事務所ばかりのビルの一角に小さな福祉施設や旅館が入っていることがあります。
その階に避難器具を置かなければならないのかは意外と判断が分かれます。
消防法施行規則第26条第6項は小規模特定用途複合防火対象物に限って設置しないことができる場合を定めています。
この記事では消防法施行令と消防法施行規則の条文だけを見て免除の三つの条件と二階だけに効く特例を整理します
うちの雑居ビルは事務所ばかりで二階にだけ小さなデイサービスが入っています。
この階にも避難器具が要るのでしょうか。
原則は要ります。
ただし消防法施行規則第26条第6項の条件がそろえば設置しないことができると定められています。
条件というのは福祉施設の広さのことですか。
それとも建物ぜんたいの話なのでしょうか。
両方です。
建物が小規模特定用途複合防火対象物であることが入口で階の側にも三つの条件があります。
- 避難器具を設ける階は消防法施行令第25条第1項が用途と階と収容人員で決めている
- 消防法施行規則第26条第6項は小規模特定用途複合防火対象物の階に限って避難器具を設置しないことができると定めている
- 使えるのは令第25条第1項第一号及び第二号に当たる階だけで劇場や物品販売店舗の階には効かない
- 条件は下階の用途と避難階又は地上に直通する階段が二以上あることと収容人員の三つ
- その階が二階で二階に(二)項と(三)項の用途がなければ階段の条件だけが外れる
▼

目次
避難器具を置かなくてよくなる規定はどこにあるのか

令が総務省令へ投げているのでたどり先は規則になります。
このただし書を受けた総務省令が消防法施行規則第26条で見出しは避難器具の設置個数の減免です。
第26条は第1項から第4項までが個数を減らす規定で第5項から第7項までが設置しないことができる規定に分かれています。
そのうち第6項だけが建物の種類そのものを入口にしていて小規模特定用途複合防火対象物の階だけに働きます。
まずは自分のビルがその建物に当たるかどうかを用途と床面積で確かめるところから始めます
令のただし書から規則へ飛ぶ形になっているのですね。
令だけを見ていたので免除の規定に気づきませんでした。
よくある見落としです。
減免の話が出たらまず規則第26条を開く癖を付けてください。
どんな建物のどの階が対象になるのか

その定義は避難器具の条ではなく規則第13条にあります。
床面積の合計が延べ面積の十分の一以下であることと300平方メートル未満であることの両方を満たす必要があります。
そのうえで第6項が対象にしているのは令第25条第1項第一号及び第二号に掲げる階だけです。
第一号は令別表第一(六)項の二階以上の階又は地階で第二号は(五)項の二階以上の階又は地階なので福祉施設や病院と旅館や共同住宅の階に限られます。
劇場や物品販売店舗の階を対象にした第三号や第四号は第6項の入口に入っていないので同じビルの中でも階によって使えたり使えなかったりします
建物ぜんたいが小さいという話ではないのですね。
特定の用途の部分が小さいかどうかを見るのですか。
そのとおりです。
延べ面積と用途ごとの床面積を面積表から拾い出しておいてください。
免除に必要な三つの条件はなにか

下の階と階段と人数という順に並んでいます。
第一号は自分の階ではなく下の階を見る条件で劇場や飲食店や物品販売店舗などが並んでいます。
第二号は避難階又は地上へ直通する階段が二以上あることを求めていて一本しかない階では使えません。
第三号の人数は令第25条第1項第一号の階なら20人未満で第二号の階なら30人未満です。
自分の階の収容人員を先に出しておくと三つのうちどれで落ちるのかがはっきりします
つまり下の階に飲食店が入っているだけで駄目になるということですね。
自分の階だけを見ていては足りないわけですか。
そこが第一号の要点です。
テナントが入れ替わったときは下の階の用途も見直してください。
二階だけに効く特例と落とし穴はどこか

そこだけ条件が三つではなく二つになります。
括弧書きが挙げているのは第一号と第三号だけなので第二号の階段が二以上という条件を満たさなくても免除に乗れます。
ただし二階に令別表第一(二)項や(三)項の用途つまり遊技場やダンスホールや飲食店の部分があるとこの括弧書きは働きません。
第二号にも見落としやすい括弧書きがあり避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分があるときは階ぜんたいではなくその区画された部分から二以上の階段が必要になります。
階段は二本あるのに一方の区画からは一本しか行けないという建物はここで落ちるので平面図で区画と階段の位置を重ねて確かめます
階段が二本あると数えていましたが区画ごとに数えるのですか。
これは図面を見ないと分かりませんね。
そこは実測が要ります。
区画の壁に開口部があるかどうかを先に確かめてください。
明日からなにを確かめればよいのか

最初に見るのは階の用途と収容人員です。
令第25条第1項は下階に劇場や飲食店などがあるときに設置の基準を10人へ引き下げています。
規則第26条第6項第一号はほぼ同じ用途の並びを挙げて免除の入口をふさいでいるので下の階の確認は二度手間になりません。
確かめる順番は建物の用途と面積つぎに階と収容人員そして下の階の用途と階段の数です。
どれか一つでも外れたら避難器具が要る階なので適応する器具を令第25条第2項第一号の表で選びます
面積と人数と用途を順に押さえればよいのですね。
まずは収容人員の算定表を作り直します。
その順番が確実です。
算定の根拠を書いた紙を図面と一緒に残しておいてください。
よくある質問
まとめ
下の階の用途まで見るという発想がありませんでした。
面積表と平面図を出して二階から確かめます。
用途の判定や区画の読み方で迷ったら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第9条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第25条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第13条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第26条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





