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防火扉の連動制御器はなぜ予備電源で動き続けるのか|自動閉鎖から防火区画の形成まで5つの検査ポイントを解説

防火扉の連動制御器はなぜ予備電源で動き続けるのかのアイキャッチ画像

防火扉は感知器が煙や熱を捉えると、連動制御器からの合図で自動的に閉まります。
ただしその合図を支えているのは予備電源という、ふだんは意識されない裏方の電源です。
停電の瞬間に電源が落ちれば、扉を閉める指示そのものが止まってしまいます。
今回は防火扉の連動機構のうち予備電源への切替から防火区画の形成までを判定する5項目を解説します。

台風で停電したとき、うちの防火扉はちゃんと閉まるのか心配です。

連動制御器には予備電源が備わっていて、停電中も自動的に切り替わります
検査ではその切替と劣化・容量まで確認しています。

予備電源が古くなっていたら、いざというとき動かないこともありますか。

劣化した電池は切替はできても長くは持ちません。
だから容量まで含めて点検しています。

この記事の結論
  • 連動制御器の予備電源への切替は主電源を遮断して確認します
  • 予備電源の劣化は液漏れ・膨張・端子の腐食など外観から判断します
  • 予備電源の容量は扉を駆動できるだけの出力があるかで確認します
  • 自動閉鎖装置と再ロック防止機構は閉まった後に再び施錠されないかまでセットで確認します
  • 総合的な作動状況と防火区画の形成は実際に扉が完全に閉まりきるかで判定します

防火扉の予備電源から防火区画の形成までの点検5項目をまとめたインフォグラフィック

連動制御器の予備電源への切替はなぜ検査するのか

防火扉の連動制御器の予備電源への切替状況を検査員が確認しているイメージ
連動制御器は通常、建物のふだんの電源(常用電源)で動いています。
停電が起きた瞬間、その働きを止めないための仕組みが予備電源です。
問 停電などで常用電源が断たれた場合、連動制御器はどのように動作するべきか。
答 常用電源が断たれた場合には、自動的に予備電源に切り替わり、感知器からの信号を引き続き受信して防火扉を作動させることができる状態を維持する必要がある。
停電中こそ、防火扉が本当に働くべき場面です
連動制御器は常用電源と予備電源の二重構成になっており、停電時には自動的に予備電源へ切り替わる仕組みを持っています。
検査では、実際に主電源を遮断するなどして切替動作が正常に行われるかを確認します。
切替スイッチが固着していたり、切替回路の一部が断線していたりすると、常用電源が生きている間は異常に気づけません。
停電を経験して初めて不具合が発覚するようでは遅いため、定期検査でのシミュレーションが唯一の確認機会になります。

実際に電源を落として試すことなんてできるんですか。

検査中は安全な手順で模擬的に停電状態を作って確認します。
実際の停電を待つ必要はありません。

連動機構用の予備電源はどこまで劣化と容量を見るのか

連動機構用の予備電源の劣化と容量を検査員が確認しているイメージ
切り替わること自体ができても、電源そのものが弱っていては意味がありません。
劣化と容量は、切替の先にあるもう一段階の確認です。
問 連動機構用の予備電源については、切替が確認できれば検査は足りるか。
答 切替の確認だけでは足りない。電源本体の劣化の状況及び防火扉を作動させるために必要な容量を保持しているかを、あわせて確認する必要がある。
切り替わっても、力が足りなければ扉は動きません
劣化の確認は、液漏れ、膨張、端子部の腐食といった外観の異常が中心になります。
容量の確認は、電源の定格と実際に扉を駆動できるだけの出力が保たれているかを見るもので、経年でじわじわ低下する性質があります。
バッテリー式の予備電源は交換の目安となる年数が設定されていることが多く、外観に異常が無くても年数だけで交換が必要になる場合があります。
使用年数を点検記録に残しておくと、次回検査での判断がしやすくなります。

バッテリーって見た目が普通でも寿命ってあるんですか。

あります。
外観に異常が無くても使用年数で交換をおすすめすることがあります。

自動閉鎖装置と再ロック防止機構はなぜセットで確認するのか

防火扉の自動閉鎖装置と再ロック防止機構を検査員が確認しているイメージ
自動閉鎖装置は、ふだん開いている防火扉を火災時にひとりでに閉じさせる部品です。
閉じた後にもう一度施錠されてしまっては、この装置の意味がありません。
問 自動閉鎖装置が正常でも、閉鎖後に扉が再びロックされてしまう場合はどう扱うか。
答 自動閉鎖装置の設置状況とあわせて、閉鎖後に再び施錠状態とならない再ロック防止機構が備わっているかを確認する。再ロックされると、避難や消防活動の妨げになるおそれがある。
閉まるだけでなく、閉まったままでいられるかも見ます
自動閉鎖装置は連動制御器からの信号を受けて扉を閉鎖方向へ動かす駆動部で、レール上の異物や建付けの歪みがあると正しく作動しません。
再ロック防止機構は、扉が閉鎖した後に元の施錠状態へ戻ってしまうことを防ぐための仕組みで、避難者や消防隊が扉を再び開けられなくなる事態を避ける役割を持ちます。
普段は開放されている扉ほど、閉鎖動作そのものを目にする機会が少なく、不具合に気づきにくい傾向があります。
検査では実際に閉鎖動作をさせたうえで、再ロックが起きないことまで確認します。

