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蓄電池を製造する一般取扱所の危険物設備はなぜ空地を短縮できるのか|床・蒸気・可燃物の基準もあわせて解説

蓄電池を扱う一般取扱所で危険物設備を点検する作業員、傾斜床の排水溝と排気ダクトを確認している様子

蓄電池を製造する一般取扱所には、通常の一般取扱所とは違う独自の位置・構造・設備の基準が用意されています。
距離や空地といった基本的な要件の多くが適用除外となり、代わりに専用の基準に置き換わります。
この基準は号ごとに内容が分かれており、床・蒸気・空地・可燃物のそれぞれで確認すべき点が違います。
この記事では危険物を取り扱う設備の空地を中心に、床・蒸気・可燃物の基準までを条文にそって整理します。

蓄電池を作る工場を建てるとき、住宅のそばでも大丈夫なんですか。

通常の距離の規定は適用除外になります。
ただし別の基準が細かく決まっています。

どんな基準があるのか知っておきたいです。

はい、号ごとの基準を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • リチウムイオン蓄電池を製造する一般取扱所(イ型)は、通常の一般取扱所の基準のうち距離・空地・建物構造など九つの号が適用除外され、専用の基準に置き換わります
  • 危険物を取り扱う設備は床に固定したうえで、周囲に幅三メートル以上の空地を保有するのが原則です
  • ただし隣接する建物の壁・柱が準耐火構造であれば、その距離まで空地を短縮できます
  • 危険物設備の床は浸透しない構造・傾斜・排水溝が必要で、可燃性の蒸気は設備の外部に拡散しない構造にするのが原則です
  • 蓄電池の周囲三メートル以内は可燃物を置けないのが原則ですが、集積場所や充放電作業場所は例外です

危険物設備の空地はなぜ短縮できるのかを示す四段のインフォグラフィック、床と排水溝・蒸気の排出・設備の空地・可燃物の制限、基準は号ごとに違うので条文を号単位で確認するという結論

蓄電池を扱う一般取扱所はなぜ普通の基準を適用されないのか

住宅街の近くに建つ蓄電池製造工場の建物を境界フェンス越しに示すイメージ
蓄電池を製造・組立て・充放電する一般取扱所には、専用のルールが用意されています。
まずはどの基準が適用除外になり、どの基準に置き換わるのかという枠組みを確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の五十九の二第二項 第二十八条の五十四第五号の二イの一般取扱所のうち、次の各号に掲げる基準に適合するものについては、令第十九条第一項において準用する令第九条第一項第一号、第二号、第五号から第九号まで、第十二号及び第十九号の規定は、適用しない。
適用が除外されるのは、距離・空地・建物構造・屋根・窓や出入口・床・避雷設備など九つの号です。
これらはもともと通常の一般取扱所(政令第九条第一項)にかかる一般基準ですが、イ型の蓄電池施設にはこの第二項各号の専用基準が代わりに適用されます。
たとえば一般基準では住宅から十メートル、学校や病院からは三十メートルの距離を保つ決まりがありますが、この距離の規定そのものが適用除外の対象です。
一方で、標識や掲示板の義務、可燃性蒸気が滞留するおそれのある場合の排出義務などは適用除外に入っておらず、そのまま生き続けます。
つまり「全部が緩和される」わけではなく、除外される号とそのまま残る号を条文どおりに見分ける必要があります。

距離の規定が要らなくなるのはちょっと意外です。

その代わりにこの条文の号を一つずつ満たす必要があります。

危険物設備の床にはどんな構造が必要なのか

傾斜の付いた床に排水溝が設けられその脇に液状危険物の容器が置かれているイメージ
危険物を取り扱う設備そのものの構造から見ていきます。
まず確認するのは、床の造り方です。
同項第三号 液状の危険物を取り扱う設備の周囲(第五号の空地を含む。)の床は、危険物が浸透しない構造とするとともに、適当な傾斜を付け、かつ、貯留設備及び当該床の周囲に排水溝を設けること。
床は危険物が浸透しない構造にし、傾斜を付けて貯留設備と排水溝を設けます。
対象になるのは液状の危険物を取り扱う設備の周囲で、次に見る空地の部分も含まれます。
傾斜を付けるのは、万一漏れた危険物を一か所に集めて拡散させないためで、貯留設備と排水溝はその受け皿になります。
一般の製造所にも似た床の基準がありますが、蓄電池施設ではこの号に置き換わり、排水溝の設置まで明記されている点が特徴です。
床の構造を先に固めておくと、この後の空地や可燃物の扱いも設計しやすくなります。

排水溝まで必要なのは知りませんでした。

はい、貯留設備とセットで設けるのが決まりです。

発生した蒸気はどう処理すればよいのか

密閉された設備の箱と屋外の高所に伸びる排気ダクトを並べて示すイメージ
次に確認するのは、設備の中で発生する可燃性の蒸気や微粉の扱いです。
ここには原則とただし書きの二つの道があります。
同項第四号 危険物を取り扱う設備は、当該設備の内部で発生した可燃性の蒸気又は可燃性の微粉が当該設備の外部に拡散しない構造とすること。ただし、その蒸気又は微粉を直接屋外の高所に有効に排出することができる設備を設けた場合は、この限りでない。
原則は、設備の内部で発生した可燃性の蒸気や微粉を外部に拡散させない構造にすることです。
つまり基本の発想は設備自体を密閉に近づけることで、蒸気を外に出さないようにします。
ただし書きでは、屋外の高所に有効に排出できる設備を設ければ、この密閉の構造でなくても差し支えないとされています。
一般の製造所にも可燃性蒸気の排出義務がありますが、こちらは滞留するおそれのある建築物に排出設備を求める発想で、蓄電池施設の設備単位で拡散させないという考え方とは向きが違います。
どちらの構造を選ぶかは設計段階で決める必要があり、あとから両立させるのは手間が増えます。

