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住宅で宿泊サービスを提供する施設はなぜ消防だけでは把握できないのか|衛生部局等との情報共有と合同立入検査を解説

住宅の宿泊サービスはなぜ消防だけでは把握できないのかを解説する記事のアイキャッチ画像

戸建て住宅やマンションの一室を使って、有償で宿泊サービスを提供する事例が全国で増えています。
外から見ただけでは普通の住宅と変わらないため、消防機関が実態をつかむのは簡単ではありません。
そこで消防庁は平成29年、他の行政機関と情報を共有しながら実態を把握するよう、全国の消防機関に通知を出しました。
住宅の宿泊サービスも、消防法令と無縁ではいられません。

近所の家が民泊っぽく使われてるって噂を聞いたんですけど、これって消防的に何か関係あるんですか。

住宅を使った宿泊サービスも、有償で繰り返し行えば消防法令の対象になります。
実は消防だけでは実態をつかみにくいので、他の部局と連携して見つける仕組みがあるんです。

えっ、消防が単独で調べてるわけじゃないんですね。

はい。
平成29年に消防庁が出した通知が、その連携のやり方を具体的に示しています。

この記事の結論
  • 住宅を使った宿泊サービスも、有償で繰り返し行えば旅館業にあたり消防法令の対象になります
  • 旅館業法の許可を取っていない住宅ほど、実態が把握されにくく違反が放置されやすい傾向があります。
  • 消防法第4条は資料提出命令・報告徴収・立入検査・質問を認めていますが、個人の住居への立入りには制限があります。
  • そのため消防機関は衛生部局等の関係行政機関と情報共有し、合同で立入検査を行う取組みを進めています。
  • 立入検査では宿泊者本人への質問も想定されており、隠れて営業を続けることは難しくなっています。

住宅の宿泊サービスも消防法令の対象であることを示す図解

宿泊サービスを提供する住宅はなぜ消防が把握しづらいのか

住宅の郵便受けの貼り紙と、虫眼鏡を構える消防職員
戸建て住宅やマンションの一室を使った宿泊サービスは、外から見ただけでは事業なのか生活の場なのか分かりません。
消防庁は平成29年3月17日付け消防予第63号で、この状況に対応するよう全国の消防機関に求めました。
宿泊サービスを提供する施設における消防法令の遵守の徹底について(平成29年3月17日 消防予第63号) 近年、住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部又は一部において宿泊サービスが提供されるなど、様々な形態の宿泊サービスが出現している状況にありますが(略)このような形態の宿泊サービスを提供する施設で消防法令違反が存する場合は、火災が発生した際の人命の危険が特に高いと考えられ、その施設の実態や危険性に応じた適切な防火安全対策が講じられるよう指導していく必要があります。
住宅の形をした宿泊サービスは見つけにくいから通知が出ました。
ホテルや旅館は最初から旅館業法の許可を得て営業し、消防検査も受けます。
一方、住宅を使った宿泊サービスは、届出や許可の手続きが後回しになっていても外形は普通の住宅と変わらないため、消防機関が単独で見つけるのは簡単ではありません。
実際、住宅での宿泊サービスの提供が分かるきっかけの多くは近隣住民からの情報だと、通知の別紙でも紹介されています。
だからこそ通知は、消防だけでなく他部局とも情報を持ち寄る体制づくりを求めています。

