「うちのクロススクリーン、下に金属のプレートみたいなものが付いているんですが、あれは何ですか」——防火管理者から㈱防災屋によく寄せられる質問です。
人の通行に使う開口部に設ける耐火クロススクリーンには、閉鎖するときに人を挟み込まないための危害防止装置の設置が義務付けられています。
防火設備定期検査では、危害防止用連動中継器の配線から予備電源、座板感知部、そして実際の作動状況まで、5つの検査項目が定められています。
本記事では、耐火クロススクリーンの危害防止装置について、検査で実際に何を確認し、どこを見落としやすいのかをあわせて解説します。
うちの廊下のクロススクリーン、下端に金属のプレートが付いているんですが、あれも点検の対象なんですか。
今まで気にしたことがありませんでした。
はい、それはおそらく座板感知部です。
人の通行に使う耐火クロススクリーンに設置が義務付けられている危害防止装置の一部で、検査の対象になります。
座板にセンサーが入っているのは知っていましたが、予備電源まで検査すると初めて知りました。
停電のときも正常に動くんでしょうか。
はい、停電時には予備電源へ自動的に切り替わる仕組みになっています。
この予備電源も、劣化や容量不足がないか定期検査で確認しています。
- 人の通行の用に供する部分に設ける耐火クロススクリーンには危害防止装置の設置が義務付けられています。
- 危害防止用連動中継器の配線を確認する際は、感電防止のため電源を遮断してから行います。
- 予備電源は劣化・損傷の目視確認と、試験スイッチによる容量確認の両方が必要です。
- 座板感知部は人や物との接触で、カーテン部の降下を自動的に停止させます。
- 作動状況の検査では運動エネルギー10ジュール以下、停止距離5センチメートル以下などの基準で判定します。
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目次
危害防止用連動中継器の配線はどこを確認するのか

耐火クロススクリーンの危害防止装置の検査は、連動制御器や手動閉鎖装置からの作動信号を受け取る危害防止用連動中継器の配線確認から始めます。
感電のおそれがあるため、確認の際は電源を遮断してから行います。
危害防止用連動中継器は、危害防止装置全体の心臓部です。
連動制御器からの制御信号や手動閉鎖装置からの作動信号を受けて、自動閉鎖装置に電源を供給する役割を持ちます。
また、座板感知部が人や物に接触してカーテン部の降下を止めたあと、再び降下させて完全に閉鎖させる際にも、自動閉鎖装置を作動させる電源を供給します。
配線に劣化、損傷又は脱落があれば要是正と判定され、電線被覆の亀裂や端子の緩みによる抜けが典型的な事例です。
検査時は電源を遮断してから、目視で配線状態を確認します。
電源を切ってから点検するんですね。
点検中に火災が起きたら、逆に閉鎖できなくなったりしませんか。
点検は短時間で終えますのでご安心ください。
また停電時には予備電源が自動で働く仕組みなので、次の項目でご説明します。
予備電源はどんな劣化を見分けるのか

危害防止用連動中継器は停電時にも作動できるよう、予備電源を備えています。
ここでは、その予備電源に劣化や損傷がないかを確認します。
予備電源の劣化は、停電時の閉鎖不能に直結します。
危害防止用連動中継器や手動閉鎖装置には密閉型蓄電池が使われており、常時充電されていて、停電時には自動的に切り替わって機能を維持します。
熱による外装の膨張・変形や、端子まわりの腐食がないかを目視で確認します。
予備電源には寿命があるため、連動中継器や手動閉鎖装置に貼付された交換時期表示シールもあわせて確認すると、劣化の見落としを防げます。
表示された時期を過ぎている場合は、外観に異常がなくても交換を検討します。
うちの建物、そろそろ築15年になります。
交換時期のシールなんて見たことがないので、点検のときに確認してもらえますか。
はい、連動中継器の内部を確認する際にあわせて見つけられます。
表示時期を過ぎていれば、交換のご案内をいたします。
予備電源の容量はどう確かめるのか

