特定建築物定期調査の「建築物の外部」では、タイルや金属パネルといった外装仕上げ材ごとに調査方法が細かく分かれています。
同じ「外壁の劣化」でも、湿式か乾式か、金属かコンクリートかで、打診が必要かどうかまで変わってくるためです。
サッシやはめ殺し窓のガラスも、過去の地震被害を教訓にした固有の基準で調べられています。
本記事では、外装仕上げ材とサッシ等の劣化診断について、5つの切り口で調査のポイントと判定基準を解説します。
うちのビルの定期調査で「外装材の劣化」の欄がいくつも指摘されていたんですが、タイルもサッシも同じように見られているんでしょうか。
実は仕上げ材の種類ごとに調査方法が別に定められています。
今日は5つの項目に分けて見るポイントを整理していきますね。
タイルは打診で、パネルは目視だけと聞いたことがありますが、本当ですか。
その通りです。
湿式と乾式で調査方法が変わる理由から順番に説明していきます。
- 外装仕上げ材の劣化診断は、湿式タイル・乾式タイル・金属系パネル・コンクリート系パネル・サッシ等の5項目で調査方法が分かれています。
- 調査の項目・方法・判定基準は国土交通省告示によって全国共通に定められています。
- 湿式タイル・石貼りは手の届く範囲の打診に加え、竣工後10年を超えると全面打診等が必要です。
- 乾式工法や金属・コンクリート系パネルは目視等が基本で、固定金物のガタツキや変形を確認します。
- はめ殺し窓のガラスは硬化性シーリング材の使用が原則禁止されています。
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目次
湿式タイル・石貼りの浮きはなぜ打診で確認するのか

そのため定期調査では、目視だけでなくテストハンマーによる打診が調査方法の中心になります。
きっかけは平成元年に北九州市で起きた外壁タイル落下事故で、これを機に落下防止の診断指針が整えられました。
足場を組んでテストハンマーで全面を叩く方法のほか、赤外線調査(無人航空機によるものを含む)でも代用できます。
赤外線調査は足場が要らず安全性に優れる一方、実施者に十分な知識と技量が求められる調査方法です。
3年以内に全面打診を実施済みか、外壁改修が確実に予定されていれば、10年目の全面打診は省略できます。
タイルの浮きなんて、外から見ても全然分からない気がします。
だからこそ打診が必要なんです。
10年目の全面打診は省略できる条件もあるので、次回の調査で確認してみてください。
乾式工法のタイル・石貼りはなぜ目視だけでよいのか

そのため調査方法も打診ではなく、目視による固定状態の確認が基本になります。
タイルや石材が金物で引っかけてあるだけなので、材料そのものに割れや欠けが生じると、下地金物から外れて落下するおそれがあります。
下地材がプレキャストコンクリート(PC)板でシアコネクター方式により設計・製造されたことが確認できれば、この乾式工法の調査方法を準用できます。
判定はガタツキや変形の有無、目地の段差、著しい白華現象の有無を目視で可能な範囲確認する形です。
同じ「タイル」でも、工法の違いだけで調査方法が打診から目視に変わる点は見落としやすいポイントです。
同じタイルなのに、工法が違うだけで見方が変わるんですね。
はい、湿式か乾式かは設計図書や工事記録で判別します。
自分の建物がどちらの工法か、一度確認しておくと安心です。
金属系パネルの帳壁はどこに腐食のサインが出るのか

共通して注意したいのは、パネル同士の取合い部から始まる腐食です。
鋼製パネルは取合い部のシーリング材が劣化して雨水が浸入すると錆が発生し、放置すればこぶ状にふくらんで変形することがあります。
アルミ製パネルの場合は表面に白い泡状の点食が現れ、進行すると孔があく状態になります。
調査は双眼鏡等を使った目視が基本で、パネル全体の汚れ状況や浮き・歪みも合わせて確認します。
判定基準は「著しい錆等による変形」なので、色の変化だけでなく、面がゆがんでいないかまで見るのがポイントです。
うちのビル、金属パネルの継ぎ目にうっすら錆が出てるんですが、これって大丈夫でしょうか。
色が出ている程度なら経過観察のことが多いですが、パネル面のゆがみまで進んでいると要是正になります。
早めに調査員へ見てもらうと安心です。
コンクリート系パネルの帳壁はPC版とALCで何が変わるのか

どちらも帳壁として使われるため、取り合い部の状態まで含めて確認します。
PC版はファスナー金物で固定されている場合が多く、錆汁が流出していないか、パネルの取り合い部の状態を注意深く確認します。
ALCパネルは多孔質で吸水性が比較的大きいため、表面塗膜のふくれや、取り合い部のシーリング材の柔軟性が失われていないかを見ます。
地震等で他のパネルとの間にズレが生じていないかも、特記すべき事項として記録の対象です。
タイルや石材が貼られたコンクリート系パネルは、この項目とタイル・石貼りの項目の両方に該当する点も覚えておきましょう。
PC版とALCパネル、見た目が似ていて区別がつきません。
設計図書で確認するのが確実です。
気になる場合は調査員に材料を伝えれば、該当する基準で見てもらえます。
サッシとはめ殺し窓のガラスは何を根拠に点検するのか

背景には、地震でガラスが割れて落下した過去の被害があります。
1978年の宮城県沖地震では、鋼製サッシに硬化パテを使ったはめ殺し窓のガラスが多数破損・落下し、大きな社会問題になりました。
2005年の福岡県西方沖地震でも、10階建てオフィスビルの窓ガラスが400枚以上割れて歩道に落下しています。
サッシ自体は腐食やネジの緩みによる変形が判定基準で、鋼製建具は赤錆、アルミ製建具は点食に注意します。
はめ殺し窓は室内側からパテの硬化を触診で確認し、網入りでないガラスなら飛散防止フィルムの張付等を所有者に助言する形です。
うちのビルにもはめ殺し窓があるんですが、パテで固めてあるタイプかもしれません。
網入りガラスでなければ、飛散防止フィルムを貼るなどの対策が有効です。
次回の調査で室内側からも確認してもらいましょう。
よくある質問
まとめ
外装仕上げ材だけでこんなに種類があるとは知りませんでした!
次の調査までに自分の建物の工法を確認しておきます。
仕上げ材ごとの見方が分かると、報告書もぐっと読みやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第39条(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行規則第5条(e-Gov法令検索)
- 建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(平成20年国土交通省告示第282号)
- 屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造方法を定める件(昭和46年建設省告示第109号)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。調査の方法や判定の適用は建物や特定行政庁の運用ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門業者にご確認ください。





