特定建築物定期調査の対象は建物本体だけではありません。敷地及び地盤の区分にも、地盤沈下や排水、塀・擁壁の劣化といった検査項目が定められています。
敷地に埋設された配管や排水設備は目立たないため、不同沈下が起きても気づかれにくい部分です。
組積造の塀や補強コンクリートブロック造の塀、擁壁は、耐震基準に適合しているかどうかと経年劣化の両面から確認する必要があります。
この記事では、地盤沈下から敷地内の排水、塀の耐震基準、擁壁の劣化と水抜きパイプまで、敷地まわりの5つの検査項目を解説します。
敷地の隅にある古いコンクリートブロックの塀、少しひび割れが気になっています。
これも今回の調査で見てもらえるんでしょうか。
はい、塀や擁壁は敷地及び地盤の区分の検査項目です。
組積造の塀や補強コンクリートブロック造の塀は、耐震基準に適合しているかも確認します。
塀だけじゃなくて、地面の方も見てもらえるんですか。
実は駐車場の隅が少し沈んでいる気がするんです。
地盤沈下による不陸や敷地内の排水も調査項目に含まれます。
地盤沈下から塀・擁壁の水抜きパイプまで、5つの視点を順番に見ていきましょう。
- 地盤沈下等による不陸・傾斜の状況は、埋設配管や排水設備への影響も踏まえて確認します。
- 敷地内の排水は、下水管や下水溝の詰まりと勾配の異常を確認します。
- 組積造の塀・補強コンクリートブロック造の塀は、令第61条・令第62条の8の耐震基準に適合しているかを確認します。
- 擁壁の劣化及び損傷は、著しいひび割れや傾斜、目地部からの土砂流出の有無で判定します。
- 擁壁の水抜きパイプは、詰まりの有無を目視や鉄筋棒等の挿入によって確認します。
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目次
地盤沈下による不陸はなぜ調査項目になるのか

これらの機能や環境に影響が及ばないよう、地盤の不陸や傾斜の有無を確認する必要があります。
敷地には電気・ガス・給水などの引込配管や、汚水・雨水・雑排水の排水管、浄化槽や貯油槽が設置されている場合があります。
通路や排水溝、マンホール等の周囲は一旦掘り起こした土で埋め戻されているため、長い年月の間に埋戻土が締め固められ、圧密を起こして沈下することがあります。
不陸の状態によっては、これらの機能に影響を与え、建築物の使用に支障をきたすおそれがあります。
調査では隣接地との境界を図面及び境界石等により事前に確認したうえで、敷地の不用意な掘削による配管の折損を防ぐため、地中に何が埋まっているかも把握しておく必要があります。
敷地の隅が少し沈んでいる気がするんですが、見ただけじゃ分からないものなんでしょうか。
境界杭のあたりも心配です。
境界石や図面で敷地の境界を確認したうえで、埋設物の有無も含めて調べます。
気になる箇所は遠慮なくお伝えください。
敷地内の排水はなぜ勾配まで確認するのか

これらの排水設備が正しく機能しているかどうかも、調査の対象です。
敷地内の下水管や下水溝は雨水及び汚水を排水し、常に良好な状態に維持する役割を持ちます。
排水管は一定の勾配で配置されていますが、車などの重量物が上に載ったりすると勾配が変化し、流れが悪くなったり溢れの原因になります。
定期的な清掃を行わないと、管内の詰まりによって汚水が溢れることもあるとされています。
調査で流れが悪いことが分かった場合は、勾配や配管のたわみの有無を調べ、異常があれば布設し直す必要があります。
排水溝の周りに土が溜まっているのを見たことがあります。
あれもチェックしてもらえるんでしょうか。
はい、路面に堆積した土砂や勾配の異常も確認します。
流れが悪いと感じたら早めにご相談ください。
塀はどんな耐震基準を満たす必要があるのか

