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スプリンクラー設備はなにをきっかけに水を出すのか|自動式と手動式の起動装置の基準を解説

スプリンクラー設備はなにをきっかけに水を出すのか|自動式と手動式の起動装置の基準を解説

天井のスプリンクラーヘッドは火災を感じたら勝手に水が出るもの
そう思われている方は少なくありません
ところが水を押し出す加圧送水装置は、ヘッドが開いただけでは回らない仕組みになっています
消防法施行規則は、ポンプと弁を動かす引き金として起動装置の基準を別に定めており、自動式と手動式の両方をそろえるのが原則です

ヘッドが開いたら、あとは勝手にポンプが回ると思っていました。

ヘッドが開くことは引き金の一つですが、それだけではありません。
規則は自動式手動式の二つの起動装置を求めています。

人が手で起動させる場面なんてあるんでしょうか。

舞台の開放型は人が弁を開けて放水させる前提の設備です。
手動式の起動装置はその操作を受け持ちます。

この記事の結論
  • 起動装置には自動式と手動式があり、どちらの基準も消防法施行規則第14条第1項第八号が定めています
  • 自動式が連動する相手は、開放型閉鎖型で条文上はっきり書き分けられています。
  • 手動式は直接操作でも遠隔操作でもよく、二以上の放水区域があるものは区域を選べる構造にします。
  • 防災センター等に受信機か表示装置があり直ちに手動で起動できるなら、開放型の自動式は求められません
  • 乾式と予作動式は、ヘッドが開いてから一分以内に放水できることまで求められます。

スプリンクラー設備の起動装置は自動式と手動式の二つが求められることを示した図解

スプリンクラー設備はなにをきっかけに水を出すのか

ポンプ室の加圧送水装置から配管が立ち上がり天井のスプリンクラーヘッドまでつながっている図
スプリンクラー設備は、ヘッド・配管・加圧送水装置がひとつながりになった設備です。
その全体を動かしはじめる部分を、規則は起動装置と呼んで独立した号を立てています。
消防法施行規則第十四条第一項第八号 起動装置は、次に定めるところによること。 イ 自動式の起動装置は、次の(イ)又は(ロ)に定めるところによること。(略) ロ 手動式の起動装置は、次に定めるところによること。(略)
引き金は二系統に分けて定められています
号の下がイとロに割れており、イが自動式、ロが手動式です。
どちらか片方を選ぶ書き方にはなっておらず、両方が並んで求められているのが条文の姿です。
つまり、感知して自動で起動する経路と、人が操作して起動する経路の二つを持つのが原則になります。
ご自身の建物の設備が、この二つの経路をどちらも備えているかを図面で確かめるところから始めてください。

ヘッドと配管ばかり見ていて、起動の部分は意識していませんでした。

号がイとロに割れていること自体が、二系統を求めているという意味です。
まずは設備図の起動の欄をご覧ください。

自動式の起動装置は開放型と閉鎖型でどう違うのか

栓のある閉鎖型ヘッドと流水検知装置および栓のない開放型ヘッドと感知器を並べた図
自動式の起動装置は、ヘッドの種別によって連動させる相手が変わります。
条文は開放型を(イ)に、閉鎖型を(ロ)に分けて書いています。
消防法施行規則第十四条第一項第八号イ (イ)開放型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備にあつては、自動火災報知設備の感知器の作動又は火災感知用ヘッドの作動若しくは開放による圧力検知装置の作動と連動して加圧送水装置及び一斉開放弁(略)を起動することができるものとすること。(略)(ロ)閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備にあつては、自動火災報知設備の感知器の作動又は流水検知装置若しくは起動用水圧開閉装置の作動と連動して加圧送水装置を起動することができるものとすること。
起動させる対象の数が違います
開放型はヘッドに栓が無いため、加圧送水装置一斉開放弁の二つを起動させる書き方になっています。
これに対して閉鎖型で起動させるのは加圧送水装置だけで、弁は条文に出てきません。
連動の相手も、開放型は自動火災報知設備の感知器か火災感知用ヘッドですが、閉鎖型は感知器のほかに流水検知装置と起動用水圧開閉装置が並んでいます。
点検の記録を見るときは、ご自身の建物がどちらの型かをまず確かめ、条文が求めている相手と実際の結線が合っているかを業者に確認してください。

うちの事務所は普通の天井のヘッドなので、閉鎖型のほうですね。

その場合は水が流れたことをつかむ流水検知装置が引き金になります。
弁を開ける操作は条文に出てきません。

手動式の起動装置にはなにが求められるのか

壁の押しボタン箱と離れた操作卓および放水区域を選ぶつまみの並んだ盤を示した図
手動式は、人が操作して加圧送水装置と弁を起動させる経路です。
規則は操作の場所と、区域の選び方の二点を求めています。
消防法施行規則第十四条第一項第八号ロ (イ)直接操作又は遠隔操作により、それぞれ加圧送水装置及び手動式開放弁又は加圧送水装置及び一斉開放弁(略)を起動することができるものとすること。(略)(ロ)二以上の放水区域を有するスプリンクラー設備にあつては、放水区域を選択することができる構造とすること。
操作の場所は条文で縛られていません
弁のところまで行って操作する直接操作でも、離れた場所から動かす遠隔操作でも、どちらでもよいと書かれています。
一方で(ロ)は構造の話で、放水区域が二以上ある設備には区域を選べる仕組みを求めています。
建物全体に一度に放水するのではなく、火災が起きた区域だけを選んで水を出すためです。
盤に区域名の表示が残っているか、そしてその表示が現在の間仕切りと合っているかを、次の点検のときに一緒に見てもらってください。