閉まった後にまたロックされたら、逆に危ないということですか。

そのとおりです。
再ロックは避難の妨げになるため、防止機構まで必ず確認します。

防火扉の総合的な作動状況はどのように判定するのか

防火扉の総合的な作動状況を検査員が確認しているイメージ
ここまでの部品がすべて正常でも、実際に扉が閉まりきらなければ意味がありません。
総合的な作動状況は、連動機構全体を通しで確認する最終チェックです。
問 各部品が個別に正常であれば、防火扉の総合的な作動状況の確認は省略してよいか。
答 省略できない。感知器を作動させてから防火扉が完全に閉鎖するまでの一連の動作を実際に確認し、途中で止まる、閉まりきらない等の不具合がないかを判定する必要がある。
部品の合格が、扉の合格を意味しません
感知器・温度ヒューズ装置・連動制御器・自動閉鎖装置がそれぞれ単体で正常でも、連携した状態で試すと不具合が見つかることがあります。
床の段差や敷居のごみ、蝶番の摩耗などは個別の部品検査では見つかりにくく、総合的な作動確認で初めて表面化します。
確認は感知器を作動させる、又はこれと同等の方法により連動機構を作動させて、防火扉が完全に閉鎖することを確かめる形で行います。
「閉まりかけて止まる」状態は一見異常に見えにくいため、最後まで閉じきったかを目視で必ず確認します。

部品ごとに正常でも、扉全体では動かないことがあるんですか。

あります。
だからこそ通しでの作動確認を毎回行っています。

防火区画は閉鎖後にどう形成されているかを確認するのか

防火扉が閉鎖した後の防火区画の形成状況を検査員が確認しているイメージ
防火扉が閉まる目的は、火や煙を一つの区画に閉じ込めることにあります。
閉まっただけでは、その目的を果たせているとは限りません。
問 防火扉が完全に閉鎖した後は、何を確認すれば防火区画の形成が確認できたことになるか。
答 扉と枠との隙間、戸当たりの密着状況、扉周囲の防火区画を構成する壁等との取り合いに隙間や損傷がないかを確認する。閉鎖しても区画に隙間があれば、火煙の伝播を防げない。
閉まる姿ではなく、塞げているかを見ます
扉と枠のすき間、戸当たりの密着、下枠やくつずりの摩耗などは、扉自体は正常に動いていても区画性能を落とす原因になります。
壁や床との取り合い部分に後工事で開けられた配管・配線の貫通孔があると、そこが煙や炎の抜け道になってしまいます。
防火扉の周囲は経年で壁材が痩せたり、シーリングが劣化したりすることもあるため、扉本体だけでなく周辺の仕上げまで含めて確認します。
区画の形成は防火扉に課せられた最終的な役割であり、この項目こそが定期検査の締めくくりといえます。

扉さえ閉まっていれば、区画としては十分だと思っていました。

すき間や貫通孔があると、それだけで役目を果たせません。
周りの壁まで含めて確認しています。

よくある質問

Q予備電源への切替は、実際に停電させないと確認できませんか?
A実際の停電を待つ必要はありません。検査では主電源を遮断するなどして停電を模した状態を安全な手順で作り、切替動作を確認します。
Q予備電源に外観の異常が無ければ、そのまま使い続けて問題ないですか?
A外観に異常が無くても安心はできません。予備電源には使用年数の目安があり、容量の低下は見た目だけでは判断できないため、年数や検査記録もあわせて確認します。
Q自動閉鎖装置が正常に動けば、防火扉の検査はそれで十分ですか?
A十分ではありません。閉鎖後に再びロックされないか、そして扉が完全に閉まりきって区画として機能するかまで、一連の動作として確認する必要があります。
Q防火区画の形成は、防火扉本体さえ正常なら自動的に満たされますか?
A自動的には満たされません。扉本体が正常でも枠とのすき間や周囲の壁の劣化があれば区画性能は損なわれるため、扉と周辺部分の両方を確認します。

まとめ

連動制御器の予備電源への切替は主電源を遮断して確認します
予備電源の劣化は液漏れ・膨張・端子の腐食など外観から判断します
予備電源の容量は扉を駆動できるだけの出力があるかで確認します
自動閉鎖装置は連動制御器からの信号で正しく作動するかを確認します
再ロック防止機構は閉鎖後に再び施錠されないかを確認します
総合的な作動状況は感知器から扉の完全閉鎖までを通しで確認します
防火区画の形成は扉と枠のすき間や周囲の壁まで含めて確認します

予備電源も自動閉鎖装置も、止まらず動き続けて初めて防火扉です
うちの制御盤、次の点検で全部見てもらいます!

予備電源への切替から防火区画の形成まで、この5項目を押さえれば連動機構の点検が一通り分かります
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第112条第19項第1号(防火設備の構造方法に関する技術的基準)
  • 建築基準法第12条第3項(特定建築設備等の定期検査報告制度)
  • 昭和48年建設省告示第2563号(防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件)
  • 昭和48年建設省告示第2564号(防火区画に用いる遮煙性能を有する防火設備等の構造方法を定める件)

※本記事は公表されている建築基準法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における検査項目の判定は、実際の検査結果や特定行政庁の指導によって異なる場合があります。詳細は検査資格者または所轄の特定行政庁にご確認ください。

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