特定建築物定期調査の報告書には、令や告示に判定基準が定められた法定調査項目とは別に、調査員が現場の経験から確認する任意調査項目があります。
敷地内の屋外機器や空地・通路、舗装の状態、屋上の出入口の管理、建築物内部の収納物の放置状況も、この任意調査に位置づけられています。
法定項目のように具体的な数値基準が示されていないため、どこまで見ればよいのか判断に迷う調査員も少なくありません。
この記事では、敷地の屋外機器から屋上の出入口、建築物内部の収納物まで、点検の視点が敷地から内部へと広がる5つの着眼点を解説します。
うちのビル、駐車場の隅に古い看板の柱が錆びて傾いてるんです。
これも今度の調査で見てもらえるものなんでしょうか。
はい、独立看板の支柱や配電塔・外灯といった屋外機器は任意調査の対象です。
敷地の外構から屋上の出入口、建物内部の収納物まで、法定項目以外にも見るべき場所は広くあります。
敷地から建物の中まで、そんなに範囲が広いんですね。
具体的にはどんなところを見てもらえるんでしょうか。
屋外機器・空地や通路・舗装・屋上の出入口・収納物の放置という5つの視点を順番に見ていきましょう。
それぞれ判定基準こそありませんが、実務で重要な着眼点です。
- 敷地の屋外機器(配電塔・電力引込柱・外灯・独立看板)は、機器本体と支持部分等の両方の劣化を確認します。
- 空地・通路等は、道路として利用する上での障害物の有無と管理状況の両方を見ます。
- 舗装等の調査では、くぼみやひび割れに加えて水勾配が適正に保たれているかも確認します。
- 屋上の出入口は、施錠の状況だけでなく鍵の管理者や開放時の防犯対策まで確認します。
- 建築物内部の収納物は、防火シャッターや防火戸に接近する可燃物の放置状況を確認します。
▼

目次
敷地の屋外機器等はどこまで劣化診断するのか

これらは屋内の機器と密接に結びついているものが多く、機能や性能の低下が関連機器に影響を及ぼさないよう点検が必要です。
配電塔・電力引込柱・外灯・独立看板といった屋外機器は、日射による自然劣化や腐食、ほこりによる機能障害などの劣化を受け続けます。
塗膜を厚くする、耐久性の高い材料を使うといった配慮がされていても、屋外に置かれている以上は劣化の進行が速いのはやむを得ないとされています。
特に独立看板の支柱は鋼製のポール型や門柱型が多く、腐食が進むと強風時に倒壊や部材の飛散を招くおそれがあります。
調査では機器本体の塗装の剥がれや錆の発生状況に加え、架台・基礎との緊結状況やコンクリートのグラツキ・ひび割れの有無を、必要に応じてテストハンマーによる打診も交えて確認します。
看板の柱が錆びてるくらいで、そんなに危ないんでしょうか。
見た目はまだ立ってるんですけど。
根元の腐食は強風時の倒壊につながるおそれがあります。
立っているように見えても支持部分まで確認しておきましょう。
空地や通路はなぜ管理状況まで点検するのか

私設道路が適正な利用状況にあるかどうかは、不測の事態を防ぐうえで見落とせない視点です。
私設道路が適正な利用状況にあるかどうかは、災害発生の原因となる可燃物の集積や通路等の管理状態に直結する問題です。
調査ではまず設計図書等で公道と私道の区別を確認したうえで、目視等により状況を確認します。
駐車場としての利用や資材の仮置きによって道路として使えなくなっていないか、可燃物の集積がないかを見ます。
あわせて路面に堆積した土砂やわだち、路肩の土砂崩壊の有無、空地・通路をそれ以外の用途に使用していないかという管理面も確認します。
普段の駐輪スペースくらいなら問題ないですよね。
どこからが障害物として指摘されるんでしょうか。
消防活動の通行に支障が出るかどうかがポイントです。
常態化した駐車や資材置きは早めに見直しておくと安心です。
舗装はなぜひび割れや水たまりを見過ごせないのか