つまり、選ぶ操作まで含めて手動式の要件なんですね。

そのとおりで、区域が二以上あるかどうかで求められる構造が変わります。
盤の区域表示が古いままになっていないかをご確認ください。

自動式の起動装置を設けなくてよいのはどんなときか

監視卓に人がいる部屋と誰もいない部屋を並べて可否を示した図
開放型については、自動式を求めない場合がただし書に置かれています。
ここが実務でいちばん誤解されやすい部分です。
消防法施行規則第十四条第一項第八号イ(イ)ただし書 ただし、自動火災報知設備の受信機若しくはスプリンクラー設備の表示装置が防災センター等に設けられ、又は(略)総合操作盤が設けられており、かつ、火災時に直ちに手動式の起動装置により加圧送水装置及び一斉開放弁を起動させることができる場合にあつては、この限りでない。
消防法施行規則第十二条第一項第八号 (略)防災センター(略)、中央管理室(略)、守衛室その他これらに類する場所(常時人がいる場所に限る。以下「防災センター等」という。)に設けること。
二つの条件が同時にそろって初めて外れます
一つ目は受信機か表示装置が防災センター等にあること、二つ目は火災のときに直ちに手動で起動させられることです。
ここでいう防災センター等は規則第12条第1項第八号で定義されており、常時人がいる場所に限られています。
盤が置いてある部屋というだけでは足りず、人がいなくなる時間帯がある部屋はこの定義から外れます。
夜間や休日に無人になる運用へ変えたときは、このただし書の前提が崩れていないかを所轄消防署に確認してください。

人員を減らした結果、条文の前提が変わることもあるんですね。

設備は変えていなくても、運用が変われば前提は動きます。
当直の体制を見直したときはご相談ください。

明日からなにを確かめればよいのか

点検表を持つ人と操作盤および加圧送水装置のポンプを並べた図
起動装置は、点検のときに動かして確かめる部分です。
乾式と予作動式には、時間そのものを定めた号が別に置かれています。
消防法施行規則第十四条第一項第八号の二 乾式又は予作動式の流水検知装置が設けられているスプリンクラー設備にあつては、スプリンクラーヘッドが開放した場合に一分以内に当該スプリンクラーヘッドから放水できるものとすること。
確かめるのは結線ではなく結果です
乾式と予作動式は配管に水が入っていないため、ヘッドが開いてから水が届くまでに時間がかかります。
そこで規則は一分以内という時間を示し、放水までを一続きの性能として求めています。
一方の湿式にはこの号の適用がないので、同じ表を使い回して判定しないよう注意してください。
まずは直近の点検結果報告書を開き、起動装置の欄と放水までの時間の記載を、ご自身の設備の型と突き合わせるところから始めましょう。

点検表の起動装置の欄を、今度はきちんと読んでみます。

設備の型が分かれば、どの号が効いているかまで絞り込めます。
報告書を手元に置いてご確認ください。

よくある質問

Q閉鎖型のスプリンクラー設備にも手動式の起動装置は要りますか?
A規則第14条第1項第八号は、イの自動式とロの手動式を並べて定めています。ロは開放型に限る書き方をしていませんので、閉鎖型を除外する規定は条文上見当たりません。個別の設備でどこまで求められるかは所轄消防署にご確認ください。
Q遠隔操作にすれば弁のところへ行かなくてよいのですか?
A条文は直接操作又は遠隔操作と書いており、どちらの方式でもよいことになっています。ただし遠隔操作の盤から加圧送水装置と弁の両方が起動できることが前提です。片方しか動かない状態は要件を満たしません。
Q防災センターに常に人がいなくても防災センター等になりますか?
A規則第12条第1項第八号の定義は常時人がいる場所に限ると書かれています。名称が防災センターであっても、人がいない時間帯がある部屋はこの定義に当たりません。当直の体制を変えたときは影響を確かめてください。
Q湿式の設備にも一分以内という基準は当てはまりますか?
Aこの基準を定めた第八号の二は、乾式又は予作動式の流水検知装置が設けられている設備を対象としています。湿式は条文の対象として書かれていません。ご自身の設備がどの方式かは点検結果報告書で確かめられます。

まとめ

起動装置の基準は消防法施行規則第14条第1項第八号にあり、イが自動式・ロが手動式です
開放型の自動式は加圧送水装置一斉開放弁の二つを起動させます。
閉鎖型の自動式で起動させるのは加圧送水装置だけで、連動の相手に流水検知装置と起動用水圧開閉装置が並びます。
手動式は直接操作でも遠隔操作でもよく、場所そのものは条文で縛られていません。
放水区域が二以上ある設備は区域を選択できる構造にしなければなりません
ただし書が効くのは、受信機か表示装置が防災センター等にあり、かつ直ちに手動で起動できる場合だけです。
乾式と予作動式はヘッドが開いてから一分以内に放水できることまで求められます

自動と手動の二系統という見方で、設備図を読み直してみます。

その視点があれば点検結果報告書の読み方も変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第14条第1項第八号・第八号の二
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第八号
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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