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簡易湯沸設備と温風暖房機はなぜ壁からわずか1センチメートルで設置できるのか|後面近接設置型を認めた消防庁通知の基準の特例を解説

簡易湯沸設備はなぜ壁のすぐそばに置けるのかを示したアイキャッチ画像

「湯沸設備を壁からたった1センチメートルしか離さずに設置しても大丈夫なのか」と不安になったことはありませんか。
火災予防条例準則は本来、簡易湯沸設備の後方の離隔距離を4.5センチメートル以上と定めています。
ですが消防庁は、断熱構造を備えた特定の設備に限り、この距離を大きく縮める運用を通知で認めました。
この記事では後面近接設置型が認められる条件と、現場で確認すべきポイントを解説します。

新しいガス給湯器を入れたいんですが、壁までの隙間が全然足りないと言われました。
普通は4.5センチメートル必要らしいんです。

実は消防庁が認めた特別な運用があるんですよ。
条件を満たす設備なら、その距離を大きく縮められます。

えっ、そんな特例があるんですね。
うちの設備が対象になるのか知りたいです。

対象になる設備の条件と、後面近接設置を認めた消防庁通知の中身を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 気体燃料を使用する簡易湯沸設備・温風暖房機は、火災予防条例準則で後方の離隔距離を4.5センチメートル以上と定めている
  • 消防庁は昭和60年・昭和61年の通知で、後方に断熱材を仕込んだ特定構造の設備に限り、離隔距離を縮める運用を認めた
  • 簡易湯沸設備は1センチメートル以上、温風暖房機は1.3センチメートル以上まで距離を縮められる
  • 特例の根拠は火災予防条例準則第17条の3の基準の特例で、消防長(消防署長)の判断のもとで運用される
  • 対象製品の構造に一致しない設備を勝手に壁へ近づけてはいけないため、設置前に型式と所轄消防への確認が欠かせない

後面近接設置型が認められる確認手順を示した図解

気体燃料を使用する簡易湯沸設備の後面近接設置はなぜ認められたのか

断熱材を背面に仕込んだ簡易湯沸設備と壁の隙間をメジャーで測る作業員のイラスト
火災予防条例準則は、簡易湯沸設備の背面と壁との間に4.5センチメートル以上の隙間を求めています。
ところが昭和60年、この前提を変える設備がメーカーから登場しました。
気体燃料を使用する後面近接設置型簡易湯沸設備の火災予防条例準則上の取扱いについて(昭和60年2月8日消防予第24号) 気体燃料を使用する簡易湯沸設備の位置、構造については、火災予防条例準則(以下「準則」という。)第8条の規定に示しているところであるが、今般、準則第8条第1項に定める設備後方の離隔距離を緩和しても差し支えないと認められる設備が開発された。この設備は、準則別表第3及び第4に掲げる開放式簡易湯沸設備に該当し、後方の離隔距離は4.5センチメートル以上とされているものであるが、設備後方に厚さ1.5センチメートル以上の不燃性の断熱材を充てんし、後方への熱放射を低くした構造となっている。
きっかけは新型設備の登場です
通常の開放式簡易湯沸設備は、後方への熱放射をそのまま受け止める構造のため、4.5センチメートルの離隔距離が必要でした。
ところが後方に厚さ1.5センチメートル以上の不燃性の断熱材を充てんし、熱放射を抑えた設備が登場しました。
これは事故を受けた規制強化ではなく、技術開発を受けた規制緩和という珍しい通知です。
翌年には同じ発想で温風暖房機についても通知が出ています。

普通の湯沸設備を作り替えたわけじゃなくて、断熱材で熱の伝わり方を変えたんですね。

そのとおりです。
だからこそ、どんな設備でも対象になるわけではありません。

特例が適用されるのはどの設備のどの構造か

開放式簡易湯沸設備とFF式温風暖房機を並べて対象設備を示すイラスト
対象になるのは、すべての湯沸設備や暖房機ではありません。
通知が名指しした構造の製品だけが特例の対象です。
気体燃料を使用する後面近接設置型温風暖房機の火災予防条例準則上の取扱いについて(昭和61年8月1日消防予第110号) 気体燃料を使用する温風暖房機の位置、構造及び管理の基準については、火災予防条例準則第3条の3の規定に示しているところであるが、今般、新型のFF式温風暖房機が別添のとおり開発された。この設備は、準則別表第3及び第4に掲げる密閉式温風暖房機に該当し、後方距離は4.5センチメートル以上とされているものであるが、燃焼中温度が高くなる熱交換部と器具後面の間に遮熱板を設け二重構造とし、後方への熱放射を低くした構造になつており、また過熱防止装置を設けて万一の異常過熱を防止する等の構造となつている。
対象は二種類の製品だけです
ひとつは準則別表第3・第4に掲げる開放式簡易湯沸設備で、後方に不燃性の断熱材を充てんした構造のもの。
もうひとつは同じ別表に掲げる密閉式(FF式)温風暖房機で、熱交換部と器具後面の間に遮熱板を設けて二重構造にし、過熱防止装置も備えたもの。
どちらも「後方への熱の伝わり方を製品側の構造で下げている」という共通点があります。
この構造に当てはまらない一般的な製品は対象になりません。

