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特定建築物定期調査の階段はどこを見るのか|直通階段の設置から手すりの劣化まで5つの視点で解説

特定建築物定期調査で階段の幅を測定する女性調査員

特定建築物定期調査の調査票には、階段に関する項目が数多く並んでいます。
直通階段の設置から幅の確保、手すり、物品の放置、各部の劣化まで、性格の異なる5つの視点から確認します。
いずれも建築基準法施行令が定める避難施設としての基準を根拠にしています。
本記事では、なぜこの項目を見るのか、どう判定するのか、実務で見落としやすい点を5つの視点で解説します

うちのビル、階段の点検で何を見られるのか正直よく分かっていません。
普段は避難に使わない階段もあるので、なおさらです。

階段は直通階段の設置から手すり、物品の放置、劣化まで5つの視点で確認します。
順番に見ていきましょう。

屋外の非常階段は鉄骨がむき出しになっていて、正直サビが気になっています。
これも点検の対象になるんですね。

はい、屋外階段は劣化のスピードが特に速い部分です。
今回は5つの視点で確認ポイントを整理します。

この記事の結論
  • 直通階段は建物の階数や用途に応じて避難階段・特別避難階段としての構造まで求められます。
  • 階段の幅は令第23条の表が定める寸法と、物品販売店舗なら床面積に応じた合計幅で判定します。
  • 階段の手すりは平成12年の改正で設置が義務化され、側壁の有無にかかわらず必要です。
  • 階段室内部からの出火や可燃物の放置は防火の前提を崩すため、要是正の対象です。
  • 屋外階段は木造が原則禁止で、鋼材の錆や木材の腐朽を重点的に確認します。

特定建築物定期調査で確認する階段5つの視点を示すインフォグラフィック

直通階段はどんな基準で避難階段や特別避難階段に区分されるのか

階段の避難階段としての構造を確認する調査員
直通階段の設置状況を調べるときは、階段の位置や数を数えるだけでは足りません。
階数や用途に応じて、避難階段や特別避難階段としての構造まで備えているかを設計図書と現況で照合します。
5階以上や地下2階以下に通じる直通階段は、避難階段や特別避難階段としての構造まで必要になるか。
令第122条により、建築物の5階以上の階又は地下2階以下の階に通ずる直通階段は、原則として避難階段又は特別避難階段としなければならない。15階以上の階又は地下3階以下の階に通ずるものは、特別避難階段とする必要がある。
直通階段は避難階段の要件を満たして初めて安全といえます
劇場や物品販売店舗など特定の用途の階では、令第121条により2以上の直通階段の設置が義務付けられています。
物品販売業を営む店舗で床面積が1,500平方メートルを超えると、3階以上の階と屋上広場に通ずる直通階段は避難階段又は特別避難階段としなければなりません。
用途変更や増築によって、新たにこの基準に該当してしまう建物があります。
調査では、階段室の扉の防火設備や区画の状況まで含めて、令第123条が定める構造要件との適合を確認します。

直通階段の数を数えただけでは、避難階段の基準まで満たしているか分からないんですね。

はい、扉の防火設備や区画まで含めて確認します。
設計図書と現地の両方を見比べるのがポイントです。

階段の幅はどんな数値で合否が決まるのか

鋼製巻尺で階段の幅を測定する調査員
階段の幅を実測するときは、令第23条の表が定める数値と比較します。
物品販売業を営む店舗であれば、令第124条が定める合計幅の基準もあわせて確認します。
階段の幅を測定するとき、どの数値と比べればよいか。
階段や踊場の幅、蹴上げ、踏面の寸法は令第23条の表による。物品販売業を営む店舗の避難階段等は、床面積100平方メートルにつき60cmの割合で計算した幅の合計が必要になる。
階段の幅は実測した数値がそのまま合否を左右します
手すりの出が10cm以内であれば、階段の幅の算定から手すりの分を差し引かなくてよいとされています。
高さが3m又は4mを超える階段には、令第24条により踊場を設ける必要があります。
テナント変更で物品販売店舗に用途が変わると、必要な階段幅の合計が跳ね上がることがあります。
調査では鋼製巻尺で現況を実測し、設計図書の寸法と食い違いがないかを確認します。

うちは去年、テナントが雑貨屋さんに変わったんですが、階段の幅も見直しが必要ですか。

物品販売業を営む店舗になると、必要な階段幅の合計が変わることがあります。
床面積を確認して調査員に伝えておきましょう。

階段の手すりはいつから設置が義務化されたのか

後付けされた階段の手すりの状態を確認する調査員
側壁があれば手すりは不要という理解は、今は通用しません。
平成12年の改正によって、階段には側壁の有無にかかわらず手すりの設置が義務化されました。
側壁が階段の両側にある場合、手すりは設置しなくてもよいか。
令第25条第1項により、階段には手すりを設けなければならない。手すりが設けられた側を除く両側には、側壁又はこれに代わるものを設ける必要がある。
手すりは平成12年の改正で明確に義務化された設備です
階段の幅が3mを超える場合は、けあげ15cm以下かつ踏面30cm以上の階段を除き、中間にも手すりが必要です。
後付けの手すりは、出が10cm以内であれば階段幅の算定に影響しません。
木製の手すりは、腐朽だけでなくささくれの有無も確認しておくと、日常のけがの予防にもつながります。
調査ではぐらつきや変形の有無を目視と触診で確認します。

