BLOG

外壁や塀が防火設備とみなされるのはなぜか|建築基準法施行令が定める遮炎性能20分間の基準を解説

点検員が防火戸の銘板を確認している様子

防火戸やシャッターだけが防火設備だと考えていませんか。
建築基準法施行令は、敷地境界の近くにある外壁や塀までも防火設備とみなすことがあります。
防火設備と呼べるかどうかには、火炎を20分間出さないという技術的な基準も定められています。
防火区画に使う場合はこの基準だけでは足りず、1時間の性能を持つ特定防火設備が必要になります。

うちの建物、境界のすぐそばに古い塀があるんです。
これも防火設備として扱われるんですか。

はい、条件を満たせばその塀も建築基準法施行令上の防火設備とみなされます。
まずは条文から確認していきましょう。

防火設備といえば防火戸のイメージしかありませんでした。
塀まで対象になるとは知りませんでした。

防火戸やドレンチャーだけでなく、境界線近くの外壁や塀も対象になり得ます。
技術的な基準と合わせて順番に見ていきます。

この記事の結論
  • 建築基準法施行令第109条第1項は、防火戸やドレンチャーその他火炎を遮る設備を防火設備と定めています
  • 隣地境界線や道路中心線に近い外壁・袖壁・塀も、一定の距離要件を満たせば防火設備とみなされます。
  • 防火設備と呼べる技術的基準は、加熱開始後20分間火炎を出さないことです
  • 防火区画に使う設備は、より高い性能を持つ特定防火設備(1時間)でなければなりません。
  • 普通の防火設備をそのまま防火区画に転用すると、基準を満たさないことがあります

外壁や塀が防火設備とみなされる基準を示した図解

防火設備と呼べるのはどんな設備なのか

防火戸とドレンチャーが設けられた建物
建築基準法にはさまざまな場面で「防火設備」という言葉が登場します。
まずはこの防火設備が具体的に何を指すのか、政令の条文から確認します。
(建築基準法施行令第109条第1項)法第2条第9号の2ロ、法第12条第1項、法第21条第2項、法第27条第1項(略)、法第53条第3項第1号イ及び法第61条第1項の政令で定める防火設備は、防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備とする。
防火設備とは、防火戸やドレンチャーなど火炎を遮る設備の総称です。
条文が引用する法律の各条項は、防火設備の設置を求める根拠規定にあたります。
たとえば延焼のおそれのある部分の開口部や、防火区画の開口部などに設けられます。
「防火戸」という名前が付いていなくても、火炎を遮る機能を持つ設備であれば防火設備に含まれます。
この定義を押さえておくと、次に説明する「みなし規定」も理解しやすくなります。

ドレンチャーという設備は聞いたことがありますが、詳しくは知りませんでした。
これも防火設備なんですね。

はい、水幕を作って火炎を遮る設備で、政令上は防火戸と同じ防火設備の一種です。
次は防火設備の範囲がどこまで広がるかを見てみましょう。

外壁や塀も防火設備とみなされることがあるのか

敷地境界の近くにある塀と建物の開口部
防火設備は戸や幕のような「もの」だけとは限りません。
条文には、外壁や塀そのものを防火設備とみなす規定もあります。
(建築基準法施行令第109条第2項)隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の2以上の建築物(延べ面積の合計が500平方メートル以内の建築物は、1の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線のあらゆる部分で、開口部から1階にあつては3メートル以下、2階以上にあつては5メートル以下の距離にあるものと当該開口部とを遮る外壁、袖壁、塀その他これらに類するものは、前項の防火設備とみなす。
境界線の近くにある外壁や塀が、開口部をふさぐ位置にあれば防火設備とみなされます。
みなされる距離は1階の開口部で3メートル以下、2階以上の開口部で5メートル以下です。
隣地境界線だけでなく、道路中心線や同一敷地内の別棟との間の中心線も基準になります。
袖壁や塀のように防火戸の形をしていない部材でも、位置と距離の要件を満たせば防火設備として扱われます。
建物の配置計画や外構の変更を検討するときは、この「みなし規定」を見落とさないようにします。

外構で塀を作り替える予定があるんですが、これも関係するんですか。

はい、境界からの距離が近い塀はみなし防火設備として機能していることがあります。
撤去や造り替えの前に位置関係を確認しましょう。

防火設備と呼べる技術的基準は何か

防火戸に火が当たる断面と経過時間を示す時計
防火戸であれ、みなし規定による外壁や塀であれ、防火設備と呼ぶには技術的な基準を満たす必要があります。
その基準は何分間、何を防げばよいと定めているのでしょうか。
(建築基準法施行令第109条の2)法第2条第9号の2ロの政令で定める技術的基準は、防火設備に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものであることとする。
防火設備の技術的基準は、加熱開始後20分間、反対側の面に火炎を出さないことです。
この性能は「遮炎性能」と呼ばれ、防火戸に限らずドレンチャーやみなし規定の外壁・塀にも共通して求められます。
国土交通大臣が定めた構造方法か、大臣認定を受けた構造であることが前提になります。
20分間という時間は、初期消火や避難にかかる時間を踏まえて設定された基準です。
自作の間仕切りや簡易な塀を後から設けただけでは、この性能を満たしているとは限りません。