湯沸設備と温風暖房機で、それぞれ別の通知が出ているんですね。

はい、設備の種類ごとに条件と距離が違うので、次はその中身を見ていきます。

後面の離隔距離はどこまで縮められるのか

断熱材を挟んで壁との隙間が狭くなった設備背面のカットモデルを確認する作業員のイラスト
数字だけ見ると「4.5センチメートルが1センチメートルに」という大きな変化です。
ただし、この距離まで縮めてよい条件が別に定められています。
(準則第17条の3 基準の特例)この節の規定は、この節に掲げる設備について、消防長(消防署長)が、当該設備の位置、構造及び管理並びに周囲の状況から判断して、この節の規定による基準によらなくとも、火災予防上支障がないと認めるとき又は予想しない特殊の設備を用いることにより、この節の規定による基準による場合と同等以上の効力があると認めるときにおいては、適用しない。
(昭和60年消防予第24号)当庁において、この設備の後方の離隔距離について検討した結果、下記条件を満たす場合、後方の離隔距離を1センチメートル以上としても火災予防上支障がないと認められるため、このような措置を講じた設備については準則第17条の3の規定を適用することができるものとして運用して差し支えない。記 1 設置場所周囲の離隔距離内に延焼のおそれのある可燃物がないこと。2 必要な点検及び整備を適宜実施すること。
数字だけでなく条件もセットで守ります
簡易湯沸設備は後方1センチメートル以上まで、温風暖房機は日本ガス機器検査協会の試験結果をもとに後方1.3センチメートル以上まで縮められると運用で示されました。
根拠になっているのは準則第17条の3の「基準の特例」で、消防長が火災予防上支障がないと個別に認める仕組みです。
簡易湯沸設備側の通知には、設置場所の周囲に延焼のおそれのある可燃物を置かないことと、点検・整備を適宜行うことという条件も明記されています。
距離の数字だけを覚えて可燃物の管理を怠ると、特例を使う前提が崩れます。

つまり距離が縮まった分、周りの管理を今まで以上に気をつける必要があるんですね。

そのとおりです。
ここを見落とす例が実務では多いので、次に落とし穴を確認しましょう。

特例を適用するときに見落としやすいのはどこか

断熱構造の対象設備と一般的な設備を並べ許可と不可を示すイラスト
見た目が似ている設備でも、特例の対象になるとは限りません。
現場で誤解が起きやすいポイントを整理します。 特例は製品構造とセットで成立します
通知が対象にしているのは、後方に不燃性の断熱材を充てんした簡易湯沸設備や、遮熱板と過熱防止装置を備えた密閉式温風暖房機という特定の構造の製品だけです。
一般的な開放式湯沸設備や温風暖房機を、この通知だけを根拠に壁へ1センチメートルまで近づけてよいわけではありません。
また、この通知は準則第17条の3に基づく消防長(消防署長)の運用なので、最終的な適用の判断は所轄消防が行います
型式や取扱説明書で対象製品と一致するかを確認しないまま距離だけを真似ると、特例の前提から外れてしまいます。

うちの設備が対象品か、見た目だけでは判断できなさそうです。

そのとおりです。
最後に、明日から確認できる手順をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

設備の銘板を確認する作業員と所轄消防に電話で相談する担当者のイラスト
対象かどうかを確かめる手順はシンプルです。
順番に確認していきましょう。 確認は四つの手順で足ります
まず設備本体の銘板・取扱説明書で、後面近接設置型の対象品として記載があるかを確認します。
次に設置場所の周囲を見て、離隔距離内に延焼のおそれのある可燃物が無いかを確認します。
そのうえで、点検・整備の記録を適宜取っていける体制になっているかを確認します。
最後に、実際の設置可否は所轄消防への確認で締めくくるのが安全です。

銘板を見て、周りの可燃物を確認して、消防署に聞く。
この順番なら今日からできそうです。

その順番で十分です。
よくある質問もあわせて確認しておきましょう。

よくある質問

Q対象製品かどうかはどこで確認できますか?
Aまずは設備の銘板や取扱説明書を確認します。後方の断熱構造や遮熱板の有無が記載されているかがポイントで、記載が無い一般的な製品は特例の対象外と考えます。
Q簡易湯沸設備と温風暖房機で必要な距離は同じですか?
Aいいえ、違います。簡易湯沸設備は1センチメートル以上温風暖房機は1.3センチメートル以上と、それぞれ別の通知で数値が示されています。
Q古い型の設備を後から改造して距離を縮めてもよいですか?
A通知が想定しているのはメーカーが構造として組み込んだ断熱・遮熱の仕組みです。現場での後付け改造は通知の前提と異なるため、対応可否は所轄消防に相談してください。
Q周囲の可燃物はどこまで気をつければよいですか?
A通知は設置場所周囲の離隔距離内に延焼のおそれのある可燃物がないことを条件に挙げています。距離が縮まった分、日常的な整理整頓と点検が特例を維持する前提になります。

まとめ

火災予防条例準則は、簡易湯沸設備・温風暖房機の後方離隔距離を4.5センチメートル以上と定めている
昭和60年・昭和61年の消防庁通知が、断熱構造を備えた特定の製品に限って距離の緩和を認めた
簡易湯沸設備は後方1センチメートル以上まで縮められる
温風暖房機は後方1.3センチメートル以上まで縮められる
根拠は準則第17条の3の基準の特例で、消防長(消防署長)の判断で運用される
対象は通知が名指しした構造の製品だけで、一般的な製品には適用されない
設置前には型式の確認と所轄消防への確認を欠かさない

特例は製品の構造とセットだということがよく分かりました!

対象製品の見極めや所轄消防への確認でお困りでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 気体燃料を使用する後面近接設置型簡易湯沸設備の火災予防条例準則上の取扱いについて(昭和60年2月8日消防予第24号、改正:平成13年3月消防予第103号・消防危第53号)
  • 気体燃料を使用する後面近接設置型温風暖房機の火災予防条例準則上の取扱いについて(昭和61年8月1日消防予第110号)
  • 火災予防条例(例)第8条(簡易湯沸設備)・第3条の3(温風暖房機)・第17条の3(基準の特例)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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