防火設備の定期検査は、扉やシャッターの状態を確認するだけでは終わりません。
どの建物のどの設備が対象になるのか、検査の前に何を準備すればよいのかも、あわせて押さえておく必要があります。
特に複数の階にまたがる防火設備が連動する現場では、検査中の安全確保も欠かせないポイントです。
この記事では制度の趣旨から検査当日の安全確保までの流れを解説します。
今年、防火設備の検査を頼もうと思うんですが、うちの建物だと何が対象になるのか分からなくて。
対象になる建物や設備は建築基準法施行令で決まっていて、確認の仕方にもコツがあります。
検査の当日って、立ち会っていた方がいいんですか。
はい、安全確保の面でも立ち会いをおすすめしています。
- 防火設備定期検査は建築基準法第12条第3項に基づき、所有者又は管理者に義務付けられています。
- 検査対象になる建物は建築基準法施行令第16条と平成28年国土交通省告示第240号が定める用途・規模の要件で判断します。
- 検査対象の防火設備は常時閉鎖式防火扉・随時閉鎖式防火扉・防火シャッター・耐火クロススクリーン・ドレンチャー等の5種類で、常時閉鎖式防火扉は各階の主要なものが対象です。
- 検査前には建築確認図書や前回の定期検査報告書を確認し検査計画図を作成しておきます。
- 竪穴区画などで防火設備が連動する現場では、検査員の分散配置など安全確保の対策が欠かせません。
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目次
防火設備定期検査はなぜ義務付けられているのか

建築基準法が、定期的な検査と報告を明確な義務として定めています。
しかし建築基準法第12条第3項は、防火設備のような特定建築設備等について、一級建築士・二級建築士または防火設備検査員資格者証の交付を受けた者による検査を義務付けています。
検査結果は特定行政庁に報告され、報告を受けた特定行政庁はその内容に応じて是正の措置を講じます。
「毎年たまたま検査している」のではなく、法律が定期のサイクルを義務として定めている点をまず押さえておきましょう。
次の項目では、実際にどの建物のどの設備が対象になるのかを見ていきます。
うちは毎年何となく点検を頼んでいましたが、そもそも法律の決まりだったんですね。
はい、建築基準法第12条第3項で報告まで義務付けられています。
どの建物のどの防火設備が検査の対象になるのか

用途や規模によって、対象になる建物とならない建物が分かれます。
建築基準法施行令第16条と平成28年国土交通省告示第240号が、劇場・病院・共同住宅・高齢者施設などの用途ごとに、階数や床面積の基準を定めています。
基準に該当する建物では、常時閉鎖式防火扉・随時閉鎖式防火扉・防火シャッター・耐火クロススクリーン・ドレンチャー等の5種類が検査対象になります。
自分の建物が対象かどうかは、確認済証や検査済証、あるいは所轄の特定行政庁への確認で把握できます。
次は、対象になった設備の中でも「常時閉鎖式防火扉」だけに設けられた特別な扱いを見ていきます。
うちは共同住宅なんですが、対象になるかは自分では判断できなさそうです。
用途と規模の要件があるので、確認済証などで確認するのが確実です。
常時閉鎖式の防火扉だけ検査の範囲が違うのはなぜか

なぜこの扉だけ特別な扱いになるのか、理由を確認しましょう。
常閉防火扉は開閉作動がなく劣化の進み方も緩やかなため、避難経路・吹抜き・通行頻度の高い箇所を中心に検査対象を絞り込みます。
一方で随時閉鎖式の防火シャッターやドレンチャー等は、作動しなければ火災時に機能しないため、設置されているものすべてを検査します。
まれに、常閉防火扉が特定行政庁独自の告示によって特定建築物調査の側で扱われることもあるため、判断に迷ったら所轄の特定行政庁に確認しておくと安心です。
次は、検査に入る前にどんな書類を確認しておくべきかを見ていきます。
うちの建物、防火扉は数枚だけなのに全部見なくていいんですか。
常閉防火扉は避難経路など主要なものを中心に確認します。
検査の前にどんな書類を確認しておくのか

その前に、建物の書類を読み込んでおく準備の工程があります。
建築確認図書から建物の構造や避難経路、防火設備の位置・連動状況を把握し、検査計画図を作成しておくことで、感知器と連動する防火設備の対応関係が一目で分かるようになります。
前回の定期検査報告書を確認すれば、指摘があった箇所が改善されているかを重点的に見ることができます。
消防用設備等の点検記録などの既往記録が適正であれば、その範囲を今回の検査記録として活用でき、不足する部分だけを追加で検査すればよいとされています。
書類の準備を怠ると、現場での確認漏れや二度手間につながります。
前に別の点検でチェックした記録があるんですが、それも使えますか。
内容が適正であれば既往記録として活用できます。
検査当日の思わぬ事故をどう防ぐのか

特に複数の階にまたがる設備を連動させるときは、注意が必要です。
複数の防火設備が連動する現場では、感知器を作動させる係・連動制御器を確認する係・各階で安全を確認する係というように、検査員の役割を分担して配置します。
検査対象の周囲にはバリケードや注意札を設置し、人が頻繁に通行する場所では監視員も配置します。
連動する防火設備が複数ある場合は、まず全部の閉鎖状況を確認してから元の状態に復旧させ、そのあとで個別の項目を確認するという順序を守ります。
検査が終わったらすべてを元の状態に復旧し、その旨を所有者等に報告して初めて検査は完了します。
感知器を作動させたら、他の階のシャッターまで一緒に閉まることがあるんですね。
はい、だから検査員の分散配置が欠かせません。
よくある質問
まとめ
対象になる建物や当日の流れが分かって、安心して検査に臨めそうです!
事前準備から当日の安全確保まで、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第8条・第12条第1項・第3項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第16条・第109条
- 平成28年国土交通省告示第240号
- 平成28年国土交通省告示第723号(防火設備の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件)
※本記事は建築基準法・同施行令の現行規定に基づき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。検査対象となる建物の判定や検査計画図の作成方法は、建築物の仕様や所轄の特定行政庁の定めによって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門の検査資格者にご確認ください。





