条・第8条、消防法施行規則第4条の2の6・第4条の2の8
- 消防法施行令の一部を改正する政令(平成14年政令第274号)附則第2条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および執務資料に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、条項番号や制度名等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