排気ダクトさえ付ければ密閉構造にしなくていいんですか。

はい、屋外の高所に有効に排出できれば構いません。

設備の周囲にはどれだけの空地が必要か

周囲に空地を確保した設備と準耐火構造の壁に近づけて置かれた設備を並べて示すイメージ
空地の基準にも、原則とただし書きの両方があります。
ここがこの記事でいちばんの見どころです。
同項第五号 危険物を取り扱う設備(当該設備に危険物を移送するための配管を除く。)は、床に固定するとともに、当該設備の周囲に幅三メートル以上の空地を保有すること。ただし、当該設備から三メートル未満となる建築物の壁(出入口(随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備が設けられているものに限る。)以外の開口部を有しないものに限る。)及び柱が準耐火構造である場合にあつては、当該設備から当該壁及び柱までの距離の幅の空地を保有することをもつて足りる。
原則は、危険物を取り扱う設備を床に固定し、周囲に幅三メートル以上の空地を保有することです。
ただし書きでは、設備から三メートル未満の距離にある建築物の壁や柱が準耐火構造であれば、その壁や柱までの距離の空地を保有すれば足りるとされています。
この壁は出入口以外の開口部を持たず、出入口には随時開けられる自動閉鎖の特定防火設備が設けられていることが条件です。
つまり建物側の耐火性能と引き換えに、設備の周囲の空地を実質的に短縮できる仕組みになっています。
配管はこの基準の対象外なので、空地の要否を考えるときは設備そのものと配管を区別して見る必要があります。

壁が近くにあっても大丈夫な場合があるんですね。

はい、準耐火構造の壁や柱であれば距離を詰められます。

周囲に物を置いてよいのはどんな場所か

設備の周囲の空いた区画と蓄電池が積まれた別の集積区画を並べて示すイメージ
最後に、設備の周囲に物を置いてよいかどうかを確認します。
ここにも原則と例外の区分があります。
同項第七号 蓄電池の周囲三メートル以内に可燃物(蓄電池又は蓄電池の包装材若しくはこん包材(水が浸透する素材のものであつて、蓄電池を包装し、又はこん包しているものに限る。)を除く。)を置かないこと。ただし、次号に規定する集積場所又は第九号に規定する充放電作業場所にあつては、この限りでない。
原則は、蓄電池の周囲三メートル以内に可燃物を置かないことです。
蓄電池そのものと、水が浸透する素材で包装・こん包した状態のものだけは可燃物として扱われず、この制限の対象外になります。
ただし書きでは、集積場所充放電作業場所にあたる部分は、この三メートルの制限そのものが適用されません。
これは、集積場所や充放電作業場所にはすでに専用の要件が別に定められているためで、同じ内容を二重に規制しない形になっています。
つまり、まず自分の設備がどの区分に当たるかを見極めることが、この基準を正しく使う出発点です。

蓄電池をまとめて置く場所は、三メートルのルールと関係ないんですか。

はい、集積場所と充放電作業場所は別の基準に従います。

よくある質問

Q蓄電池を製造する一般取扱所には、なぜ距離や空地の一般基準が適用されないんですか?
A通常の一般取扱所の基準のうち、距離・空地・建物構造など九つの号が適用除外され、代わりにこの条文の専用基準に置き換わるためです。
Q危険物設備の周囲には、必ず三メートル以上の空地が必要ですか?
A原則はそうですが、隣接する建物の壁や柱が準耐火構造であれば、その距離までの空地でよいとされています。
Q可燃性の蒸気が発生する設備は、必ず密閉構造にしなければなりませんか?
A原則はそうですが、屋外の高所に有効に排出できる設備を設ければ、密閉構造でなくても差し支えありません。
Q蓄電池を集積した場所にも、周囲三メートル以内の可燃物禁止のルールはかかりますか?
Aいいえ。集積場所や充放電作業場所にあたる部分は、この三メートルの制限自体が適用されません。

まとめ

蓄電池を製造する一般取扱所(イ型)は、通常の一般取扱所の基準のうち九つの号が適用除外されます
除外された号の代わりに、この条文の専用基準に置き換わります
危険物を取り扱う設備の床は、浸透しない構造・傾斜・貯留設備・排水溝が必要です
可燃性の蒸気や微粉は、原則として設備の外部に拡散しない構造にします
ただし屋外の高所に有効に排出できる設備を設ければ、密閉の構造にしなくても差し支えありません
設備の周囲には幅三メートル以上の空地を保有するのが原則です
隣接する建物の壁・柱が準耐火構造であれば空地を短縮でき、蓄電池の周囲三メートル以内の可燃物禁止も集積場所・充放電作業場所は例外です

空地や蒸気の基準がよく分かりました!

はい、まずは設備の周囲を実測してみてください。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第十一条第一項・第五項
  • 危険物の規制に関する政令第九条第一項第一号・第二号・第五号から第九号まで・第十二号・第十九号、第十九条第一項・第二項第五号の二
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第五号の二イ・第二十八条の五十九の二第一項・第二項第三号・第四号・第五号・第七号

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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