20分間、というのが具体的な数字なんですね。
もっと長い時間かと思っていました。

この20分間はあくまで防火設備としての基準です。
場所によってはもっと高い性能が必要になるので、続けて説明します。

防火設備と特定防火設備はどう違うのか

薄い戸と厚い戸の断面比較
防火区画の説明で「特定防火設備」という言葉を見たことがあるかもしれません。
これは今まで説明してきた防火設備と、どう違うのでしょうか。
(建築基準法施行令第112条第1項かっこ書き)特定防火設備(第109条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。)
特定防火設備は、防火設備と同じ第109条の設備でありながら、加熱開始後1時間火炎を出さない、より高い性能を求められます。
延べ面積が1,500平方メートルを超える建築物などで求められる防火区画は、この特定防火設備か1時間準耐火基準の床・壁で仕切らなければなりません。
つまり防火設備は20分特定防火設備は1時間という、同じ防火設備の中でも性能の等級が分かれています。
防火区画の開口部に、20分基準の防火戸をそのまま設置しても、区画としての性能は満たせません。
図面や製品を選ぶときは、どちらの基準を満たす製品なのかを必ず確認します。

うちの防火戸、この前検査でシールを見たら「特定」と書いてありました。
普通の防火戸とは違うということですか。

はい、特定防火設備は1時間の遮炎性能を持つ上位の防火設備です。
防火区画に使われているならその表示で正しいです。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員が防火戸の銘板を確認している様子
防火設備と特定防火設備の違いが分かったところで、実務でどこを確認すればよいかを整理します。
自分の建物に当てはめて、順番にチェックしてみてください。
  • 敷地境界の近くにある外壁・袖壁・塀が、開口部から1階3メートル以下・2階以上5メートル以下の位置にないか確認する
  • 該当する外壁や塀を撤去・造り替えする計画がある場合は、事前に位置関係を確認する
  • 設置されている防火戸やシャッターの銘板・認定表示で、防火設備か特定防火設備かを確認する
  • 防火区画の開口部には特定防火設備(1時間)が使われているかを確認する
  • 不明な点があれば設計図書や確認申請の記録を確認し、所轄の建築主事にも相談する
手順はまず自分の建物のどこに「みなし防火設備」があるかを洗い出すことから始めます。
そのうえで設置済みの防火戸が、どちらの基準を満たす製品かを銘板で確かめます。
分からない場合は、確認申請時の図書を保管している設計事務所や所轄の建築主事に相談してください。

塀の位置と防火戸の表示、両方を確認してみます。
ありがとうございました。

はい、まずは位置関係銘板の表示の2点から確認してみてください。
不明な点があればいつでもご相談ください。

よくある質問

Q防火戸ならどんな戸でも防火設備になるのか?
Aいいえ。防火戸という名称であっても、施行令第109条の2が定める遮炎性能(加熱開始後20分間火炎を出さない性能)を満たす構造でなければ、法令上の防火設備とは認められません。
Q隣地境界線からの距離はどこから測るのか?
A施行令第109条第2項では、隣地境界線、道路中心線、又は同一敷地内の2以上の建築物相互の外壁間の中心線から測ります。同一敷地内に2以上の建築物がある場合、延べ面積の合計が500平方メートル以内なら1つの建築物とみなして判定します。
Q特定防火設備はどんな場所で必要になるのか?
A防火区画の床・壁の開口部など、施行令第112条をはじめとする耐火性能関係規定が適用される場所で必要になります。延べ面積が1,500平方メートルを超える建築物の面積区画や、階段室の区画などが代表例です。
Q防火設備の認定表示はどこで確認できるのか?
A多くの防火戸には、製造者や国土交通大臣認定番号を記載した銘板が扉やわく周りに取り付けられています。図面が手元にあれば確認申請時の仕様書からも確認できます。不明な場合は所轄の建築主事や指定確認検査機関に問い合わせます。

まとめ

建築基準法施行令第109条第1項は、防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備を防火設備と定めています。
隣地境界線や道路中心線に近い外壁・袖壁・塀も、距離要件を満たせば防火設備とみなされます
みなされる距離は1階の開口部で3メートル以下、2階以上の開口部で5メートル以下です。
防火設備と呼べる技術的基準は、加熱開始後20分間火炎を出さない遮炎性能です
防火区画に使う設備は、加熱開始後1時間火炎を出さない特定防火設備でなければなりません。
普通の防火設備をそのまま防火区画へ転用すると、基準を満たさないことがあります
敷地境界の外壁・塀の位置関係と、設置済み設備の銘板表示を早めに確認しておくことが大切です。

防火設備と特定防火設備の違いがよく分かりました。
ありがとうございました!

こちらこそご相談ありがとうございます。
㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号の2
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条・第109条の2・第112条第1項

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物への適用や特定行政庁の運用は異なる場合があります。個別の判断は建築主事または指定確認検査機関にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
点検員が防火戸の銘板を確認している様子
防火戸やシャッターだけが防火設備だと考えていませんか。 建築基準法施行令は、敷地境界の近くにある外壁や塀までも防火設備とみなすことがあります。 防火設備と呼べるかどうかには、火炎を20分間出さないという技術的な基準も定め...