非常用エレベーターは、火災が起きたときに消防隊が優先して使うためのエレベーターです。
ふだん乗っているエレベーターは、扉が完全に閉じてからでないと動き出しません。
ところが非常用エレベーターには、火災時に限って扉を開けたまま昇降できる特別な装置が備わっています。
この仕組みを知っておくと、非常用エレベーターがなぜそう動くのかが分かり、日頃の点検で確認すべき場所も見えてきます。
うちのビルにも非常用エレベーターがあるんですが、ふだんは普通に使ってるだけで詳しい仕組みは知らないんです。
非常用エレベーターは、火災時に消防隊が優先して使えるように特別な機能を持っています。
扉を開けたまま動かせるのもその一つです。
扉を開けたまま動くって、ふだんのエレベーターだと危険な気がします。
どういう仕組みなんでしょうか。
おっしゃる通り、通常は扉が閉じないと動かない安全装置があります。
非常用エレベーターだけは、その機能をあえて止められる仕組みになっているんです。
- 通常のエレベーターは扉が完全に閉じるまで動かない安全装置を持っていますが、非常用エレベーターにはこの機能を止めて扉を開けたまま昇降できる専用の装置が義務付けられています。
- 籠を呼び戻す装置は、避難階またはその直上階・直下階の乗降ロビーと中央管理室の2か所から操作できます。
- 非常用エレベーターには、籠内と中央管理室を結ぶ専用の電話装置の設置が義務付けられています。
- 停電に備えた予備電源と、分速60メートル以上の定格速度が求められます。
- これらの装置は日常の点検対象で、位置と操作方法を防火管理者があらかじめ把握しておく必要があります。
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目次
非常用エレベーターはなぜ火災時だけ戸を開けたまま動かせるのか

ところが非常用エレベーターには、この当たり前を覆す特別な装置があります。
同令第129条の13の3第9項 非常用エレベーターには、第129条の8第2項第2号及び第129条の10第3項第2号に掲げる装置の機能を停止させ、籠の戸を開いたまま籠を昇降させることができる装置を設けなければならない。
乗用エレベーターにはこの安全装置が必ず備わっていて、扉が半端に開いたまま昇降することはできません。
しかし非常用エレベーターは、消防隊が各階の状況を確認しながら移動できるよう、あえてこの安全装置の機能を止められる仕組みになっています。
戸を開けたまま昇降できるのは、専有運転に切り替えたときだけで、平常時は通常のエレベーターと同じように動きます。
この切り替えがどこでできるのかを、次に見ていきましょう。
扉が開いたまま動くなんて、故障してるみたいで怖いですね。
誰でも切り替えられるものなんですか。
いいえ、切り替えられる場所は決まっています。
次はその操作場所を確認しましょう。
籠を呼び戻す装置はどこから操作できるのか

この操作ができる場所は、条文で2か所に決められています。
作動させると、各階の乗降ロビーや籠内にある通常の制御装置の機能が止まり、籠は避難階またはその直上階・直下階に強制的に呼び戻されます。
これにより、火災が起きた階に籠が止まったままになったり、利用者が誤って呼び出したりすることを防げます。
中央管理室からも同じ操作ができるのは、防災センターの担当者が消防隊の到着前に籠を安全な位置へ動かしておけるようにするためです。
呼び戻す装置の鍵や操作盤の位置は、日頃から把握しておく必要があります。
うちの中央管理室、どこにその操作盤があるのか正直分かってません。
一度、防災センターの担当者と一緒に確認しておくと安心です。
次は籠と中央管理室の連絡手段を見てみましょう。
消防隊は籠とどうやって連絡を取るのか

このとき籠の中と中央管理室が連絡を取り合う手段も定められています。
消防隊が籠に乗り込んで各階を移動する間、煙や火勢の状況を中央管理室に伝えたり、逆に中央管理室から状況を知らせたりできるようにするための装置です。
携帯電話やインターホンとは別に、非常用エレベーター専用の電話装置として設置が義務付けられています。
停電時や高層階で電波が届きにくい状況でも使えることが前提になっているため、定期的な作動確認が欠かせません。
籠内のどこに受話器があるかも、あわせて確認しておきましょう。
そういえば籠の中に電話みたいなものがあった気がします。
あれがそうだったんですね。
はい、それが専用の電話装置です。
次は停電時や速度の基準を見ていきましょう。
停電したときや速度はどう定められているのか

非常用エレベーターは、そうした状況でも動き続けられるように基準が定められています。
同条第11項 非常用エレベーターの籠の定格速度は、60メートル以上としなければならない。
建物側の電源が落ちても、非常用エレベーターだけは予備電源に切り替わって動き続けられる仕組みです。
また籠の定格速度は分速60メートル以上と定められていて、高層階まで短時間で消防隊を運べるようにするための基準です。
定格速度が速いということは機械としての負荷も大きいということなので、保守点検の頻度が通常のエレベーターより高く設定されている場合があります。
予備電源の作動試験の記録が残っているかも、確認しておきたいポイントです。
予備電源って、ちゃんと動くかどうかまでは確認したことがなかったです。
作動試験の記録は保守点検の報告書に残っているはずです。
最後に明日からの確認事項をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

自分の建物に当てはめて、順番にチェックしてみてください。
- 籠を呼び戻す装置の操作盤が、乗降ロビーと中央管理室のどちらにあるかを把握する
- 籠内と中央管理室をつなぐ電話装置が、作動確認の対象に含まれているか保守点検の報告書で確認する
- 予備電源への切り替えが正常に行われるか、作動試験の記録を確認する
- 乗降ロビーの標識や表示灯が掲示物などで隠れていないか確認する
- 非常用エレベーターの操作方法を、防火管理者自身と防災センター要員が理解しているか確認する
次に電話装置と予備電源が保守点検の対象になっているかを、点検業者や管理会社に確認してください。
最後に、防災センター要員や自衛消防隊の訓練で、実際に呼び戻し操作を体験しておくと安心です。
非常用エレベーターって、ただ設置されているだけじゃないんですね。
点検のときにちゃんと見てもらいます。
はい、装置ごとに作動確認が必要です。
次によくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
非常用エレベーターの仕組みがよく分かりました。
ありがとうございました!
こちらこそご相談ありがとうございます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の13の3
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の8第2項第2号・第129条の10第3項第2号
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物への適用や特定行政庁の運用は異なる場合があります。個別の判断は建築主事または指定確認検査機関にご確認ください。





