病院やクリニックの防火管理を担当していると、同じ「病院」なのに設備の基準が施設によって違うと感じることがあります。
それは消防法施行令別表第一(6)項イが、病院・診療所・助産所をさらに4段階に分けているためです。
分かれ目は病床の種類と診療科名、そして夜間を含む職員の配置数にあります。
条文をたどるとスプリンクラーや自動火災報知設備の設置範囲まで、この区分に連動して変わることが見えてきます。
うちの病院、去年増床したら急に防火管理の話が変わったと言われました。
どうして病床数だけでそんなに変わるんでしょうか。
それは病床の種類と診療科名の組み合わせで区分そのものが変わるからです。
まずは条文の分け方から見ていきましょう。
診療所とクリニックは同じ扱いだと思っていました。
そこが誤解されやすい点です。
入院施設の有無と診療科名で、実は4つに分かれます。
順番に確認していきましょう。
- 病院・診療所・助産所は消防法施行令別表第一(6)項イの中でさらに(1)から(4)まで分かれます
- (1)は特定診療科名と療養病床・一般病床を持つ病院で、消火活動体制の基準を満たさないものに限られます
- (2)は特定診療科名を持ち4床以上の入院施設を持つ診療所です
- 区分が(1)や(2)になると、スプリンクラーと自動火災報知設備が面積を問わず設置対象になります
- 無床の診療所・助産所である(4)は延べ面積300平方メートル以上で初めて自動火災報知設備の対象になります
▼

目次
病院や診療所は(6)項イの中でどう分かれるのか

ところが条文をよく読むと、この中に(1)から(4)までの4段階がさらに置かれています。
(1) 次のいずれにも該当する病院(火災発生時の延焼を抑制するための消火活動を適切に実施することができる体制を有するものとして総務省令で定めるものを除く。)
(i) 診療科名中に特定診療科名を有すること。
(ii) 医療法第7条第2項第4号に規定する療養病床又は同項第5号に規定する一般病床を有すること。
(2) 次のいずれにも該当する診療所
(i) 診療科名中に特定診療科名を有すること。
(ii) 4人以上の患者を入院させるための施設を有すること。
(3) 病院((1)に掲げるものを除く。)、患者を入院させるための施設を有する診療所((2)に掲げるものを除く。)又は入所施設を有する助産所
(4) 患者を入院させるための施設を有しない診療所又は入所施設を有しない助産所
分け方の軸は2つです。ひとつは特定診療科名を持つかどうか、もうひとつは療養病床・一般病床や入院施設の有無です。
両方を満たす病院が(1)、診療所側で同じ条件に4床以上の入院施設が加わると(2)になります。
入院施設はあるが条件に届かない病院・診療所・助産所は(3)、入院施設が無ければ(4)に落ちます。
自分の施設がどこに当たるかは、まず診療科名の一覧と病床の種類を確認するところから始まります。
病院なら全部同じ基準だと思っていました。
うちは(1)から(4)のどれに当たるんでしょうか。
まずは診療科名の一覧を見てください。
特定診療科名を持っているかどうかが最初の分かれ目です。
どの診療科名と病床数だと(1)や(2)になるのか

除外方式で決まっているため、まず外れる科目を確認するのが早道です。
一 肛門外科、乳腺外科、形成外科、美容外科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、産科、婦人科
(二 略)
三 歯科
(四 略)
内科、外科、整形外科、リハビリテーション科、精神科などは除外リストに入っていないため、いずれも特定診療科名に当たります。
除外されているのは、比較的入院患者の自力避難が容易とされる肛門外科・皮膚科・眼科・小児科などです。
診療所の場合はこれに加えて4床以上の入院施設があるかどうかが問われ、両方揃えば(2)になります。
診療科名を一つ増やすだけで区分が動くことがあるので、標榜科目を変更するときは一度確認しておくと安全です。
内科やリハビリテーション科は特定診療科名に入るんですね。
除外リストにある科だけ特別だと思っていました。
そのとおりです。
除外リストに載っていない科目はすべて特定診療科名になります。
消火活動体制を満たすと(1)から外れる仕組みとは

