平成30年4月、介護保険法の改正で「介護医療院」という新しい施設が生まれました。
既存のどの用途にも当てはまらない施設だったため、消防法令上の扱いが宙に浮いていました。
消防庁が示した結論は、福祉施設ではなく病院や診療所と同じ扱いという厳しいものでした。
この記事では、介護医療院の消防法上の用途区分と、そこから生じる設備義務を解説します。
来月、介護医療院を開設する予定なのですが、消防法上はどんな施設として扱われるのか分かりません。
介護施設だから防火の基準もゆるいですよね。
実はそうとも言い切れません。
介護医療院は病院や診療所と同じ用途区分として扱われます。
特別養護老人ホームのような福祉施設とは違う扱いということですか。
そうです。
通知の内容を順番に確認していきましょう。
- 平成30年の介護保険法改正で介護医療院制度が創設され、消防庁が消防法令上の取扱いを通知しました
- 介護医療院は消防法施行令別表第一(6)項イに規定する病院又は診療所として取り扱われます
- 入所者が20人以上なら病院、19人以下なら診療所として区分されます
- 介護医療院は自力避難が困難な患者を入院させる病院に該当するものとして扱われ、面積を問わずスプリンクラー設備の設置義務が生じます
- 明日からは入所定員と療養床の区分、特定診療科名の有無を確認し、早めに消防機関へ相談します
▼

目次
介護医療院はなぜ病院と同じ扱いを受けることになったのか

既存の用途に当てはまらない施設だったため、消防庁が扱いを整理する通知を出しています。
介護療養病床の転換先として新たに設けられた施設で、既存の老人福祉施設とも病院とも完全には一致しません。
用途区分があいまいなままでは、消防計画や設備の要否を現場で判断できません。
そこで消防庁は制度の施行と同じ平成30年4月1日にあわせて、扱いを定める通知を発出しました。
まずはこの通知が、施設の開設ラッシュに先回りして出されたものだと押さえておきます。
特別養護老人ホームのときと同じような通知が出たということですか。
似ていますが今回は逆です。
福祉施設ではなく病院・診療所側に寄せた扱いになりました。
介護医療院とはどんな施設を指すのか

福祉と医療、両方の性格をあわせ持っている点が特徴です。
特別養護老人ホームのような生活支援中心の施設と違い、医学的管理を前提にしている点が異なります。
一方で病院のような急性期治療ではなく、長期にわたる療養を想定している点も特徴です。
この「病院に近いが福祉の性格も持つ」という位置づけが、あとで見る用途区分の判断に直結します。
自施設が想定する入所者像を、まずこの定義と照らして確認してください。
特養と病院の中間のような施設なんですね。
イメージとしてはそのとおりです。
その位置づけが消防法上の区分にもそのまま反映されます。
消防法令上どの用途区分に入るのか

結論から確認します。
消防法施行令別表第一(6)項ロには特別養護老人ホームなどの老人福祉施設が並んでいますが、介護医療院はそちらではありません。
職員配置や夜間の勤務実態が病院に近いという理由で、同表(6)項イに区分されます。
そのうえで、入所者数が20人以上か19人以下かで病院か診療所かがさらに分かれます。
自施設の入所定員が何人になるかを、まず数えておいてください。
老人福祉施設の並びじゃなくて、病院や診療所の並びに入るんですね。
はい、そこが今回の通知の一番のポイントです。
職員体制の実態が判断の理由になっています。
見落としやすい自力避難困難者の扱いとは

通知はさらに踏み込んだ扱いを示しています。
別表第一(6)項イ(1)(2)に該当する病院・診療所は、消防法施行令第12条により延べ面積の基準なしにスプリンクラー設備の設置が義務になります。
一般の飲食店や物品販売店舗のような「延べ面積〇〇平方メートル以上なら」という猶予がありません。
「福祉施設だから小規模なら緩やかだろう」という思い込みは介護医療院には通用しません。
開設規模にかかわらず、まずスプリンクラー設備の設置を前提に計画してください。
うちは入所者が10人ほどの小規模な施設です。
面積が小さくても対象になるんですか。
はい、対象になります。
面積によらず設置義務がかかる点が介護医療院の特徴です。
開設前に何を確認すればよいのか

早い段階で押さえておくほど、あとの計画が楽になります。
まず入所定員が20人以上か19人以下かを確認し、病院区分か診療所区分かを見極めます。
次に療養床の区分と特定診療科名の有無を確認し、別表第一(6)項イのどの号に当たるかを詰めます。
そのうえで自力避難が困難な入所者を主として入所させるかを確認し、スプリンクラー設備の要否を早期に固めます。
図面段階で管轄の消防署に相談しておけば、着工後の設計変更を避けられます。
入所定員と療養床の区分、それに自力避難の可否ですね。
着工前に消防署へ相談してみます。
その順番であれば大丈夫です。
設計の早い段階での相談が一番の近道になります。
よくある質問
まとめ
介護医療院が病院と同じ扱いになる理由がよく分かりました。
設計の前に定員と療養床を確認します。
はい。
入所定員・療養床の区分・自力避難の可否の3点を早めに固めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 介護医療院に係る消防法令上の取扱いについて(平成30年3月22日 消防予第89号 消防庁予防課長)
- 介護保険法第8条第29項・第107条第1項
- 消防法施行令別表第一(6)項イ
- 消防法施行令第12条第1項第1号イ
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





