事業所から別の場所へ危険物を容器に入れてトラックで運ぶとき、どんな基準に従えばよいか迷うことはないでしょうか。
貯蔵や取扱いの基準は詳しくても、公道を運ぶ「運搬」の基準は見落とされがちです。
実は運搬容器の材質や構造、収納の仕方には、消防法とその政令・規則が定める独自の基準があります。
この記事では、危険物を運搬容器に入れて運ぶときの基準を、条文に沿って整理します。
工場から別の事業所へ薬品を容器に入れて運ぶことがあるんですが、容器は何でもいいわけじゃないですよね。
その通りです。
消防法第16条により、運搬容器には材質と構造の基準が定められています。
貯蔵や取扱いの基準とは別に、運ぶときだけの基準があるんですね。
はい。
しかも指定数量に関係なく適用されます。
- 危険物の運搬は消防法第16条により、容器・積載方法・運搬方法について政令で定める基準に従わなければならない
- 運搬容器の材質は金属板や紙、プラスチック、ファイバー板など危険物の規制に関する規則第41条が定めるものに限られる
- 運搬容器の構造は堅固で容易に破損せず口から漏れないものでなければならない
- 収納するときは密封したうえで固体は95パーセント以下、液体は98パーセント以下の収納率を守る必要がある
- 運搬の基準は指定数量に関係なく、すべての危険物に適用される
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目次
危険物を運搬容器に入れて運ぶときはどんな基準があるのか

まず根拠になる消防法の条文を確認します。
貯蔵や取扱いの基準は施設の位置・構造・設備にかかわる基準ですが、運搬の基準は容器に入れて公道を移動させる行為そのものに対する基準です。
条文の委任を受けて、具体的な数値や材質は危険物の規制に関する政令と規則で定められています。
この記事では、そのうち運搬容器の材質・構造・収納の基準を中心に見ていきます。
運搬容器の中身は、政令や規則を見ないと分からないんですね。
はい。
次にその材質と構造を見ていきましょう。
どんな容器なら危険物の運搬に使えるのか

まず政令が定める基準を確認します。
危険物の規制に関する規則第41条は、政令の鋼板・アルミニウム板・ブリキ板・ガラスに加えて、紙、プラスチック、ファイバー板、ゴム類、合成繊維、麻、木、陶磁器を運搬容器の材質として認めています。
構造については、同規則第42条が堅固で容易に破損するおそれがなく、口から収納された危険物が漏れるおそれがないものと定めています。
材質そのものより、壊れないか、漏れないかという性能で判断する構成です。
自社が使っている容器がこの材質と性能を満たしているか、まず確認してください。
紙やプラスチックの容器でも使えるんですか。
はい。
壊れず漏れない構造であれば使えます。
容器に収納するときに何を守らなければならないのか

収納の基準を定めた規則の条文を確認します。
固体は内容積の95パーセント以下、液体は内容積の98パーセント以下の収納率とし、液体はさらに55度の温度でも漏れないだけの空間を残す必要があります。
これは温度変化で内容物が膨張しても容器の中で収まるようにするための余白で、いわば安全のための「ゆとり」です。
また異なる類の危険物を同じ外装容器にまとめて収納することも原則として禁止されています。
密封・収納率・混載の3点は、詰め方の基本として必ず押さえてください。
満タンにしない方が安全だとは思っていましたが、数字で決まっているんですね。
そうです。
液体は98パーセント以下が目安です。
実務で見落としやすいのはどこか

貯蔵・取扱いの基準を定めた条文と比べて確認します。
消防法第16条には「指定数量以上」という条件が書かれておらず、量がどれだけ少なくても運搬容器の基準がそのまま適用されます。
少量だから容器は何でもよいと考えるのは誤りです。
さらに、機械によるつり上げやフォークリフトで荷役する構造の容器(IBCコンテナ等)は、総務大臣または総務大臣が認定した法人の検査を受けて表示を付けることが求められ、2年6月以内ごとの気密試験や外部点検、5年以内ごとの内部点検も義務づけられています。
容器の大きさにかかわらず、この検査と点検の記録を欠かさないようにしてください。
うちは指定数量よりずっと少ない量しか運ばないので、基準は関係ないと思っていました。
いいえ。
運搬の基準に数量の下限はありません。
明日から何を確認すればよいのか

確認すべき順番を整理します。
- 自社が使う運搬容器の材質が、規則第41条の列挙する材質に含まれているかを確認する
- 容器に破損やひび割れ、口部の緩みがなく密封できるかを点検する
- 収納するときは固体95パーセント以下、液体98パーセント以下の収納率を守っているかを確認する
- 機械により荷役する構造の容器を使っているなら、検査済みの表示と点検記録が揃っているかを確認する
- 量が少ないからと基準を省略していないか、担当者に周知する
まずは自社の容器の材質と収納率から見直します。
検査済みの表示の有無も、あわせて確認してください。
よくある質問
まとめ
自社の運搬容器を、まず点検します!
危険物の運搬まわりの実務まで、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第16条・第9条の4第1項
- 危険物の規制に関する政令第28条
- 危険物の規制に関する規則第41条・第42条・第43条の2・第43条の3
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