うちは普通の一戸建てなんですが、そういう住宅でも消防が気にするような話なんですか。

はい。
届出前の住宅でも、有償で繰り返し宿泊させていれば対象になり得ます。

どんな住宅の宿泊サービスが対象になるのか

住宅の前のコインと、丸印が並んだカレンダー
通知が対象にしているのは、特別な施設だけではありません。
戸建て住宅や共同住宅の一部を使い、有償で繰り返し人を泊める行為そのものが対象になります。
宿泊サービスを提供する施設における消防法令の遵守の徹底について(平成29年3月17日 消防予第63号) 住宅を利用する場合であっても、有償で繰り返し、宿泊サービスを提供することは、基本的に旅館業にあたるため、旅館業法に基づく許可を得ることが必要とされています。また、一部地域では、旅館業法に基づく許可のほかに、国家戦略特別区域法に基づく認定を受ける方法もあります。
住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて(平成29年10月27日 消防予第330号) 届出住宅については、消防法施行令別表第1(5)項イに掲げる防火対象物(旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの)又はその部分として取り扱うものとする。
許可の有無ではなく、有償・反復という実態で対象かどうかが決まります。
まだ旅館業法の許可を取っていない住宅も、この基準に当てはまれば対象から外れません。
共同住宅の一部屋だけで行っている場合も同様で、その部屋は令別表第1(5)項イの旅館・ホテル等に類する防火対象物として扱われる考え方が示されています。
「まだ許可を取っていないから対象外」という理屈は通用しません。
むしろ許可前・無届の段階こそ、消防法令違反が放置されやすいため注意が必要です。

うちはまだ旅館業法の許可を取っていないんですが、それなら対象外ですよね。

いいえ、許可の有無は関係ありません。
有償で繰り返し人を泊めている実態があれば、届出前でも対象になります。

通知は消防機関にどんな取組みを求めているのか

消防職員と衛生部局の職員が建物の前で書類を交わす様子
通知が示しているのは、消防だけで抱え込まない進め方です。
消防法令の権限を使いながら、他の行政機関とも情報を持ち寄ることを求めています。
宿泊サービスを提供する施設における消防法令の遵守の徹底について(平成29年3月17日 消防予第63号) 各消防機関においては、立入検査における関係のある者(宿泊者を含む。)への質問、関係者への資料提出命令、報告徴収等を行うことや「建築物への立入検査等に係る関係行政機関による情報共有・連携体制の構築について」(平成27年12月24日付け消防予第480号)により衛生部局等の関係行政機関との情報共有等を行うなどにより、宿泊サービスを提供する施設の実態を把握した上で、適切に指導することが求められているところです。
消防法第4条第1項 消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防職員に(略)関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。ただし、個人の住居は、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立ち入らせてはならない。
消防だけの立入権限には限界があるから連携するのです。
消防法第4条は資料提出命令・報告徴収・立入検査・質問を認めていますが、個人の住居への立入りには承諾か著しく大きい緊急性が必要という制限があります。
だからこそ通知は、旅館業法の許可事務を担う衛生部局等との情報共有や合同立入検査を別紙の事例で紹介しています。
消防法令適合通知書の交付を通じた連携、通報窓口を衛生部局が担う連携、複数部局の協議会設置といった形が実際に運用されています。
一つの部局だけで動くよりも、実態をつかむまでの時間がずっと短くなります。

消防が勝手に住宅の中まで調べに来るってことですか。

個人の住宅への立入りには本来、承諾か強い緊急性が必要です。
だからこそ許可事務を持つ衛生部局などと情報を持ち寄って実態をつかむ仕組みになっています。

住宅だから関係ないと思うとどこで落とし穴にはまるのか

ひびの入った盾のマークと、質問を受ける宿泊者
「住宅だから消防法は関係ない」という考え方には、ずれがあります。
通知が紹介する事例を見ると、発覚のきっかけは思いのほか身近なところにあります。
宿泊サービスを提供する施設における消防法令の遵守の徹底について(平成29年3月17日 消防予第63号)別紙 立入検査を行った際に、マンションのロビーの郵便受け等に「Hostel.StayHere.3,000yen/day.」のようなマジック書きの看板やシールが貼られていることが多い。このような掲示を発見した場合は、宿泊サービスの提供が行われていることが多く、建物の所有者に直接問い合わせる等により物件情報を調査することもある。
小さな貼り紙一枚が実態把握の入り口になります。
「うちは看板を出していないから大丈夫」と思っていても、郵便受けの手書きシールのような小さな掲示から発覚した例が通知に紹介されています。
また消防法第4条は質問の相手に宿泊者本人を含めており、立入検査の際に宿泊者が声をかけられることも想定されています。
「許可を取っていないから消防には見つからない」という前提は成り立ちません。
むしろ無許可・無届の段階のほうが、消防法令違反がそのまま放置されやすい落とし穴です。

