防火管理者を選任していると、日々の消防計画や訓練の対応に追われて、そもそもこの資格がいつどうやってできたのかを考える機会は少ないかもしれません。
実は防火管理者制度は、ある一件の劇場火災をきっかけに、消防法の改正で新しく設けられた仕組みです。
制度ができた経緯を知ると、消防計画の作成や訓練の実施がなぜ法律で義務付けられているのかが見えてきます。
この記事では東京宝塚劇場火災を出発点に、防火管理者制度が生まれた経緯と今も変わらない骨格を解説します。
うちの防火管理者って資格、そもそも何のためにあるんでしょうか。
正直、選任されてから深く考えたことがなくて。
実は昭和35年の消防法改正で新しくできた制度なんです。
きっかけになった火災があります。
火災がきっかけで法律ができたんですか。
知らなかったです。
はい。
順番に見ていきましょう。
- 防火管理者制度は昭和35年の消防法改正で新しく設けられました。
- きっかけは昭和33年に発生した東京宝塚劇場火災です。
- 制度の創設と同時に消防用設備等の技術基準も整備されました。
- その後の火災を教訓に共同防火管理制度などが段階的に加わりました。
- 消防計画の作成や訓練の実施という骨格は、今の消防法第8条にもそのまま引き継がれています。
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目次
防火管理者という制度はいつどうやってできたのか

この火災をきっかけに消防法が改正され、防火管理者制度が生まれました。
きっかけは昭和33年2月に東京都千代田区で起きた東京宝塚劇場火災です。
総務省消防庁が公表している火災予防行政の歩みでも、この火災は防火管理者制度と消防用設備等の技術基準を同時に生んだ契機として位置づけられています。
それ以前の消防法にも建物の管理者が防火の責任を持つという考え方はありましたが、資格や業務内容を法律で明確にし、命令の仕組みまで備えた制度として整えたのがこの改正でした。
つまり防火管理者という肩書きは、火災の教訓から生まれた法律上の役割だということです。
制度自体が火災から生まれたものだったんですね。
選任されている意味が少し分かった気がします。
はい。
次は改正で具体的に何が義務付けられたのかを見ていきましょう。
昭和35年の消防法改正は防火管理者に何を義務付けたのか

この条文が防火管理者に求める骨格は、当時から一貫して変わっていません。
条文は防火管理者を定めたうえで、消防計画の作成や訓練の実施など具体的な業務まで行わせることを管理権原者に求めています。
さらに防火管理者が定められていない場合には、消防長や消防署長が選任を命じることができるという規定も、同じ改正で一緒に作られました。
昭和35年の改正では、この選任・業務・届出・命令という骨格が一つの条文としてまとめて整えられたことになります。
届出をしないまま防火管理者を交代させている建物が今も見つかるのは、この第2項の存在があまり知られていないためかもしれません。
そういえば、担当が変わったとき届出をきちんと出したか記憶が曖昧です。
解任のときも選任と同じく届出が必要です。
台帳を確認しておきましょう。
防火管理者制度はそのあとどう強化されていったのか

その後も大きな火災のたびに、制度は少しずつ形を変えてきました。
一つの建物に複数のテナントや事業所が入っている場合、それぞれが別々に防火管理者を置くだけでは、建物全体としての対応がばらばらになってしまうという反省からです。
その後も昭和47年の千日デパートビル火災や昭和48年の大洋デパート火災を経て、防火管理者の選任基準や消防用設備等の基準が繰り返し見直されました。
共同防火管理の仕組みは平成24年の改正で統括防火管理者制度として整理し直され、今の消防法第8条の2に引き継がれています。
今の防火管理の仕組みは、一つの火災ではなく複数の火災の教訓が積み重なってできあがったものです。
うちのビルも複数の会社が入っているので、統括防火管理者を置いています。
まさにその仕組みが、共同防火管理から発展したものです。
実務で見落としやすいのはどこか

条文には、業務が行われていない場合の命令まで規定されています。
第4項は、消防計画に基づく訓練や点検が実際に行われていない場合に、消防長や消防署長が改善を命じられると定めています。
昭和35年に作られた枠組みは、名前だけの防火管理者では機能しないという前提で設計されていたことになります。
消防計画を作成した年のまま内容を見直していない建物や、訓練の実施記録が残っていない建物は、この第4項の対象になり得ます。
制度ができた経緯を知ると、書類をそろえることより運用を続けることの方が重視されているのがわかります。
消防計画、作った年のまま何年も見直していないかもしれません。
まずは訓練の実施記録から確認してみましょう。
明日からなにをすればよいのか

今日からできる3つの確認を紹介します。
一つ目は防火管理者の選任届と解任届が、実際の担当者と一致しているか消防署への届出記録を確認することです。
二つ目は消防計画に書かれた訓練の回数や内容が、直近1年の実施記録と合っているか照らし合わせることです。
三つ目は消防計画そのものが、今の建物の用途や人数と合っているか、古いままになっていないか見直すことです。
防火管理者制度は昭和35年に生まれてから、今も同じ骨格で運用されています。
届出・消防計画・訓練という三つの柱のどれか一つが欠けても、条文が求める防火管理上必要な業務を果たしたことにはなりません。
まずは自分の建物の消防計画と実施記録を突き合わせるところから始めてみましょう。
制度の成り立ちを知っていれば、消防署から確認を求められたときにも落ち着いて説明できます。
まずは消防計画と訓練記録を並べて見比べてみます。
それだけでも、防火管理の実効性はぐっと上がります。
よくある質問
まとめ
制度の成り立ちが分かって、これからは消防計画の見直しにも力を入れていきます!
防火管理のことでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第8条・第8条の2
- 総務省消防庁「社会情勢の変化等に対応した消防用設備や防火管理のあり方」(平成30年7月23日 消防庁予防課資料)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





