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セルフ給油所の制御機器はなぜ持ち運びできるのか|可搬式に求められる機能を解説

可搬式の制御機器を手に持ち給油取扱所に立つイメージ写真

セルフ式のガソリンスタンドでは、係員が机に座って給油を監視するのが基本形です。
しかし危険物の規制に関する規則は、その制御卓を持ち歩ける「可搬式の制御機器」も認めています。
固定の制御卓と同じ機能を、どこまで持ち歩く機器に求めているのでしょうか。
この記事では、可搬式の制御機器に求められる機能と、制御卓との違いを条文から整理します。

うちのスタンドは敷地が狭くて、制御卓を置く場所が無いんです。

それなら可搬式の制御機器という選択肢があります。

持ち歩く機器でも、制御卓と同じように操作できるんですか。

備えるべき機能が条文で決まっています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 制御卓を固定で設置できない場合は、規則第二十八条の二の五第七号により可搬式の制御機器で代えることが認められています。
  • 可搬式の制御機器にも、個別の開始・停止装置を備える義務があります(同号イ)
  • 火災など非常時に全設備を止める一斉停止の制御装置も、可搬式に備える義務があります(同号ロ)。
  • 制御卓に求められる会話装置や放送機器は、可搬式の制御機器には規定されていません
  • 設置位置を常時視認できるようにする義務も、可搬式には課されていません

制御卓と可搬式の制御機器に求められる機能の違いを示す図解

制御卓を置けないときはどうすればよいのか

給油機が並ぶ狭い給油取扱所内をタブレット型の可搬式機器を持って歩く係員のイメージ
まず、可搬式の制御機器がどんな場合に認められるのかを条文で確認します。
根拠は令第十七条第五項に基づく規則の特例です。
危険物の規制に関する規則第二十八条の二の五 七 顧客の給油作業等を制御するための可搬式の制御機器を設ける場合にあっては、次に定めるところによること。
制御卓を固定で設置しなくても、可搬式の制御機器で代えることができます。
前条(第六号)が定める制御卓そのものとは別に、持ち運べる機器を設ける道が用意されています。
レイアウトの都合で常時視認できる位置に制御卓を置けない給油取扱所を想定した規定です。
ただし、可搬式にすれば何を備えてもよいわけではありません。
次のセクションから、具体的に求められる機能を見ていきます。

制御卓を置く場所が無くても、あきらめなくていいんですね。

はい、可搬式の制御機器が使えます。
次は必要な機能を見ましょう。

持ち歩く機器にも開始と停止の装置は要るのか

可搬式の制御機器のボタンで一つの給油機を操作する係員のイメージ
可搬式でも、個別の給油設備を操作する機能は必要です。
条文を確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の二の五第七号イ 可搬式の制御機器には、前号ハに規定する制御装置を設けること。(前号ハ 制御卓には、それぞれの顧客用固定給油設備及び顧客用固定注油設備のホース機器への危険物の供給を開始し、及び停止するための制御装置を設けること。)
可搬式の制御機器にも、給油設備ごとの開始・停止の制御装置が必要です。
これは制御卓が備える個別の開始・停止装置(第六号ハ)と同じ機能です。
持ち歩く機器だからといって、この機能を省略することはできません。
装置が無ければ、顧客用固定給油設備ごとの供給を係員が個別に止められなくなります。
次に、非常時の一斉停止についても確認します。

個別に止める機能は、制御卓と同じということですね。

はい、第六号ハと同じ機能です。
次は非常停止を見ましょう。

非常停止の機能も持ち歩けるようにするのか

可搬式機器の非常停止ボタンを押し複数の給油機が止まるイメージ
火災など非常時に全設備を止める機能も、可搬式に求められています。
条文を確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の二の五第七号ロ 可搬式の制御機器には、前号ニに規定する制御装置を設けること。(前号ニ 制御卓及び火災その他の災害に際し速やかに操作することができる箇所に、全ての固定給油設備及び固定注油設備のホース機器への危険物の供給を一斉に停止するための制御装置を設けること。)
可搬式の制御機器にも、全設備を一斉に止める非常停止の装置が必要です。
これは制御卓が備える一斉停止の制御装置(第六号ニ)と同じ機能です。
個別の開始・停止(前のセクション)と、この一斉停止はどちらも欠かせません。
可搬式であっても、火災等の際に速やかに操作できる状態で持たれている必要があります。
では、制御卓と可搬式ではどこが違うのかを次に見ます。