宿泊してるお客さんまで質問されることがあるんですね、ちょっと意外です。

はい、通知でも宿泊者を含む関係者への質問が明記されています。
小さな貼り紙から発覚することもあるので、隠せば済むという考え方は危険です。

明日から何を確認すればよいのか

チェックリストを持つ手と、消防署に電話をかける様子
通知は最後に、実態把握を進めて消防法令の遵守の徹底を図るよう呼びかけています。
自分の建物や部屋で宿泊サービスを行っている、またはこれから始める場合は、次の点を確認しておきましょう。
宿泊サービスを提供する施設における消防法令の遵守の徹底について(平成29年3月17日 消防予第63号) これらの事例を参考として、宿泊サービスを提供する施設の実態把握等を進め、消防法令の遵守の徹底を図られるようお願いします
まず許可の状況と消防法令適合を自分で確認します。
旅館業法の許可を得ているか、得ていなければ届出の準備が進んでいるかを確認します。
消火器・住宅用防災警報器・避難経路など、宿泊者を安全に避難させるための消防法令適合の状況もあわせて点検します。
判断に迷う点は自己流で済ませず、所轄の消防署に相談するのが確実です。
消防法令適合状況の確認や書類の整理は、㈱防災屋にご相談いただくこともできます。

民泊っぽいことを始める前に、消防に関係する書類とか設備を先に整理しておいたほうがよさそうですね。

その通りです。
許可の準備と並行して、消火器や警報器の設置状況を先に整えておくと、あとの立入検査もスムーズです。

よくある質問

Q旅館業法の許可を取っていない住宅の宿泊サービスも対象になりますか?
A対象になります。通知は許可の有無にかかわらず、有償で繰り返し宿泊させる住宅の実態把握を消防機関に求めています。届出前や無許可の施設ほど消防法令違反が見過ごされやすいため、優先して実態を把握すべき対象とされています。
Qマンションの一室だけで宿泊サービスをしている場合も対象になりますか?
A対象になります。共同住宅の一部で宿泊サービスが提供される場合、消防機関は宿泊サービスの部分だけでなく、それ以外の部分の状況もあわせて確認し、許可の判断を行う衛生部局へ情報提供する取組みが通知の事例で紹介されています。
Q立入検査で宿泊者本人が質問を受けることはありますか?
Aあります。消防法第4条は立入検査の際の質問の相手に宿泊者を含むと定めています。宿泊中に消防職員から声をかけられることは想定しておく必要があります。
Q個人の住宅への立入りには制限があると聞きました。宿泊サービスを提供している住宅にも関係ありますか?
A関係します。消防法第4条は、個人の住居への立入りを関係者の承諾を得た場合か、火災発生のおそれが著しく大きく特に緊急の必要がある場合に限っています。だからこそ通知は、消防だけで立ち入るのではなく、旅館業法の許可事務を担う衛生部局等と情報を共有し、合同で実態を把握する取組みを求めています。

まとめ

住宅を使った宿泊サービスは、有償で繰り返し行えば旅館業にあたり許可が必要になります。
通知の名称は「宿泊サービスを提供する施設における消防法令の遵守の徹底について」(平成29年3月17日 消防予第63号)です。
共同住宅の一部屋だけで行う宿泊サービスも対象から外れません。
消防法第4条は資料提出命令・報告徴収・立入検査・質問の権限を消防機関に認めています。
個人の住居への立入りには承諾か著しく大きい緊急性が必要という制限があります。
だからこそ消防は衛生部局等の関係行政機関と情報共有し、合同で立入検査を行う取組みを進めています。
立入検査では宿泊者本人への質問も想定されており、小さな貼り紙一枚から発覚することもあります。

まず旅館業法の許可状況と消防設備を確認して、必要なら所轄の消防署にも相談してみます!

消防法令の適合状況やご不明点があれば、いつでもお尋ねください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 宿泊サービスを提供する施設における消防法令の遵守の徹底について(平成29年3月17日 消防予第63号 消防庁予防課長)
  • 建築物への立入検査等に係る関係行政機関による情報共有・連携体制の構築について(平成27年12月24日付け消防予第480号)
  • 住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて(平成29年10月27日 消防予第330号)
  • 消防法第4条
  • 消防法施行令別表第1(5)項イ

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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