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飲食店の消火器具はなぜ面積を問わず必要になったのか|糸魚川市大規模火災を契機にした消防法施行令改正を解説

飲食店の消火器具はなぜ面積を問わないのかを解説する記事のアイキャッチ画像

延べ面積が小さい飲食店だから消火器は要らない、と思い込んでいる店舗が今も見つかります。
実はこの考え方は、ある市街地火災をきっかけに通用しなくなりました。
火を使う設備がある飲食店には、面積の要件がまるごと撤廃されたからです。
この記事では糸魚川市の大規模火災を出発点に、消火器具の設置基準がどう変わり、なにが今も義務なのかを解説します。

うちは小さな食堂だから、消火器までは関係ないと思っていました。

実は令和元年の改正で、面積を問わず設置が必要になった飲食店があるんです。
きっかけになった火災があります。

うちの厨房でも対象になるんでしょうか。
正直、確認したことがなくて。

はい。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成28年の糸魚川市大規模火災(焼損147棟)を契機に、消防法施行令の消火器具の設置基準が見直されました。
  • 飲食店等((三)項)で火を使用する設備・器具を設けたものは、延べ面積を問わず消火器具の設置が義務になりました。
  • 改正は令和元年10月1日に施行されました。
  • 熱源が電気のみの調理機器(IHクッキングヒーター等)は、火を使用する設備には当たりません
  • 調理油過熱防止装置や自動消火装置を設ければ、設置義務が免除される場合があります。

平成28年の糸魚川市大規模火災を契機に消防法施行令が改正され飲食店の消火器具が面積を問わず必要になった経緯を示す図解

消火器具の設置基準はなぜ見直されたのか

商店街の一角にある飲食店の看板と隣接する木造家屋が並ぶ古い町並みのイメージ
平成28年12月、新潟県糸魚川市の飲食店で発生した火災がこの改正の出発点です。
木造家屋が密集する地域だったことが、被害を大きく広げました。
消防法施行令第十条第一項 消火器又は簡易消火用具(以下「消火器具」という。)は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。 一 次に掲げる防火対象物 ロ 別表第一(三)項に掲げる防火対象物で、火を使用する設備又は器具(防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたものを除く。)を設けたもの
糸魚川市の火災は、ラーメン店の大型こんろの消し忘れが出火原因でした。
総務省消防庁の公表資料によると、店主が火を付けたまま店を離れ、約40分後に戻ったときには既に炎が壁に達しており、その後の強風で延焼が拡大し、焼損147棟という平成以降でも例のない被害になったとされています。
この火災を受けて消防庁が検討会を設け、消火器具の設置基準の見直しにつながりました。
つまり条文の第十条第一項第一号ロが新設された背景には、この火災があるということです。

こんろの消し忘れだけで、あそこまで燃え広がるものなんですね。

次は、具体的にどんな飲食店が対象になったのかを見ていきましょう。

どんな飲食店が対象になるのか

ガスこんろのある厨房とIHクッキングヒーターのある厨房を並べたイメージ
対象になるかどうかの分かれ目は、火を使う設備があるかどうかです。
用途区分とあわせて確認していきます。
消防法施行令第十条第一項第一号ロ 別表第一(三)項に掲げる防火対象物で、火を使用する設備又は器具(防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたものを除く。)を設けたもの
対象は令別表第一(三)項の飲食店等で、ガスこんろなど火を使用する設備・器具を設けたものです。
待合・料理店・飲食店が(三)項にあたり、テナントとして入る小さな居酒屋やそば屋、喫茶店なども含まれます。
一方、熱源が電気のみのIHクッキングヒーターや電子レンジ、電気コンロだけを使う店舗は、火を使用する設備・器具にはあたりません。
つまりガスこんろを1台でも使っていれば、規模に関わらずこの号の対象になるということです。

うちは10坪程度の小さな店ですが、ガスこんろを使っていれば対象になるんですか。

はい、規模に関わらず対象です。
次は基準がどう変わったかを見てみましょう。

設置基準はどう変わったのか

小さな店舗と大きな店舗にそれぞれ同じ大きさの消火器が付いているイメージ
改正の前後で変わったのは、面積要件そのものの有無です。
条文の号が分かれていることに注目してください。
消防法施行令第十条第一項 消火器又は簡易消火用具(以下「消火器具」という。)は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。 二 次に掲げる防火対象物で、延べ面積が百五十平方メートル以上のもの ロ 別表第一(三)項に掲げる防火対象物(前号ロに掲げるものを除く。)
改正前は(三)項の飲食店すべてが延べ面積150平方メートル以上という条件で扱われていましたが、改正後は火を使用する設備がある店舗だけ面積要件のない第一号に切り出されました。
火を使用する設備が無い(三)項の店舗は、引き続き第二号の150平方メートル以上という基準のままです。
つまり条文が第一号と第二号に分かれたことこそが、この改正の核心です。
施行は令和元年10月1日で、対象になる既存の飲食店も同じ基準が適用されます。

