可燃物が多く死角となりやすい物品販売店舗は、放火の標的になりやすいと言われます。
消防庁は量販店等への防火対策強化を求める通知に続けて、放火を早期に検知するための技術基準を示しました。
それが「放火監視センサーを用いた放火監視機器に係る技術上のガイドライン」です。
このガイドラインが求める性能と、導入時に見落としやすいポイントを解説します。
監視カメラだけでなく放火監視センサーという選択肢もありますよ。
炎の紫外線や赤外線を感知して警報を出す機器です。
順番に見ていきましょう。
この記事の結論
- 放火監視センサーは炎から出る紫外線や赤外線を検知して警報を発する機器です。(「放火監視センサーを用いた放火監視機器に係る技術上のガイドライン」平成17年4月11日消防予第72号)
- 自動火災報知設備の炎感知器より高い感度で、火災に至る前の小さな火種に反応します。
- 設置は義務ではなく、死角の多い物品販売店舗向けの任意の選択肢として示されています。
- 最も普及している紫外線感知式は、ハロゲンランプ等の照明でも誤作動しうる点に注意が必要です。
- 効果を高めるには監視カメラや巡回体制と組み合わせることが求められています。
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なぜ放火監視センサーのガイドラインは策定されたのか
平成16年12月、ドン・キホーテ浦和花月店の火災をきっかけに、全国の量販店で放火が相次ぎました。
消防庁はまず巡回強化や監視カメラの設置増強を求めましたが、死角をすべて埋めきることは簡単ではありません。
「放火監視センサーを用いた放火監視機器に係る技術上のガイドラインの策定について」(通知)(平成17年4月11日 消防予第72号 消防庁予防課長) 量販店等の防火安全対策については「量販店等における当面対応すべき防火安全対策の強化について」(平成17年1月19日付け消防予第5号・消防安第7号)により、放火火災防止の推進については「放火火災防止対策検討会の報告書の送付及び放火火災防止に向けた取組みの積極的な推進について」(平成17年1月28日付け消防予第22号)により、それぞれ積極的な取組みをお願いしているところです。今般、これらの通知を踏まえ、放火火災防止対策に資する放火監視機器として、別添のとおり「放火監視センサーを用いた放火監視機器に係る技術上のガイドライン」を策定しました。本ガイドラインで示す放火監視センサーは、その感度を自動火災報知設備にかかる炎感知器より高くすることにより、火災に至る前の極小火源により生ずる炎に対し警報を発するものであり、放火火災防止対策に有効なものです。
自動火災報知設備の炎感知器より先に、小さな火種の段階で警報を出す仕組みです。
消防用設備等のように設置が法令で義務付けられているわけではなく、あくまで任意の選択肢として示されました。
背景には、巡回や監視カメラの強化だけでは死角を埋めきれないという量販店の実情があります。
つまり、既存の対策を置き換えるのではなく、
もう一段階早い警戒網として補うための機器です。
死角を完全にゼロにするのは難しいので、機器で補うわけです。
どんな場所でどんな仕組みが働くのか
放火監視センサーが想定しているのは、可燃物が多く死角となりやすい物品販売店舗です。
どうやって放火を検知するのか、まず仕組みから見てみましょう。
放火監視センサーを用いた放火監視機器に係る技術上のガイドライン 第2 用語の意義 2 放火監視センサー 炎から放射される紫外線、赤外線等の特定のスペクトルを検出し、放火された旨の警報(以下「放火警報」という。)を発し、又は放火された旨の信号(以下「放火信号」という。)を放火監視受信装置に発信するものをいう。
炎そのものが出す紫外線や赤外線を検知して、警報を出す機器です。
消防用設備等のように、面積や用途で設置が義務付けられているわけではありません。
可燃物量が多く死角となりやすい物品販売店舗等が、ガイドラインが想定する主な設置先です。
自動火災報知設備が煙や熱で火災の発生をとらえるのに対し、
放火監視センサーは火災に至る前の小さな炎の段階で反応します。
死角になりやすい場所こそ、放火監視センサーが向いていますよ。
ガイドラインはどんな性能を求めているのか
実際に導入する機器には、細かい性能基準が定められています。
カタログを確認するときの目安として押さえておきましょう。
放火監視センサーを用いた放火監視機器に係る技術上のガイドライン 第3 構造及び機能に係る技術的な基本事項 1(7) 監視センサーは、当該監視センサーから最大監視距離離れた標準炎(口径6ミリメートルのミクロバーナによる高さ3メートル程度の炎(ライターの炎を想定)をいう。)に対して速やかに放火警報又は放火信号を発すること。(8)放火警報を発するものにあっては、監視センサーの中心から前方1メートル離れた地点で測定した音圧が、屋内型にあっては70デシベル以上、屋外型にあっては85デシベル以上であり、かつ、その状態を1分間以上継続できること。(9)電源に電池を用いるものにあっては、電源容量が不足したときは、自動的にその旨の信号を72時間以上発信するか、又は72時間以上警報音を発することができる装置を設けること。
検知の速さと警報の大きさ、どちらにも具体的な数値基準があります。
