特定建築物定期調査の調査票には、屋上の煙突や外壁の看板・室外機といった工作物の項目もあります。
これらは建物本体とは別の材料や構造でできているため、劣化の進み方も点検の視点も異なります。
煙突は建築物に設ける型と独立して立つ型とで関係する規定が変わり、広告板や室外機は支持部材の腐食が落下事故に直結します。
煙突本体の接合部のひび割れや金物の腐食を放置すると、強風時や地震時の落下・倒壊につながります。
うちのビルの屋上に、古い煙突と大きな看板が両方あるんですが
これも定期調査で見られる場所なんでしょうか。
煙突と看板・室外機は、どちらも「その他」の調査項目に含まれます。
煙突は建物に付いているか独立しているかで見方が変わるので、順番に解説します。
独立した煙突というのは、工場にあるような煙突のことですか。
はい、高さ6メートルを超える独立煙突は建築基準法上の工作物として扱われます。
本体だけでなく点検用のはしごや金物まで含めて見ていきましょう。
- 建築物に設ける煙突は、屋上突出部の高さと建物との接合部のひび割れ・肌分かれを確認する
- 独立煙突は高さ6メートルを超えると建築基準法上の工作物として扱われ、本体と付帯金物を別々に点検する
- 煙突に付帯するはしご・タラップ・デッキ等の金物類は、緊結状況と錆の程度を確認する
- 外壁に緊結された広告板や空調室外機は機器本体と支持部材の両方で著しい錆・腐食がないかを見る
- これらはいずれも建築基準法第12条の定期調査の対象であり、目視や双眼鏡による確認が基本になる
▼

目次
建築物に設ける煙突はなぜ接合部のひび割れを見るのか

接合部が傷んだまま放置すると、地震時に折損・落下するおそれがあります。
煙突本体は建物本体と異なる揺れ方をするため、地震のたびに接合部へ力が集中しやすい部位です。
建築基準法施行令115条は、屋上突出部の高さや可燃材料からの離隔距離など、煙突そのものの構造を定めています。
経過年数や修繕履歴が分からない設備も多いため、設計図書とヒアリングで情報を集めてから現地の状況を確認するのが手順です。
煙突頂部は熱やガスの影響で劣化が進みやすく、寿命判定の目安になる部位でもあります。
うちの煙突、屋上に出ているところが少し傾いて見えるんですが大丈夫でしょうか。
接合部にひび割れがないか、まず双眼鏡で確認しましょう。
心配な場合は近くまで上がって触診することもできます。
建築物に設ける煙突はなぜはしごやタラップまで点検するのか

本体だけでなく、これらの金物も安全に関わる調査対象です。
点検用のはしごやタラップは、調査員自身がそこに乗って作業することもある設備です。
建物に付いている煙突であっても、高さが6メートルを超えれば独立煙突と同じ工作物の技術基準(施行令139条)も併せて適用されます。
錆が進んだ金物は緊結部分から外れるおそれがあるため、見た目の錆だけでなく取り付け状態も含めて確認します。
高所にある金物は地上からの双眼鏡での確認が基本ですが、疑わしい箇所は専門業者による近接調査を勧めます。
はしごが錆びているのは見た目で分かるんですが、それだけで是正が必要になるんですか。
著しい錆・腐食があれば是正の対象です。
緊結部分が緩んでいないかもあわせて確認しましょう。
独立煙突はなぜ建築物に設ける煙突と別扱いになるのか

これは独立煙突と呼ばれ、建築物とは異なる規定で扱われます。
建築基準法施行令138条は、高さ6メートルを超え建築物と関係なく設置されている煙突を工作物として指定しています。
用途や構造を問わず、独立して設置されているかどうかが建築物設置型との分かれ目です。
高さ16メートルを超える独立煙突は、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造又は鋼造とし、支線を要しない構造とすることが施行令139条で定められています。
支わくや支線が付いている場合は、それらも本体と一体の調査対象になります。
独立煙突というのは、うちみたいなオフィスビルには関係ない話ですよね。
特定建築物の敷地内に独立煙突があれば調査の対象に含まれます。
建物本体とは別に、本体と付帯金物を分けて見ていきます。
独立煙突の付帯金物はなぜ本体と別に点検するのか

本体の構造基準とは別に、金物そのものの状態も確認します。
独立煙突は建築物のような外壁に囲まれていないため、金物類が風雨に直接さらされ続けます。
建築基準法施行令139条は、煙突本体の構造だけでなく支線を要しない構造とする高さの基準も定めています。
支線がある場合は、その緊結状態や錆の程度も本体と同じ調査の対象です。
高い場所にある金物は、まず地上から双眼鏡等で確認し、異常が疑われる場合は専門業者による近接調査を検討します。
独立煙突は普段あまり見上げないので、劣化に気づきにくそうです。
そのとおりです。
定期調査のタイミングでまとめて確認しておくと安心です。
外壁の広告板や室外機はなぜ支持部材まで見るのか

本体だけでなく、それを支える金物の状態も落下事故に直結します。
広告板や室外機は外壁に取り付けられた金物で建物と緊結されており、金物が傷むと本体ごと落下する危険があります。
建築基準法施行令39条は、広告塔など建築物の屋外に取り付けるものが風圧や地震で脱落しないよう構造を定めています。
支持部材は隠ぺいされている場合も多いため、双眼鏡やファイバースコープ等を使い分けて確認します。
手の届く範囲はテストハンマーによる打診で、緊結不良や金物の腐食を直接確かめます。
うちの看板、そういえば取り付けてからかなり経っています。
機器本体だけでなく支持部材の錆もあわせて確認しましょう。
落下事故を防ぐには両方のチェックが欠かせません。
よくある質問
まとめ
煙突の本体だけでなく付帯金物まで見るとは思いませんでした。
次の調査でしっかり確認してもらいます!
屋外の工作物は支持部材の劣化が事故に直結します。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第1項・同法施行規則第5条第2項(e-Govで現行条文を確認)
- 建築基準法施行令第39条・第115条・第138条・第139条(e-Govで現行条文を確認)
※本記事は建築基準法及び同施行令の現行条文をもとに、煙突や外壁工作物に関する特定建築物定期調査の一般的な着眼点を解説したものです。個別の建築物における調査項目や判定は、設計図書及び現地の状況に応じて異なります。実際の調査・点検にあたっては、建築物調査員等の専門資格者にご確認ください。





