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水幕設備の散水ヘッドや自動作動装置にはどんな役割があるのか|ドレンチャー等を構成する5つの用語を解説

水幕設備の水源を点検する女性検査員のアイキャッチ画像

防火設備の定期検査というと、防火扉やシャッターの点検を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、ドレンチャーなどの水幕設備も、防火扉と同じ防火設備として検査の対象です。
水幕設備は散水ヘッドや水源、自動作動装置など複数の部品が連携して初めて機能する仕組みで、防火扉の部品とは呼び方も役割も異なります。
この記事では水幕設備を構成する5つの基本用語とその役割を解説します。

ドレンチャーの点検で散水ヘッドとか水源とか名前は聞くんですが、正直どれがどんな役目なのか分かっていなくて。

水幕設備は部品ごとに役割がはっきり分かれている設備です。

防火扉の自動閉鎖装置と、名前が似ているものもありますよね。

はい、今回は呼び方の違いも含めて整理していきます。

この記事の結論
  • 水幕設備(ドレンチャー等)は、建築基準法施行令第109条にいう「防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備」の一種で、加熱開始後20分間火炎を出さない遮炎性能が求められます。
  • 散水ヘッドの散水量・散水圧力・設置間隔は、製品ごとに大臣認定で承認された基準によるため、型式が変われば数値も変わります。
  • 水源の必要水量は、加熱等級に応じた20分・45分・60分などの時間、水幕を継続して形成できる量を確保します。
  • 防火扉等の自動閉鎖装置が扉を「閉じる」のに対し、水幕設備は開閉弁を開閉制御させる自動作動装置と呼び方が使い分けられています。
  • 手動作動装置は、散水ヘッド付近の壁面等に設置された押しボタンや操作弁で、火災時に人の手でも起動できるようにする仕組みです。

水幕設備を支える5つの用語を示すインフォグラフィック

水幕設備(ドレンチャー等)とは何を指すのか

水幕設備(ドレンチャー等)の全体像を確認する女性検査員のイラスト
防火設備というと扉やシャッターを思い浮かべがちですが、水の膜で炎を遮る設備も仲間に入ります。
まずは水幕設備がどのような位置づけの設備なのかを確認しましょう。
問1 建築基準法上、ドレンチャーなどの水幕設備はどのような設備として扱われるのか。
答1 建築基準法施行令第109条にいう「防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備」の一種として防火設備に含まれ、第109条の2が定める遮炎性能(加熱開始後20分間、当該加熱面以外の面に火炎を出さないこと)を満たす必要がある。防火設備である以上、建築基準法第12条第3項に基づく定期検査・報告の対象にもなる。
水幕設備は「水のカーテン」で防火区画をつくる設備です。
散水ヘッドから吹き出した水が幕のように連続して降りることで、遮炎性能20分間という基準を満たします。
防火扉や防火シャッターのように物理的に開口部をふさぐのではなく、水の膜で炎と煙を遮る点が最大の特徴です。
構成する部品は感知部・連動制御器・水源・加圧送水装置・散水ヘッドなど多岐にわたり、どれか1つが欠けても水幕は完成しません。
次の項目からは、その部品の中でもまず目に見える散水ヘッドの役割を見ていきます。

扉じゃなくて水で炎を防ぐって、考えてみると不思議な設備ですね。

そうですね、扉と同じ防火設備の仲間だと覚えておくと分かりやすいです。

散水ヘッドの性能基準はなぜ製品ごとに違うのか

天井付近の散水ヘッドを見上げて確認する女性検査員のイラスト
水幕をつくる散水ヘッドは、どれも同じ性能というわけではありません。
製品ごとに数値が異なる理由を確認しておきましょう。
問2 散水ヘッドの散水量・散水圧力・設置間隔は、どのように決まっているのか。
答2 散水ヘッドは、水幕設備として大臣認定を取得した製品ごとに、散水ヘッドの散水量、散水圧力、設置間隔等の性能基準及び設置基準が個別に承認されている。検査に際しては、対象の散水ヘッドがどの認定に基づく製品かを設計図書等で確認したうえで、その基準に沿っているかを見る。
散水ヘッドの数値は、製品共通の一律基準ではありません。
水幕設備は建物ごとに区画の形状や必要な遮炎性能が異なるため、製品ごとの大臣認定で個別に性能基準が定められています。
同じ「散水ヘッド」という名称でも、認定が違えば散水量や取付けピッチの数値も変わってきます。
そのため点検では、まずどの認定に基づく製品かを確認してから、実際の設置状況と照らし合わせる手順になります。
数値を覚えるより先に、認定内容を確認する習慣をつけておくと安心です。

ヘッドによって基準がバラバラだと、覚えるのが大変そうです。

数値を覚えるより、設計図書で認定内容を確認する流れを押さえましょう。

水源の必要水量はなぜ20分・45分・60分の3段階に分かれるのか

貯水槽の水位計をフラッシュライトで確認する女性検査員のイラスト
水源は、ただ水をためておけばよいわけではありません。
必要な水量がどのように決まっているのかを見ていきます。
問3 水幕設備の水源に必要な水量は、どのように定められているのか。
答3 水源は、水幕設備に使用する水を蓄える装置であり、加熱等級に応じた時間(20分間、45分間、60分間など)に必要とされる個数の散水ヘッドから散水を行い、水幕を継続して形成するのに必要な水量を確保する。あわせて自動給水装置、減水・満水警報装置などを必要に応じて設置する。
水源の容量は、時間で区切られた計算値です。
建物や区画に求められる加熱等級が高いほど、水幕を維持しなければならない時間も長くなり、必要な水量も増えます。
20分間・45分間・60分間という区分は、防火設備の基本である遮炎性能20分間を土台に、区画の条件に応じて上乗せされたものです。
貯水槽が満水であることだけでなく、その水量が求められる時間分に見合っているかまで確認するのが検査のポイントです。
次は、この水を実際に動かす仕組みである自動作動装置について見ていきます。

