受水槽や高置水槽は、ふだん建物の裏側や屋上に隠れていて、防火管理者の目に触れる機会が少ない設備です。
建築設備定期検査基準書では、これらは「飲料水の配管設備」として、給水タンク等・給水ポンプ・給湯設備の10の検査事項に整理されています。
今回はタンクの置き場所から給水ポンプの運転、給湯設備の耐震固定まで、実務で見落としやすい10のチェックポイントを解説します。
蛇口をひねれば当たり前に出てくる水も、タンクや配管の状態しだいで安全性が変わります。
受水槽の点検って、水質検査だけをしているのかと思っていました。
いえ、タンクの置き場所や強度、給水ポンプの運転音まで確認する検査があるんです。
建築基準法にもとづく検査ですよ。
タンクの置き場所にまで基準があるんですか。
はい、保守点検のためのスペースが確保されているかどうかも検査の対象です。
順番に見ていきましょう。
- 給水タンク等は建築物の躯体と兼用しない独立した構造とし、周囲に保守点検のためのスペースを確保することが必要です。
- 通気管・水抜き管・オーバーフロー管等の付属管はほこりその他衛生上有害なものが入らない構造で有効に設けます。
- 金属製のタンクには衛生上支障のないよう有効なさび止めの措置を講じ、本体からの漏水がないか確認します。
- 給水用圧力タンクには安全弁や圧力計等の安全装置を設け、規定の圧力で作動することを確かめます。
- 給湯設備やガス湯沸器は耐震固定の状況やガスコンロの直上を避けた設置位置まで確認します。
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目次
受水槽や高置水槽はどこに設置すればよいのか

ここが崩れていると、水質以前の問題になります。
昭和50年建設省告示第1597号は、建物内部・屋上・最下階の床下に設ける給水タンク等について、外部から天井・底・周壁の保守点検を容易かつ安全に行えるよう設けることを求めています。
実務では、周囲・下面でおおむね60cm以上、上部でおおむね100cm以上の点検スペースが目安とされ、屋上の高置タンクでは転落防止の手すりや安全柵の有無もあわせて見ます。
あわせて、通気管・水抜き管・オーバーフロー管等の付属管が衛生上有害なものが入らない構造で有効に設けられているかを確認し、マンホールは直径60cm以上の円が内接する大きさが原則です。
浸水のおそれがある場所にタンクを置く場合は、浸水を検知して警報する装置などの対策も欠かせません。
タンクの周りにあんなに広いスペースが必要だったなんて知りませんでした。
はい、点検に人が入れない置き方は、それだけで指摘の対象になりますよ。
給水タンクの腐食や圧力タンクの安全装置はどう判定するのか

あわせて、圧力タンクの安全装置が働くかどうかも確認します。
施行令第129条の2の4第2項第五号は、給水タンク及び貯水タンクについて、ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造とし、金属製のものには有効なさび止めの措置を講ずることを求めています。
鋼板製のタンクは内外面の防食塗装、ステンレス製でも水面上部の気相部で塩素が濃縮して腐食することがあるため、その部分の状態もあわせて見ます。
タンク本体からの漏水があれば、それだけで是正の対象です。
圧力タンクには同条第1項第四号により有効な安全装置を設けることが求められ、安全弁・圧力計・圧力スイッチ等が規定の圧力で作動するかを確認します。
うちのタンク、古い鋼板製なんですが、塗装がはがれていたら即アウトなんでしょうか。
程度によりますが、腐食が進んでいれば是正の対象になるので早めの補修をおすすめしています。
給水ポンプの運転音やタンクの取付けはどこを確認するのか

ここでは運転中の状態と、タンク・ポンプの固定状況を確認します。
給水ポンプは運転中の異音・振動に加え、圧力計や電流計の指示値が仕様どおりかを確認し、定格水圧が出ているかを見ます。
ポンプ停止時に配管が振動するウォーターハンマーが生じていないかもあわせて確認します。
取付けの状況では、平成12年建設省告示第1388号にもとづき、タンクやポンプ、制御盤の支持構造部及び緊結金物に腐食・腐朽のおそれがないか、アンカーボルトが埋め込まれたコンクリート基礎に劣化やき裂がないかを確認します。
屋上から突出する給水タンク等は、支持構造部を建築物の構造耐力上主要な部分に緊結することが同告示第2で定められています。
ポンプの音なんて、正常かどうかの判断が難しそうです。
普段の運転音を知っておくと、わずかな変化にも気づきやすくなりますよ。
タンク内部に藻や異物がないかはなぜ確認するのか

最後にタンクの中そのものを覗いて確認します。
タンク内に藻やほこりなど衛生上有害なものが見つかれば是正の対象です。
定期的な清掃を怠ったり、防虫網が損傷していたりすると、こうした異物が入り込みやすくなります。
古いFRP製のタンクを屋外に設置している場合、日光が透過して内部で藻が増殖することがあるため、遮光性の劣化もあわせて見ます。
清掃は年に1回以上の頻度で行うことが実務上の目安とされています。
タンクの中まで見るんですね、水質検査とは別物なんですか。
はい、内部の異物の有無は今回の定期検査の話で、水質そのものはまた別の制度で確認されます。
給湯設備やガス湯沸器の取付けはどこを見るのか

ガスを使う湯沸器は、設置場所そのものにも注意が必要です。
平成12年建設省告示第1388号第5により、給湯設備は風圧・土圧・水圧のほか地震その他の震動及び衝撃に対して安全上支障のない構造とすることが求められ、満水時の総質量が15kgを超えるものは転倒・移動しても人が危害を受けないよう壁や囲いを設ける等の措置が必要です。
ガス湯沸器では、これに加えて引火性危険物のある場所や、燃焼廃ガスが上昇する位置(ガスコンロの直上など)に取り付けられていないかも確認します。
最後に給湯設備本体からの腐食や漏水がないかを目視で確認し、機械室の湯沸器だけでなく各住戸のガス給湯器や電気温水器も対象になります。
ガスコンロの真上に湯沸器を設置している例は、実務でも見落としやすい落とし穴です。
ガス湯沸器の位置まで細かく決まっているんですね。
コンロの真上は避けるなど、設置段階から気をつけたいポイントです。
よくある質問
まとめ
タンクの置き場所から給湯設備の耐震固定まで、見るべきポイントがよく分かりました。
受水槽や高置水槽は、日ごろ目にする機会が少ない分だけ見落としが起きやすい設備です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第129条の2の4(e-Gov法令検索)
- 昭和50年建設省告示第1597号 第1(飲料水の配管設備の構造)
- 平成12年建設省告示第1388号 第1・第2・第5(建築設備の構造耐力上の安全に関する基準)
- 平成20年国土交通省告示第285号 別記第四号(給水設備及び排水設備の検査結果表)
※本記事は、建築基準法・同施行令・関係告示に基づき、給水タンク等・給水ポンプ・給湯設備に関する定期検査における一般的な検査事項を解説したものです。建築物の構造や設備の仕様によって具体的な確認方法は異なる場合があります。個別の判定は所轄の特定行政庁又は建築設備検査員にご確認ください。