うちの店、正直まだ消火器を置いていないかもしれません。

施行から時間が経っていますので、早めの確認をおすすめします。

免除されるのはどんな場合か

安全装置付きのガスこんろと消火器を並べたイメージ
すべてのガスこんろが無条件で対象になるわけではありません。
条文にある「防火上有効な措置」の中身を確認します。
消防法施行規則第五条の四 令第十条第一項第一号ロの防火上有効な措置として総務省令で定める措置は、調理油過熱防止装置、自動消火装置又はその他の危険な状態の発生を防止するとともに、発生時における被害を軽減する安全機能を有する装置を設けることをいうものとする。
調理油過熱防止装置や自動消火装置などの安全機能があれば、この号の対象から除かれます。
総務省消防庁の資料によれば、グリルの消し忘れを感知して自動でガスを止める機能や、鍋の空焚きを検知する機能などが該当するとされています。
ただし免除されるのはこの号(第一号ロ)の対象からだけであり、延べ面積150平方メートル以上の店舗であれば第二号で改めて設置義務が生じます。
自分のこんろに安全装置が付いているかどうかは、取扱説明書や機種の型番で確認できます。

安全装置さえ付いていれば、消火器はもう要らないということですか。

面積によっては別の号で必要になりますので、あわせて確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持つ人物と壁の消火器を確認する人物を並べたイメージ
制度の経緯が分かったところで、次は自分の店舗の状況を確認する番です。
今日からできる3つの確認を紹介します。 今日からできる確認は三つあります。
一つ目は厨房にガスこんろなど火を使用する設備・器具があるかどうかを確認することです。
二つ目は既に消火器が設置されているか、本数と設置場所、点検記録を確認することです。
三つ目は使用しているこんろに調理油過熱防止装置などの安全機能が付いているか、取扱説明書やメーカーに確認することです。
施行から一定の期間が経っているため、未設置のまま放置すると違反の状態が続くことになります。
まずは自分の店舗が令別表第一(三)項に当たるかどうかを、消防計画や用途区分の記録から確かめてみましょう。
対象なのに設置状況が分からない場合は、所轄消防署に確認するのが一番確実です。
一件の火災の教訓が、今も自分の店舗の消火器の本数に直結していることを覚えておいてください。

今日にでも厨房の消火器を確認してみます!

それが分かれば、今後の対応がぐっと立てやすくなります。

よくある質問

Q改正前から営業している飲食店も対象になりますか?
Aはい、既存の飲食店も含めて対象になります。改正前は延べ面積150平方メートル以上の店舗だけが対象でしたが、改正後は火を使用する設備・器具があれば規模にかかわらず対象になります。
Q電子レンジやIHクッキングヒーターしか使っていない店舗はどうなりますか?
A熱源が電気のみの調理機器は火を使用する設備・器具にあたりませんので、この号の対象にはなりません。ただし延べ面積150平方メートル以上であれば、別の号で設置義務が生じる場合があります。
Q調理油過熱防止装置を付ければ消火器は一切不要になりますか?
Aいいえ、免除されるのは今回新設された号の対象からだけです。延べ面積150平方メートル以上の店舗であれば、別の号に基づいて改めて設置義務が生じます。
Q自分の店舗が対象かどうか分からないときはどうすればよいですか?
A用途区分や使用している設備の判断に迷う場合は、所轄消防署に確認するのが確実です。図面や設備の一覧を持参すると相談がスムーズになります。

まとめ

きっかけは平成28年の糸魚川市大規模火災でした。
出火原因は飲食店の大型こんろの消し忘れでした。
対象は(三)項の飲食店等で火を使用する設備・器具を設けたものです。
延べ面積を問わず消火器具の設置が義務になりました。
施行は令和元年10月1日でした。
熱源が電気のみの調理機器は対象外です。
調理油過熱防止装置や自動消火装置があれば免除される場合があります。

面積が理由じゃなくなったこと、今日すぐ確認します!

消火器具のことでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第10条
  • 消防法施行規則第5条の4
  • 総務省消防庁「糸魚川市大規模火災を踏まえた今後の消防のあり方に関する検討会報告書」(平成29年5月)
  • 総務省消防庁「平成29年版消防白書 糸魚川市大規模火災」

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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