うちの階段、両側に壁があるので手すりはいらないと思っていました。

平成12年の改正以降は、側壁があっても手すりが必要です。
後付けする場合は出の寸法にも注意しましょう。

階段室に荷物を置いてはいけないのはなぜか

階段室に放置された段ボール箱を指摘する調査員
階段室の内部からの出火は、防火の前提を根底から覆します。
避難歩行の邪魔になる物品の放置も、同じように要是正の対象になります。
階段室に段ボール箱などを一時的に置くことは、避難上の問題になるか。
通行に支障となる物品が放置されていることは要是正となる。可燃物であれば、階段室内部からの出火という防火上最も避けるべき事態につながるおそれがある。
階段室からの出火は防火計画そのものを無意味にします
日常は使われず非常時のみ使用される階段ほど、管理が行き届かず物置に転用されやすい傾向があります。
段ボール箱や自転車などの避難通路をふさぐ物品は、避難時間の遅れに直結します。
廊下や出入口と同じ考え方が、階段にもそのまま当てはまります。
調査では目視で放置物の有無を確認し、可燃物であれば特に重点的に指摘します。

普段使わない非常階段に、季節用品を少しだけ置いているのですが問題ありますか。

使用頻度が低い階段ほど物置に転用されやすいので注意が必要です。
可燃物であれば早めに撤去しましょう。

屋外階段はなぜ劣化のスピードが速いのか

屋外鉄骨階段の錆をテストハンマーで打診する調査員
屋外階段は風雨にさらされるため、屋内階段より劣化や損傷の頻度が高くなります。
構造にも、木造が原則禁止されるなど屋内階段とは異なる基準があります。
屋外に設ける直通階段は、どんな構造にしてはいけないか。
令第121条の2により、屋外に設ける直通階段は木造としてはならない。ただし、有効な防腐措置を講じた準耐火構造は除かれる。
屋外階段は劣化を前提に点検の頻度を上げる必要があります
鉄骨階段はを放置すると構造的に脆弱になるため、ボルトの異常や接合部の状態もあわせて確認します。
木材は水分や温度の条件によっては数か月で急速に腐朽が進む場合があり、点検口がなければドライバー等による触診も行います。
モルタル等の仕上げ材のひび割れ、防水層の損傷、著しい傾斜や揺れも要是正の対象です。
屋根のない屋外階段ほど、次回調査までの劣化の進み方を見込んで早めの補修を検討してください。

非常階段が鉄骨で、ところどころ赤くサビているのが気になっています。

を放置すると構造的に弱くなるおそれがあります。
次の調査までに補修を検討しておきましょう。

よくある質問

Q階段の調査は目視だけで足りるのでしょうか?
A直通階段の設置状況や幅は設計図書との突き合わせが基本で、鋼製巻尺による実測もあわせて行います。手すりや劣化の確認は目視や触診が中心ですが、点検口がない部材は必要に応じてドライバー等で触診します。
Qうちのビルは3階建てなのですが、直通階段は1つしかありません。違反になりますか?
A用途や床面積によっては、令第121条が定める2以上の直通階段の設置義務そのものが適用されない場合があります。まずは建物の用途と各階の床面積を確認し、該当するかどうかを調査員に判断してもらいましょう。
Q手すりの後付け工事をすると、階段の有効幅が狭くなってしまいませんか?
A手すりの出が10cm以内であれば、階段幅の算定上ないものとみなされます。10cmを超える手すりを付ける場合は、あらかじめ有効幅への影響を確認してください。
Q屋外階段の錆は、どの程度から補修が必要になりますか?
A著しい錆や腐食があり安全上支障が生じるおそれがある場合は要是正となります。目視で錆が広がっているのが分かる段階で、専門業者による点検を依頼するのが安全です。

まとめ

直通階段は階数や用途に応じて避難階段・特別避難階段としての構造まで求められる
劇場や物品販売店舗など特定の用途の階には令第121条により2以上の直通階段が必要
階段の幅は令第23条の表が定める寸法と、物品販売店舗なら合計幅の基準で判定する
階段の手すりは平成12年の改正で側壁の有無にかかわらず義務化された
手すりの出が10cm以内なら階段幅の算定に影響しない
階段室内部からの出火や可燃物の放置は防火の前提を崩すため要是正の対象
屋外階段は木造が原則禁止で、鋼材の錆や木材の腐朽を重点的に確認する

うちのビルも、まず令第23条の表と見比べて階段の幅を確認してみます!

階段は避難施設の要となる部分です。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第12条第1項・第8条第1項(e-Govで現行条文を確認)
  • 建築基準法施行令第23条・第24条・第25条(階段及び踊場の幅、蹴上げ・踏面の寸法、手すり。e-Govで現行条文を確認)
  • 建築基準法施行令第120条・第121条・第121条の2・第122条・第123条・第124条(直通階段の設置、避難階段・特別避難階段の設置及び構造、物品販売業を営む店舗における幅。e-Govで現行条文を確認)
  • 建築基準法施行規則第5条第2項(e-Govで現行条文を確認)
  • 平成20年国土交通省告示第282号別表1(調査項目・方法・判定基準)

※本記事は建築基準法・同施行令の現行条文をもとに、階段(直通階段の設置・幅の確保・手すり・物品の放置・各部の劣化及び損傷)に関する定期調査の一般的な着眼点を解説したものです。個別の建築物における調査項目や判定は、設計図書及び現地の状況に応じて異なります。実際の調査・点検にあたっては、建築物調査員等の専門資格者にご確認ください。

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