持ち歩く機器でも、非常停止まで含まれるんですね。

はい、第六号ニと同じ機能です。
次は制御卓との違いを見ましょう。

制御卓と可搬式で備えるものはなぜ違うのか

固定の制御卓と可搬式の制御機器を並べて機能の違いを示すイメージ
ここまでの二つの機能だけを見ると、制御卓と同じに思えます。
しかし、条文が求める範囲には違いがあります。
危険物の規制に関する規則第二十八条の二の五第六号(抜粋) イ 制御卓は、給油取扱所内で、かつ、全ての顧客用固定給油設備及び顧客用固定注油設備における使用状況を直接視認できる位置に設置すること。(略)ホ 制御卓には、顧客と容易に会話することができる装置を設けるとともに、給油取扱所内の全ての顧客に対し必要な指示を行うための放送機器を設けること。
制御卓に求められるイ号(設置位置)とホ号(会話装置・放送機器)は、可搬式の制御機器には規定されていません。
第七号が引用しているのはハ号とニ号だけで、開始・停止と一斉停止の機能に絞られています。
持ち歩く前提の機器に、常時視認できる設置位置を求めても意味がないためと考えられます。
会話装置や放送機器についても、可搬式には備える義務がありません
この違いを踏まえて、実務で確認すべきことを最後にまとめます。

可搬式のほうが、備える機能が少なくて済むんですね。

はい、開始・停止と一斉停止だけです。
最後に確認の手順をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持つ係員が可搬式の制御機器を点検するイメージ
最後に、これまでの内容を確認の手順として整理します。
順番にチェックしてください。
  • 自店で使っているのが制御卓か可搬式の制御機器かを確認する
  • 可搬式の場合、個別の開始・停止装置(第七号イ)が備わっているかを確認する
  • 火災等に備えた一斉停止の装置(第七号ロ)が備わっているかを確認する
  • 可搬式には会話装置や放送機器の設置義務が無いことも理解しておく
  • 条件付自動制御装置(第八号・第九号)を使う場合も、可搬式に設ける制御装置の要件は同じである点にも注意する

制御卓と可搬式、どちらを使っているか確認してみます。

はい、開始・停止と一斉停止の装置を確認してください。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Qセルフ給油所は、制御卓を必ず設置しなければなりませんか。
Aいいえ。危険物の規制に関する規則第二十八条の二の五第七号により、可搬式の制御機器で代えることが認められています。
Q可搬式の制御機器には、どんな機能が必要ですか。
A前号ハ・ニに規定する個別の開始・停止装置一斉停止の装置の両方が必要です(同号イ・ロ)。
Q可搬式の制御機器にも、顧客と会話する装置は必要ですか。
A必要ありません。制御卓に求められる会話装置・放送機器(第六号ホ)は、第七号には引用されていません
Q可搬式の制御機器は、常に決まった位置に置いておく必要がありますか。
Aいいえ。制御卓に求められる設置位置の視認義務(第六号イ)も第七号には引用されていません。持ち歩くことを前提にした規定です。

まとめ

制御卓を固定で設置できない場合、可搬式の制御機器で代えることができます
可搬式にも個別の開始・停止装置(第七号イ)が必要です
火災等に備えた一斉停止の装置(第七号ロ)も、可搬式に必要です
制御卓に求められる設置位置の視認義務(第六号イ)は可搬式には課されていません
制御卓に求められる会話装置・放送機器(第六号ホ)も可搬式には規定されていません
条件付自動制御装置(第八号・第九号)でも可搬式に設ける場合の要件は同じです
判断に迷うときは、所轄消防署に確認してください

開始停止と一斉停止の装置を、まず確認してみます!

はい、二つの制御装置から確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十七条第五項
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の二の五第六号・第七号

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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