特定建築物定期調査の「屋上及び屋根」には、屋上まわりの5項目とは別に、屋根そのものと屋上に載る工作物をまとめた区分があります。
屋根の防火性能・屋根ふき材の劣化・冷却塔や広告塔などの機器本体・その支持部分と、見る対象も判断基準も一つずつ違います。
特に機器や工作物の支持部分は、劣化が進むと強風時や地震時に落下する危険につながる部位です。
本記事では、屋根と屋上工作物にかかわる検査項目について、確認するポイントと判定基準を解説します。
屋上にはうちの空調の室外機や冷却塔も載っているんですが、あれも調査の対象になるんですか。
はい、屋根そのものと合わせて4つの検査項目があります。
今日はその全部を順番に見ていきますね。
屋根の防火なんとかって、うちのビルは市街地の真ん中にあるので関係ありそうですね。
その通りです。
防火地域と屋根不燃化区域では、確認する条文自体が変わる点も説明します。
- 屋根と屋上工作物の調査は屋根の防火性能・屋根ふき材の劣化・機器工作物の本体・支持部分という異なる視点に分かれます。
- 屋根の防火性能は設計図書等で、劣化の状況は目視や打診で確認します。
- 防火地域・準防火地域内の屋根は建築基準法第62条の規定に適合しないことが要是正の基準です。
- 冷却塔や広告塔の本体は著しい錆や腐食があれば要是正になります。
- 支持部分の緊結不良や基礎のひび割れは、落下事故に直結するため重点的に確認します。
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目次
屋根はなぜ防火地域と準防火地域で構造が決まるのか

屋根はその中でも、火の粉による延焼を防ぐ最初の砦として扱われます。
建築基準法施行令第107条・第107条の2は、屋根に必要な耐火建築物・準耐火建築物としての構造方法を具体的に定めています。
鉄筋コンクリート造やモルタルで防護した構造など、複数の例示仕様のいずれかに適合していれば要件を満たします。
定期調査では新たに設計を審査するわけではなく、竣工時の設計図書どおりの構造が維持されているかを確かめる位置づけです。
増改築や屋根材の変更があった建物では、変更後の図面が残っているかも合わせて確認すると実務がスムーズです。
屋根を後から葺き替えた場合、この基準は関係あるんでしょうか。
関係します。
葺き替え後の材料も同じ基準を満たす必要があるので、工事記録が残っていると安心です。
屋根不燃化区域に指定されるとなにが変わるのか

指定された区域では、防火地域とは別の条文が屋根に適用されます。
防火地域・準防火地域が建物の構造全体に及ぶ規制であるのに対し、法第22条区域は屋根に限定した延焼防止の規制という違いがあります。
どちらの区域に該当するかは、特定行政庁が公表している指定図で確認するのが確実です。
同じ市内でも区域の境界線一本で適用条文が変わるため、所在地の確認を毎回省略しないことが実務上の注意点です。
指定区域を跨いで建つ建物では、両方の基準を満たす設計になっているかも見ておきます。
防火地域でも準防火地域でもないビルなら、屋根は気にしなくていいんですか。
そうとは限りません。
法第22条区域に指定されていないかを一度確認しておくと安心です。
屋根ふき材と緊結金物はどう傷むのか

屋上に立ち入れない建物では、双眼鏡での確認が中心になります。
緊結金物は屋根ふき材を下地に固定する要で、ここが腐食すると屋根材そのものが健全でも脱落するおそれがあります。
直接屋根に上がれない場合は、双眼鏡で瓦のずれや金属屋根の浮きを確認し、手の届く範囲だけテストハンマーで打診します。
塗装の風化のような軽微な劣化は要是正には当たりませんが、特記すべき事項として報告書に残します。
雨水の浸入箇所やシール材の劣化も合わせて見ておくと、次回調査までの変化を追いやすくなります。
屋根に上がらずに調査できるものなんですか。
はい、双眼鏡での目視が基本です。
近づける範囲だけ打診で補います。
冷却塔や広告塔の本体はどこを見るのか

これらの本体と、屋根や躯体との接合部が調査の対象です。
広告塔は支持部(基礎部分)と接合部(骨組等)に区分され、鋼製の場合は特に錆の発生状況を重点的に見ます。
高架水槽・高置水槽はFRP製と鋼製で劣化の現れ方が異なり、設置方法によっても点検の視点が変わります。
テストハンマーで打診しながら錆を除去し、金物部そのものの断面が痩せていないかまで確認するのが実務のコツです。
機器の更新時期を判断する材料にもなるため、劣化の進み方は記録として残しておくと役立ちます。
広告塔って、看板の板だけじゃなく骨組みも見るんですね。
そうです。
骨組みの錆のほうが落下事故につながりやすいので重点的に見ます。
支持部分やアンカーボルトはどう確認するのか

支持部は高所にあることが多く、確認方法にも工夫が要ります。
高所に設置された支持部は双眼鏡で確認し、アンカーボルトのゆるみやコンクリート基礎のひび割れがないかを見ます。
錆が発生している場合はテストハンマーで除去し、金物本体がどこまで痩せているかまで確認します。
屋上を駐車場として利用している建物では、自動車の転落防止装置の支持部も同じ視点で確認しておきます。
支持部分の異常は補修の緊急度が高い指摘になりやすいため、報告書を受け取ったら早めに対応を検討します。
手すりの根元が錆びているのを見たことがあります。
あれも支持部分の話ですか。
はい、パラペットへの埋め込み部も支持部分として見る箇所です。
早めの補修をおすすめします。
よくある質問
まとめ
屋根の上だけでもこんなに見るところがあるとは思いませんでした!
まずは支持部分から業者に見てもらいます。
屋上工作物の劣化は放置すると落下事故につながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第22条・第62条(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第39条・第107条・第107条の2・第129条の2の4(e-Gov法令検索)
- 建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(平成20年国土交通省告示第282号)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。調査の方法や判定の適用は建物や特定行政庁の運用ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門業者にご確認ください。





