特定建築物定期調査の「建築物の内部」には、吹付け石綿等の使用や劣化を確認する項目が独立して設けられています。
吹付け石綿は耐火被覆や吸音・断熱を目的として機械室や駐車場の天井などに使われてきた建材で、劣化すると粉じんが飛散するおそれがあります。
使用状況の確認から劣化診断、飛散防止措置の実施・劣化まで、調査の視点は一つずつ異なります。
本記事では、吹付け石綿等にかかわる4つの検査項目と、材質が不明な場合の調査の進め方を解説します。
うちのビルの機械室の天井に、吹付け材みたいなものがあるんですが、あれも定期調査で見てもらえるんですか。
はい、対象になります。
まず吹付け石綿等に該当するかから確認していきますね。
石綿と聞くと、見つかったら必ず除去しないといけないイメージがあります。
実は除去以外の対応が認められる場合もあります。
順番に見ていきましょう。
- 吹付け石綿及び吹付けロックウールで石綿の含有率が重量の0.1%を超えるものは「吹付け石綿等」として使用状況の確認対象です。
- 劣化の状況は目視ではなく、3年以内に実施した劣化状況調査の結果で確認します。
- 飛散防止措置は除去・封じ込め・囲い込みの3工法があり、増改築の規模によって求められる対応が変わります。
- 封じ込め材や囲い込み材そのものの劣化・損傷も、独立した検査項目として確認します。
- 設計図書だけで石綿含有の有無が判断できない場合は、専門機関による材質分析に進みます。
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目次
吹付け石綿等の使用はなぜ0.1%が基準になるのか

このうち石綿の含有率が重量の0.1%を超えるものだけが「吹付け石綿等」として調査の対象になります。
建築基準法第28条の2第二号は、石綿等をあらかじめ添加した建築材料の使用を原則として禁止しています。
平成18年国土交通省告示第1172号は、この禁止の例外となる建材の範囲を定めており、含有率が0.1%を超える吹付け石綿・吹付けロックウールはこの例外に含まれません。
設計図書に建材の仕様が残っていれば使用の有無を確認できますが、記載が無い場合は目視や分析結果で判断します。
古い建物ほど設計図書が残っていないことも多く、竣工年と用途から使用の可能性を推測する視点も実務では役立ちます。
うちのビルは築年数が古いんですが、設計図書が残っていない場合はどうすればいいんですか。
その場合は材質分析に進むことになります。
詳しくは後ほど説明しますね。
吹付け石綿等の劣化はどうやって確認するのか

問題になるのは、経年劣化によって粉じんが飛散しやすい状態になっているかどうかです。
調査方法が示すとおり、確認するのは別途実施された劣化状況調査の記録そのものです。
劣化状況調査自体は専門の分析機関や石綿含有建材調査者が行うもので、定期調査報告の中では実施の有無と結果を確認する位置づけになります。
記録が無い、または実施から3年を超えている場合は、劣化の実態にかかわらず記録の不備そのものが要是正の理由になります。
所有者としては、次回の調査までに劣化状況調査を更新しておくことが実務上の備えになります。
劣化状況調査をやったことがあるかどうか、記録が見当たらない場合はどうなりますか。
記録が確認できないと要是正として扱われます。
過去の調査履歴を確認しておきましょう。
飛散防止の3つの工法はどう使い分けられるのか

飛散を防ぐ方法には除去のほかに封じ込め・囲い込みという選択肢があり、増改築の規模によって求められる対応が変わります。
床面積の2分の1を超える増改築や大規模な修繕・模様替えを行った部分は、除去が原則です。
それ以外の部分については、除去のほか封じ込め・囲い込みのいずれかを実施していれば要件を満たします。
封じ込めは薬剤や造膜材で吹付け材の層そのものを固める方法、囲い込みは板状材料で覆って粉じんの飛散経路を断つ方法で、既存の吹付け層を残せる点が除去との違いです。
建築基準法施行令第137条の4の2は、この規模要件の基準となる時点を定めており、既存不適格建築物の増改築時の扱いを判断する根拠になります。
全部除去しないといけないと思っていましたが、そうとは限らないんですね。
はい、封じ込めや囲い込みでも要件を満たせる場合があります。
ただし措置後の維持管理が必要です。
封じ込めや囲い込みの措置は何が劣化すると問題になるのか

措置そのものが劣化・損傷すれば、再び粉じんが飛散するおそれがあるため、独立した検査項目として確認します。
封じ込めに使う石綿飛散防止剤は経年で亀裂や剥落が生じることがあり、囲い込みの板状材料も継ぎ目の緩みや損傷が起こり得ます。
これらの劣化は、吹付け石綿等そのものの劣化とは別に、措置後の維持管理の状態として確認する項目です。
目視で届かない高所や天井裏にある場合は、双眼鏡等を使用して確認します。
亀裂や剥落を見つけたら、応急的にふさぐのではなく専門業者による補修を依頼することが実務上の対応です。
何年か前に囲い込みをしたはずなんですが、その後は特に見ていません。
囲い込み材の劣化も定期調査の対象です。
次回の調査で状態を確認しましょう。
石綿の有無がわからないときはどう調べるのか

その場合は、目視だけで石綿の有無を判断せず、段階を踏んで確認を進めます。 判断に迷う建材は、専門機関による材質分析に進みます。
分析は定性分析と定量分析に大別され、いずれも高度な技術を要するため自己判断では行いません。
定性分析はサンプルを薬剤で発色させて顕微鏡で確認する方法などがあり、定量分析では石綿が酸に溶けにくい性質を利用した手法が使われます。
分析の依頼先は専門の分析機関で、調査結果は次回以降の調査でも参照する記録になります。
不明のまま放置せず、早い段階で分析に進むことが、その後の飛散防止措置の判断をスムーズにします。
分析を頼むとして、費用や期間はどれくらいかかるものなんでしょうか。
案件によって差があるので、分析機関へ直接ご相談いただくのが確実です。
よくある質問
まとめ
吹付け石綿の話は思ったより奥が深いんですね!
まずは設計図書の確認から始めてみます。
石綿含有建材の判断や飛散防止措置は専門的な判断が必要です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第28条の2(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第20条の4・第137条の4の2(e-Gov法令検索)
- 建築物の定期調査報告における調査の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(平成20年国土交通省告示第282号)
- 石綿をあらかじめ添加した建築材料のうち石綿の飛散又は発散のおそれがないものの範囲を定める件(平成18年国土交通省告示第1172号)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。調査の方法や判定の適用は建物や特定行政庁の運用ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門業者にご確認ください。