舗装は車両の通行などで徐々に磨耗し、地盤沈下によってくぼみやひび割れを生じることがあります。
アスファルト舗装は目地がないので走行感に優れていますが、部分的にくぼんだり磨耗しやすいという性質があります。
アスファルト舗装はガソリンや油に侵されると劣化するため、漏れた油は放置せず拭き取っておく必要があるとされています。
コンクリート舗装は堅牢で耐久性に優れる一方、材料の性質上目地を取る必要があり、酸や火によっても劣化するので焚火などは避けるべきとされています。
調査は舗装面全般を目視等で確認し、特に舗装端部や目地部周辺は地盤沈下に伴う陥没や水勾配不良による水溜まりが生じやすいため、雨上がりに点検すると分かりやすいとされています。
駐車場の隅に水たまりができやすい場所があります。
これも指摘の対象になるんでしょうか。
水勾配の不備が原因になっていることが多いです。
雨上がりに一度様子を見ておくと判断しやすくなります。
屋上の出入口はなぜ施錠管理まで確認するのか

そのため出入口をどう管理しているかが、調査の重要な観点になります。
建物の屋上は犯罪や飛び降り、あるいは物を落とすといった問題が発生しやすい場所とされています。
すべての建物に屋上の閉鎖を強制することはできないため、開放するかどうかは建物ごとの管理方針に委ねられています。
調査ではまず屋上の管理方針(開放か閉鎖か)を建物管理者に確認したうえで、出入口の管理状況を目視等により確認します。
閉鎖している建物では出入口の錠の損傷の有無と施錠の状況、鍵の管理者を、開放している建物ではテレビによる監視や定期的な巡回、手すりの乗り越え防止など犯罪・事故防止の対策がとられているかを確認します。
うちは屋上を開放していて、鍵はかけていません。
それでも問題ないんでしょうか。
開放する場合は監視や巡回など何らかの対策が必要とされています。
手すりの乗り越え防止も含めて一度確認してみてください。
収納物の放置はなぜ防火シャッターの近くで問題になるのか

扉そのものが閉鎖できていても、周囲の状況によって本来の性能を発揮できないことがあります。
防火シャッターや防火戸が火災時に首尾よく閉鎖されても、扉自体が発する放射熱によって近接する可燃物が発火するおそれがあります。
段ボール箱や什器を防火戸の脇に置きっぱなしにしている例は、実務でもよく見られる指摘事項です。
特に倉庫や廊下の防火区画部分は、日常の荷物の仮置き場になりやすく、時間が経つほど収納物が増えていく傾向があります。
調査では目視により収納物の位置を確認し、防火シャッターや防火戸からは少なくとも1〜2メートルは離しておく必要があるとされています。
倉庫の防火シャッターの前に段ボールを積んでいました。
すぐにどかしたほうがいいですよね。
はい、放射熱で発火するおそれがあるのですぐの移動をおすすめします。
目安として1〜2メートルは離しておいてください。
よくある質問
まとめ
うちのビルも駐車場の看板の柱、今度の調査でしっかり見てもらいます!
収納物の位置も自分で確認してみます。
気になる箇所が見つかったら、無理をせず専門の調査員にご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第8条第1項(建築物の維持保全)
- 建築基準法第12条第1項(定期報告における調査義務)
- 建築基準法施行規則第5条第2項(調査の十分性、項目・方法・判定基準の位置づけ)
※本記事は建築基準法及び同施行規則の現行条文をもとに、特定建築物定期調査における任意調査項目の一般的な考え方を解説したものです。個別の建築物における劣化状況の判定や是正の要否は、実際に調査を行う建築士・建築物調査員の判断によります。具体的な点検・報告については所轄の特定行政庁または専門の調査機関にご確認ください。