外観に異常がなくても、蓄電池は使用年数を重ねると充電容量が落ちていきます。
ここでは、実際にスイッチを操作して容量が足りているかを確認します。
容量不足は、外観検査だけでは見つかりません。
連動中継器に備え付けられた予備電源試験スイッチを操作し、停電を模した状態で危害防止装置が正常に機能するかを確認します。
容量不足のまま放置すると、火災時にちょうど停電が重なった場合に、自動閉鎖装置が正しく作動しないおそれがあります。
試験スイッチの位置や操作方法は機種によって異なるため、事前にメーカーの取扱説明書を確認しておくと検査がスムーズです。
容量不足が確認された場合は、予備電源そのものの交換で改善します。
スイッチひとつでそこまで分かるんですね。
自分たちでも日常的に確認できることはありますか。
試験スイッチの操作は資格を持つ検査員が行う項目です。
気になる場合は、交換時期表示シールの時期だけ日常的に見ておくとよいでしょう。
座板感知部はどんな仕組みで人を守るのか

座板感知部は、カーテン部の下端に取り付けられ、人や物との接触を感知する部品です。
ここでは、その劣化・損傷の有無と、実際に作動するかどうかを確認します。
座板感知部は、閉鎖中の人を守る最後の砦です。
座板感知部に人や物が接触すると、開閉機のブレーキを制御する装置に信号が出力され、自重降下中のカーテン部を自動的に停止させます。
人が移動し、又は物が除かれると座板感知部は復帰し、停止の状態が解除されて再び降下します。
検査では座板が床上1,500mmの位置にある状態で座板感知部を作動させ、カーテン部が確実に停止するかを確認し、異常があれば要是正と判定します。
検査中は周囲に人や物がないことを確認し、「検査中 立入禁止」の表示や安全柵を設けたうえで実施します。
挟まれを防ぐためのセンサーだったんですね。
もし感知部が壊れていて止まらなかったら、どうなるんでしょうか。
その場合は要是正と判定され、速やかな補修が必要になります。
実際の作動確認は、次の項目であわせて行います。
作動状況は何を基準に判定するのか

最後に、危害防止装置全体が正しく作動するかどうかを、数値の基準に沿って確認します。
この基準は、実際に起きた事故をきっかけに設けられたものです。
この数値基準は、平成16年の事故を教訓に生まれました。
平成16年6月に防火設備に児童が挟まれる重大事故が発生したことを契機に、平成17年の建築基準法施行令改正で、閉鎖又は作動をするに際して周囲の人の安全を確保できるものであることという要件が加わりました。
これを受けて昭和48年建設省告示第2563号が改正され、カーテン部の質量に閉鎖速度の二乗を乗じた運動エネルギーが10ジュール以下であること、又は閉鎖力が150ニュートン以下若しくは停止距離が5センチメートル以下であることという具体的な基準が定められました。
検査では、閉鎖時間をストップウォッチ等で測定して運動エネルギーを算出するとともに、巻取り式では座板感知部を作動させて停止距離を、バランス式ではプッシュプルゲージで閉鎖力を測定し、その後カーテン部が正しく再降下するかも確認します。
なお、バランス式は挟まれ時の閉鎖力があらかじめ150ニュートン以下となるよう設計されているため、座板感知部のように接触を感知して一旦止まる危害防止装置そのものを備えていない製品もあり、この違いを知らずに巻取り式と同じ基準で検査してしまう見落としに注意します。
巻取り式とバランス式で、仕組みが違うんですね。
うちのクロススクリーンがどちらのタイプか、どう見分ければよいですか。
収納ケースの位置やカーテン部の張り方で見分けられますが、判断が難しい場合もあります。
検査のときに一緒に確認いたしますので、ご安心ください。
よくある質問
まとめ
危害防止装置にも、配線から予備電源、座板感知部までたくさんの確認ポイントがあるんですね。
次の点検のときは、交換時期表示シールだけでも自分で確認してみます!
そのひと手間が、思わぬ事故を防ぐことにつながります。
危害防止装置の詳しい点検や後付けのご相談は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第19項
- 昭和48年建設省告示第2563号(防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件)
- 平成17年国土交通省告示第1392号(昭和48年建設省告示第2563号の一部改正、危害防止機構に関する基準の追加)
※本記事は公表されている建築基準法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における検査項目の判定は、実際の検査結果や特定行政庁の指導によって異なる場合があります。詳細は検査資格者または所轄の特定行政庁にご確認ください。





