危険物や指定可燃物を扱う施設では、消防法だけでなく市町村が定める火災予防条例も守らなければなりません。
実は消防法には、条例に違反した場合の罰則そのものを条例側に設けさせる、少し変わった仕組みがあります。
この仕組みを知らないまま運用していると、行政命令を経ないまま罰金を科される可能性があります。
この記事では消防法第46条が定める罰則授権の仕組みと、条例(例)が示す罰金額・両罰規定を解説します。
うちの施設、消防法はちゃんと守ってるつもりです。
それでも罰せられることってあるんですか。
はい、市町村の条例に違反しただけでも罰則の対象になることがあります。
消防法第46条という規定がその根拠になっています。
条例って市町村ごとに内容が違いますよね。
罰則の中身も市町村ごとにバラバラなんですか。
そのとおりです。
今日は代表的な火災予防条例(例)を例に、罰則の仕組みを一緒に確認していきましょう。
- 消防法第46条は市町村条例に罰則を設ける権限を与える規定です
- 対象は少量危険物・指定可燃物の基準違反や屋外催しの防火管理計画未提出など4つです
- 違反すると命令なしで30万円以下の罰金が科され得ます
- 両罰規定により法人も同時に処罰されます
- 罰則の中身は市町村ごとに異なるため自分の市町村の条例を確認する必要があります
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目次
なぜ火災予防条例違反で消防法の罰則が科されるのか

問題は、その条例に違反したときの罰則まで条例側が自由に決められるのかという点です。
第九条の四は、指定数量未満の危険物(少量危険物)や指定可燃物の貯蔵・取扱いの技術基準を市町村条例に委任しています。
条例は技術基準を独自に定められるだけでなく、その基準に違反した者への罰則規定を設ける権限も、消防法第46条によって与えられています。
つまり、条例違反そのものが消防法という国の法律に基づく処罰につながる構造になっているわけです。
命令や是正指導を経ずに、違反行為があった時点で直接罰則の対象になり得る点も見落とされがちです。
このあと、実際の条例でどんな行為が処罰対象になるのかを見ていきます。
え、条例に違反しただけで消防法の罰則になるんですか。
市の条例なのにですか。
はい、消防法第46条が根拠です。
次は具体的にどんな違反が対象になるのか見てみましょう。
条例のどんな違反が処罰の対象になるのか

危険物と指定可燃物の両方が対象に含まれている点がポイントです。
一 第30条の規定に違反して指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱つた者
二 第31条の規定に違反した者
三 第33条又は第34条の規定に違反した者
四 第42条の3第2項の規定に違反して、同条第1項に規定する火災予防上必要な業務に関する計画を提出しなかつた者
一号と二号は少量危険物と指定可燃物の貯蔵・取扱いの技術基準(第30条・第31条)への違反です。
三号は指定可燃物の位置・構造・設備の基準(第33条・第34条)への違反を指しています。
四号だけは危険物や指定可燃物と関係がなく、消防長(消防署長)が指定した大規模な屋外催しで、防火管理計画を期限までに提出しなかったという違反です。
いずれも消防署からの是正命令を経る前提が条文に書かれておらず、違反があった時点で処罰の対象になり得ます。
うちは少量危険物を扱ってますけど、屋外で夏祭りをやるときの計画も関係あるんですね。
知りませんでした。
はい、4号がまさにその届出義務です。
次は罰金の金額と、だれが処罰されるのかを確認しましょう。
罰金はいくらでだれに科されるのか

さらに条例(例)第50条には、法人にも同じ刑を科す両罰規定が置かれています。
これは両罰規定と呼ばれる仕組みで、代理人や使用人などの従業者が業務に関して違反行為をした場合に適用されます。
罰せられるのは行為者本人だけではなく、その法人または個人事業主本人にも同じ30万円以下の罰金が科されます。
つまり現場の担当者個人の問題では終わらず、施設を運営する法人全体の責任として扱われるということです。
両罰規定があることは、社内の管理体制を整える動機としても意識しておく必要があります。
従業員がうっかり違反しただけでも、会社まで罰金を取られるんですか。
それは知らなかったです。
はい、両罰規定があるとそうなります。
次はこの罰則が市町村ごとにどう違うのかを見てみましょう。
罰則の中身は市町村ごとに違うのか

実際の適用は、各市町村が自分の議会で制定した条例の条文によって決まります。
同条第二項 指定数量未満の危険物及び指定可燃物その他指定可燃物に類する物品を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(第十七条第一項の消防用設備等の技術上の基準を除く。)は、市町村条例で定める。
消防法第九条の四は、少量危険物や指定可燃物の貯蔵・取扱いの技術基準を市町村条例で定めると規定しているだけで、基準そのものの内容までは指定していません。
条例(例)はあくまで消防庁が示すひな形であり、罰金の額や対象となる号立てを各市町村がそのまま採用するとは限りません。
実際には金額を変えたり、対象行為を追加・削除したりしている市町村条例も存在し得ます。
自分の施設がある市町村の条例を確認しない限り、正確な罰則の中身は分かりません。
じゃあ今日教えてもらった30万円って、うちの市でもそのままなんですか。
不安になってきました。
条例(例)どおりとは限らないので、必ず確認が必要です。
最後に確認の手順をお伝えします。
自分の市町村の条例はどう確認すればよいのか

確認の手順を整理しておきます。 ひな形との違いを知っているだけで対応のスピードが変わります。
まず施設が所在する市町村名で「火災予防条例」を検索し、条例の正式な条文を確認します。
次に危険物・指定可燃物の貯蔵取扱いに関する条項(条例(例)の第30条前後に相当する部分)で技術基準を確認します。
そのうえで罰則の章(条例(例)でいう第49条・第50条に相当する部分)で罰金額と両罰規定の有無を確認します。
不明な点は所轄の消防署(予防課)に直接問い合わせるのが確実です。
条例(例)の構造(技術基準→罰則→両罰規定という流れ)を理解していれば、自分の市町村の条例を読むときも該当箇所をすぐに見つけられます。
条例は市区町村の公式サイトの例規集で公開されていることがほとんどで、無料で誰でも確認できます。
違反行為に心当たりがある場合は、命令を待たずに自主的に是正し、必要であれば消防署に相談することが望まれます。
日頃から技術基準を守っていれば、罰則そのものを過度に心配する必要はありません。
なるほど、まずは自分の市の条例を確認してみます。
不明な点は消防署にも聞いてみますね。
それが確実です。
条例(例)はあくまで地図として使うのがおすすめです。
よくある質問
まとめ
条例と消防法の関係、やっと腑に落ちました。
自分の市の条例、さっそく確認してみます。
ぜひ確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第九条の四、第46条 e-Gov法令検索
- 火災予防条例(例)第49条・第50条(消防庁長官通知)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