ライターの炎を想定した標準炎に、速やかに反応することが求められます。
警報音の大きさは
屋内で70デシベル以上、屋外で85デシベル以上と、屋外型の方が高い基準です。
電池式の場合は、電源が切れかけても
72時間以上は警報や信号を出し続けられる余力が必要です。
はい、カタログにこの数値が載っているか確認するとよいですよ。
実務で見落としやすいのはどこか
一番普及している方式には、思わぬ誤作動のリスクがあります。
商品陳列や照明を見直すときには特に注意が必要です。
放火監視センサーを用いた放火監視機器に係る技術上のガイドラインの策定について(平成17年4月11日 消防予第72号) 記 2 物品販売店舗等に放火監視センサーを設置する場合にあっては、(1)広告や商品展示により、放火監視センサーの監視エリアに死角が生じないよう指導されたいこと。(2)放火監視センサーは、紫外線を感知する方式、赤外線を感知する方式及びその両者を感知する方式などがあるが、最も多く使われている紫外線を感知する方式のものは、ハロゲンランプの光を感知して作動するため、その監視エリアに照明に用いるハロゲンランプ等の光源を設ける場合は、放火監視センサーを直接照射しないよう留意するよう指導されたいこと。(3)陳列商品の模様替え等が行われる場合にも、監視エリアの設定や光源の位置に留意するよう指導されたいこと。
一番普及している紫外線感知式は、照明の光でも誤作動しかねません。
紫外線を感知する方式は、店内の
ハロゲンランプの光にも反応してしまうことがあります。
照明の位置とセンサーの向きがぶつかっていないか、設置のときに確認しておく必要があります。
季節ごとに商品の模様替えをする店舗では、そのたびに監視エリアと光源の位置を見直すことが求められます。
そのとおりです。
模様替えのたびにセンサーの向きも確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか
機器を設置したら終わりではなく、日常の点検も欠かせません。
ガイドラインが示す確認項目を見ておきましょう。
放火監視センサーを用いた放火監視機器に係る技術上のガイドライン 第5 設置時の試験及び点検に関する基準 2 監視センサー及び受信装置の点検は、次に定めるところによるものとする。(1)監視センサーの点検は、次によること。ア 通電表示灯を有するものにあっては、表示灯が点灯していることを確認すること。イ 監視センサーの取付けが確実であることを確認すること。ウ 監視センサーの受光面が汚れていないかどうかを確認すること。エ 定期的に、監視センサー及び受信装置が放火警報を発すること又は放火信号を発信することを確認すること。
点検のいちばんの基本は、センサーの受光面が汚れていないかの確認です。
通電表示灯が点いているか、取り付けが緩んでいないかもあわせて確認します。
定期的に実際の作動確認まで行い、いざというときに警報が出るかを確かめておきます。
効果を高めるには、
監視カメラや携帯電話などと組み合わせて使うこともガイドラインで有効だとされています。
よくある質問
Q放火監視センサーの設置は義務なのか?
Aいいえ、消防用設備等のような設置義務ではなく、死角の多い物品販売店舗等向けの任意の選択肢として示されています。
Qどんな方式のセンサーがあるのか?
A紫外線を感知する方式、赤外線を感知する方式、その両方を感知する方式があり、紫外線感知式が最も多く使われています。
Q警報音の大きさはどれくらい必要か?
A監視センサーの前方1メートルで測定した音圧が屋内型で70デシベル以上、屋外型で85デシベル以上必要とされています。
Q監視カメラがあれば放火監視センサーは不要か?
Aいいえ、ガイドラインは監視カメラや携帯電話等との組み合わせが効果的だとしており、どちらか一方で足りるとはしていません。
まとめ
✔平成16年12月のドン・キホーテ浦和花月店の火災をきっかけに、量販店等での放火が全国で相次ぎました。
✔消防庁はまず巡回強化や監視カメラの設置増強を求める通知を出しました。
✔その後、平成17年に放火監視センサーの技術基準を定めるガイドラインが策定されました。
✔放火監視センサーは炎の紫外線や赤外線を検知し、自動火災報知設備の炎感知器より高い感度で反応します。
✔設置は義務ではなく、死角の多い物品販売店舗向けの任意の選択肢です。
✔最も普及している紫外線感知式は、ハロゲンランプ等の光源で誤作動しうるため設置場所に注意が必要です。
✔効果を高めるには監視カメラや巡回体制との組み合わせが推奨されています。
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この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 放火監視センサーを用いた放火監視機器に係る技術上のガイドラインの策定について(通知)(平成17年4月11日 消防予第72号 消防庁予防課長)
- 量販店等における当面対応すべき防火安全対策の強化について(平成17年1月19日付け消防予第5号・消防安第7号)
- 消防組織法第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。