つまり職員の配置が十分なら、そもそも(1)には入りません。
一 勤務させる医師、看護師、事務職員その他の職員の数が、病床数が26床以下のときは2、26床を超えるときは2に13床までを増すごとに1を加えた数を常時下回らない体制
二 勤務させる医師、看護師、事務職員その他の職員(宿直勤務を行わせる者を除く。)の数が、病床数が60床以下のときは2、60床を超えるときは2に60床までを増すごとに2を加えた数を常時下回らない体制
一号は当直も含めた常時の配置人数、二号は宿直の担当者を除いた人数で、どちらも常時下回らないことが必要です。
病床数が増えるほど必要人数も段階的に増える仕組みになっており、13床や60床が増員の節目です。
両方の基準を満たす体制があれば、火災発生時の初期対応力があるとみなされ(1)の対象から外れます。
満たせなければ(1)に該当し、そのぶん設備側の基準が重くなります。
職員の数まで消防法令で決まっているとは知りませんでした。
病床数に応じて段階的に必要人数が増える仕組みです。
夜間の当直体制も含めて一度数えてみてください。
区分によって見落としやすいのはどこか

特に(4)だけ基準の立て方が違う点が見落としやすいところです。
消防法施行令第21条第1項第1号イ 別表第一(6)項イ(1)から(3)まで(略)に掲げる防火対象物に自動火災報知設備を設置する。
消防法施行令第21条第1項第3号イ 別表第一(6)項イ(4)(略)に掲げる防火対象物で、延べ面積が300平方メートル以上のものに自動火災報知設備を設置する。
自動火災報知設備は(1)(2)(3)のいずれも延べ面積に関係なく全部設置が必要で、スプリンクラーも(1)(2)は同様に面積を問いません。
一方(4)(無床の診療所・助産所)だけ、自動火災報知設備は延べ面積300平方メートル以上という基準に変わります。
入院施設を廃止して(1)や(2)から(4)へ移っても、増床や診療科の追加で再び(1)(2)側に戻れば、それまで不要だった設備が一気に必要になります。
病床や診療科名を変更する予定があるときは、変更前に区分がどう動くかを確認しておく必要があります。
病床を減らして無床にしたら設備は減らせますか。
面積によりますが、減らせる場合もあります。
変更前に所轄消防署へ確認しておくと安全です。
明日からなにを確認すればよいのか

順番に見ていけば自分の施設がどこに当たるか分かります。
一 医師、歯科医師、助産師、薬剤師、看護師その他の従業者の数
二 病室内にある病床の数
三 待合室の床面積の合計を3平方メートルで除して得た数
まず標榜している診療科名の一覧から特定診療科名の有無を洗い出し、次に療養病床・一般病床や入院施設の数を確認します。
病院で(1)に当たりそうな場合は、夜間を含めた職員の配置数が規則第5条第3項の基準を満たすかどうかも数えます。
ここまでで(1)から(4)のどこに当たるかが決まり、そのうえで収容人員を算定すれば防火管理者の要否も見えてきます。
区分の判断に迷う点が残ったら、資料をそろえたうえで所轄消防署に相談するのが確実です。
うちの施設がどこに当たるか、一度整理してみます。
診療科名・病床・職員数の3点を確認すれば区分が見えてきます。
分からない点は早めに確認しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
病院と診療所の中がさらに4つに分かれる仕組みが分かりました。
まず診療科名の一覧を確認してみます。
診療科名・病床・職員数の3点を押さえれば、区分と必要な設備の見通しが立ちます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法施行令別表第一(6)項イ
- 消防法施行令第12条
- 消防法施行令第21条
- 消防法施行規則第1条の3
- 消防法施行規則第5条
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