そのため高さや壁の厚さ、控壁、鉄筋の配置まで細かく基準が定められています。
組積造のへいは、令第61条により高さ1.2メートル以下、壁の厚さは壁頂までの垂直距離の10分の1以上、長さ4メートル以下ごとに控壁を設けることなどが定められています。
補強コンクリートブロック造の塀は、令第62条の8により高さ2.2メートル以下、壁の厚さ15センチメートル以上、径9ミリメートル以上の鉄筋を縦横に配置することなどが定められています。
調査では設計図書等で基礎寸法や配筋といった見え隠れ部分を把握したうえで、材料間の目地にひび割れが生じていないかに注意して目視及び測定等により確認します。
高さ1.2メートル以下の補強コンクリートブロック造の塀は、一部の規定が適用除外になる点にも注意が必要です。
うちの塀、控壁が全然無いように見えるんですが、それだけで問題になるんでしょうか。
古い塀なので少し心配です。
塀の高さや厚さによって必要な控壁の有無は変わります。
設計図書が無い場合は現地で寸法を測って確認します。
擁壁のひび割れや傾斜はどう判定するのか

経年劣化によるひび割れや傾斜が進むと、擁壁そのものの安全性が損なわれます。
建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならないと定められています。
工作物としての擁壁は高さ2メートルを超えるものが令第142条の対象で、鉄筋コンクリート造等の腐らない材料を用いた構造とすることなどが求められます。
調査は目視等により全面にわたって行い、著しい傾斜若しくはひび割れがあること、又は目地部より土砂が流出していることを要是正の基準として確認します。
コンクリートブロックの擁壁や石造擁壁のいずれも、目地部のひび割れが劣化のサインとして現れやすいとされています。
擁壁の目地から少し土がこぼれているのを見つけました。
これは危険な状態なんでしょうか。
目地部からの土砂流出は要是正の判定基準のひとつです。
早めに専門家へ相談することをおすすめします。
擁壁の水抜きパイプはなぜ詰まりを確認するのか

このパイプが詰まると、擁壁の裏側に水圧が溜まり、崩壊につながるおそれがあります。
擁壁の裏面の排水を良くするためには水抜き穴を設け、その周辺に砂利その他これに類するものを詰めることが令第142条で定められています。
水抜きパイプが土砂やコンクリートで詰まると、擁壁の裏側に水圧が溜まり、擁壁の破壊や転倒を招くおそれがあります。
調査では必要に応じて双眼鏡等を使用して目視等により確認するとともに、手の届く範囲は鉄筋棒等を挿入して詰まりの有無を確かめます。
水抜きパイプの詰まりが確認された場合は、速やかな清掃や補修が必要とされています。
水抜きパイプの穴、小さいから見落としそうです。
普段の管理でも気を付けたほうがいいんでしょうか。
はい、雨の後に水が出ているか確認するだけでも参考になります。
詰まりに気づいたら早めの清掃をおすすめします。
よくある質問
まとめ
うちの塀と擁壁、今度の調査でしっかり見てもらいます!
水抜きパイプの詰まりも自分で確認してみます。
気になる箇所が見つかったら、無理をせず専門の調査員にご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第8条第1項(建築物の維持保全)
- 建築基準法第12条第1項(定期報告における調査義務)
- 建築基準法第19条第3項・第4項(敷地内の排水、擁壁の設置)
- 建築基準法施行令第61条(組積造のへい)・第62条の8(塀)
- 建築基準法施行令第142条(擁壁)
- 建築基準法施行規則第5条第2項(調査の十分性、項目・方法・判定基準の位置づけ)
※本記事は建築基準法及び同施行令・同施行規則の現行条文をもとに、特定建築物定期調査における敷地及び地盤の検査項目の一般的な考え方を解説したものです。個別の建築物における劣化状況の判定や是正の要否は、実際に調査を行う建築士・建築物調査員の判断によります。具体的な点検・報告については所轄の特定行政庁または専門の調査機関にご確認ください。