水がいっぱい入っていれば、それで大丈夫だと思っていました。

満水かどうかだけでなく、必要な時間分の水量かどうかがポイントです。

自動作動装置は防火扉の自動閉鎖装置と何が違うのか

制御盤の起動信号ランプを確認する男性検査員のイラスト
似た名前の装置が多いのも、水幕設備の分かりにくいところです。
まずは「作動」と「閉鎖」という言葉の違いから整理します。
問4 水幕設備の自動作動装置は、防火扉や防火シャッターの自動閉鎖装置と何が違うのか。
答4 防火扉、防火シャッター及び耐火クロススクリーンの自動閉鎖装置は、火災時に連動制御器等からの制御信号を受けて、自動的に防火扉等を閉鎖させるための装置である。これに対し水幕設備の自動作動装置は、火災時に制御盤からの起動信号(放水信号)により、自動的に水幕設備の開閉弁を開閉制御させる装置であり、対象が「閉じる」ものか「水を出す」ものかで呼び方が使い分けられている。
「閉鎖」と「作動」は、設備の動き方の違いを表す言葉です。
防火扉やシャッターは扉自体を動かして閉鎖しますが、水幕設備は扉のように動く部分がなく、開閉弁を開いて放水させることで防火の役目を果たします。
そのため装置の呼び方も、防火扉側は自動閉鎖装置、水幕設備側は自動作動装置と使い分けられています。
検査結果表や報告書でもこの名称がそのまま使われるため、混同すると別の設備の項目を確認してしまうおそれがあります。
似た名前ほど、対象の設備がどちらなのかを先に確認する習慣が大切です。

閉鎖と作動、確かに聞き流していると同じ意味に思えます。

報告書の項目名にも関わるので、対象の設備がどちらかを先に確認しましょう。

手動作動装置はどこでどう操作するものなのか

壁面の手動作動装置の押しボタンを操作する女性検査員のイラスト
自動で作動する仕組みがあっても、人の手で動かす手段も必要です。
最後に手動作動装置の設置場所と操作方法を確認します。
問5 水幕設備の手動作動装置は、どこに設置され、どのように操作するものなのか。
答5 手動作動装置は、手動操作により水幕を形成する防火設備を起動させるための装置で、水幕を形成する散水ヘッドの付近の壁面等に設置し、押しボタン操作により起動させる。また、緊急措置用として開閉弁を手動操作により直接起動させる操作弁等も、手動作動装置のひとつである。
手動作動装置は、自動が働かないときの最後の備えです。
感知器が正常に作動しない状況や、火災の発見が早く手動で先に対応したい場面もあり、押しボタンや操作弁による起動手段が用意されています。
設置場所は散水ヘッド付近の壁面が基本で、非常時にすぐ見つけられるよう表示や案内が添えられています。
検査では、自動作動装置と手動作動装置の両方が正しく起動する状態にあるかを、それぞれ別の項目として確認します。
自動と手動の二重の備えがあって、水幕設備は初めて確実に作動する設備になります。

自動があるなら、手動のボタンは無くてもいいのかと思っていました。

自動と手動、どちらも欠かせない備えとして設けられています。

よくある質問

Q散水ヘッドの型式が分からない場合、どうやって認定内容を確認すればよいですか。
Aまずは建築確認図書や前回の検査報告書に、設置されている散水ヘッドの型式や大臣認定番号が記載されていないかを確認します。図書が手元にない場合は、所有者や管理者を通じてメーカーや施工業者に問い合わせる方法もあります。
Q水源の水量が不足していた場合、検査結果はどう扱われますか。
A求められる時間分の水量を確保できていなければ、要是正の指摘対象になります。減水警報装置が作動していないかもあわせて確認し、原因が漏水なのか未補給なのかを切り分けたうえで報告書に記載します。
Q自動作動装置と自動閉鎖装置は、同じ建物に両方あることもありますか。
Aあります。同じ建物にドレンチャーと防火扉や防火シャッターが併設されていることは珍しくありません。検査の際は、どちらの設備を確認しているのかを取り違えないよう、対象の名称を報告書と照らし合わせながら進めます。
Q手動作動装置は日常点検でも操作してよいものですか。
A実際に放水させる作動確認は、周辺への影響が大きいため定期検査など決められた機会に限って行います。日常点検では、押しボタンや操作弁に破損や覆いがないかなど、外観の確認にとどめるのが一般的です。

まとめ

水幕設備(ドレンチャー等)は、施行令第109条にいう防火設備の一種で、遮炎性能20分間を満たします。
散水ヘッドの散水量・散水圧力・設置間隔は、製品ごとの大臣認定で個別に決まります。
水源の必要水量は加熱等級に応じた20分・45分・60分などの時間分を確保します。
防火扉の自動閉鎖装置と水幕設備の自動作動装置は、閉じるか水を出すかで呼び方が異なります。
手動作動装置は散水ヘッド付近の押しボタンや操作弁で、人の手でも起動できます。
検査では自動と手動の両方が正しく起動するかを別々の項目として確認します。
似た名前の装置ほど、対象の設備がどちらかを先に確認する習慣が大切です。

散水ヘッドや自動作動装置の役割まで分かって、点検の意味が理解できました!

水幕設備の点検や報告書のことも、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条・第109条の2
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第19項第2号

※本記事は建築基準法・同施行令の現行規定に基づき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。散水ヘッドの性能基準や水源の必要水量は、設置されている製品の大臣認定内容によって異なります。個別の建築物における確認・点検については、専門の検査資格者にご相談ください。

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