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水幕設備はなぜ感知や給水の仕組みが防火扉や防火シャッターと違うのか|火災感知装置から開閉弁まで5つの視点で解説

水幕設備の感知と給水を支える5つの用語のアイキャッチ画像

防火扉や防火シャッターは、感知器が煙や熱をとらえると連動制御器を通じて自動的に閉鎖します。
ところが同じ「火災を感知して閉じる」設備でも、水幕設備(ドレンチャー等)は感知から作動までの経路や装置の呼び方がまったく異なります。
「火災感知装置」「加圧送水装置」「ポンプ付属装置」「開閉弁」という聞き慣れない用語も、水幕設備特有の給水の仕組みとセットで見れば整理できます。
この記事では、水幕設備の感知と給水を支える5つの用語を、防火扉や防火シャッターの仕組みと比べながら整理します。

うちには防火シャッターだけでなく、地下駐車場に水幕設備も付いています。
点検業者さんの説明を聞いても、シャッターの感知器の話と水幕設備の話がどう違うのか正直よく分からなくて。

防火シャッターは感知器が連動制御器を通じて閉鎖信号を出しますが、水幕設備は火災感知装置という独自の入り口から自動作動装置を経て、加圧送水装置がつくった水で幕を張ります。
まずは水幕設備だけが持つ装置の役割から整理していきましょう。

感知器の呼び方からしてもう違うんですね。
加圧送水装置やポンプ付属装置という言葉も初めて聞きました。

水を送るための装置が加わるぶん、水幕設備は用語の数も多くなります。
今日はその5つを、なぜ必要なのかという視点で順番に見ていきます。

この記事の結論
  • 熱感知器は差動式・定温式など複数の作動方式を持ち、周囲の温度変化で火災を感知する
  • 熱煙複合式感知器は熱と煙の両方を検知できるよう、2つの感知器の機能を併せ持つ
  • 火災感知装置は水幕設備だけの呼び方で、感知器のほか火災感知用ヘッドも使うことができる
  • 加圧送水装置とポンプ付属装置はセットで備え、緊急時にポンプを確実に動かす
  • 開閉弁は散水ヘッドより上流にあり、水幕を作るための水の流れを制御する

水幕設備の感知と給水を支える5つの用語を示すインフォグラフィック

熱感知器はなぜ複数の作動方式があるのか

熱感知器の作動方式を確認する女性検査員のイラスト
熱感知器は、周囲の温度が一定の基準を超えたときに火災信号を発信する感知器です。
方式によって温度をとらえる仕組みが違うため、設置場所や用途で使い分けられています。
問1 熱感知器にはどのような作動方式があるか。
答1 温度の急激な上昇をとらえる差動式、一定の温度に達すると作動する定温式のほか、熱複合式・熱アナログ式などがある。
方式が違えば、火災の何をとらえて作動させるかが変わります。
差動式は温度の変化そのものに反応するため、緩やかな温度上昇が起きる部屋にも向いています。
定温式はあらかじめ決めた温度に達したときだけ作動するので、厨房のように普段から温度が高い場所でも誤作動しにくい方式です。
どちらの方式を選ぶかは、感知器を設置する場所の温度環境によって決まります。
点検では、設置されている感知器がどの方式かを確認し、周囲の環境と食い違っていないかを見ることが大切です。

うちの感知器が差動式なのか定温式なのか、見た目では分からなくて。
点検表のどこを見れば分かりますか。

感知器の側面や検査結果表の型式欄に方式が記載されています。
次回の点検で、設置場所の温度環境と方式が合っているかも一緒に確認しますね。

熱煙複合式感知器はなぜ熱と煙の両方を見るのか

熱煙複合式感知器の仕組みを説明するイラスト
熱煙複合式感知器は、熱を感知する仕組みと煙を感知する仕組みを1つの感知器にまとめたものです。
片方の感知だけでは見落としやすい火災の初期段階も、両方の情報を組み合わせて判断します。
問2 熱煙複合式感知器とはどのような感知器か。
答2 熱感知器と煙感知器の機能を併せ持つ感知器をいう。
1つの感知器で熱と煙の両方をとらえられるのが最大の特徴です。
火災の初期は煙だけが先に発生することも、温度上昇が先に起きることもあり、どちらか一方の感知器では検知が遅れる場合があります。
熱煙複合式感知器は両方の情報を組み合わせて判定するため、単独の感知器より早い段階で火災をとらえやすくなります。
防火扉や防火シャッターの連動機構でも、煙感知器や熱感知器と並んでこの複合式が使われることがあります。
点検では、複合式が設置されている場所ほど、両方の機能が正常に働くかを確認することが重要です。

熱と煙の両方が分かるなら、複合式だけ付けておけばいいのでは、と思ってしまいます。

実際にどの方式を選ぶかは設計段階で決まっていて、あとから種類だけ変えることはできません。
点検ではあくまで、設置済みの方式が正常に働くかを確認します。

火災感知装置はなぜドレンチャー等だけの呼び方なのか

火災感知装置とスプリンクラーヘッドを確認する女性検査員のイラスト
防火扉や防火シャッターでは「感知器」と呼ぶ機器を、水幕設備では「火災感知装置」とまとめて呼びます。
これは、水幕設備が感知器以外の機器も感知に使えるためです。
問3 火災感知装置とは何か。
答3 水幕設備における自動作動装置のうち、火災を感知して自動的に起動させる装置をいい、感知器のほか、スプリンクラーヘッドを火災感知用に使用する火災感知用ヘッドも含まれる
火災感知装置という呼び方は、水幕設備が感知の手段を複数持てることを示しています。
防火扉や防火シャッターの連動機構は、煙感知器や熱感知器からの信号を連動制御器が受け取る一本の経路で閉鎖まで進みます。
一方、水幕設備は感知器に加えて、スプリンクラーヘッドを火災感知用に転用した火災感知用ヘッドからの信号でも自動作動装置を起動できます。
感知の入り口が複数あるぶん、点検では実際にどちらの機器が設置されているかを検査結果表で確認する必要があります。
火災感知装置からの信号を受け取って動き出すのが、自動作動装置です。

うちの水幕設備には、スプリンクラーヘッドみたいなものが付いているのですが、あれが火災感知用ヘッドということもあるんですね。

可能性はあります。
検査結果表に記載がありますので、次回一緒に確認しましょう。

加圧送水装置とポンプ付属装置はなぜセットで備えるのか

加圧送水装置とポンプ付属装置を点検する男性検査員のイラスト
水幕を作るには、散水ヘッドまで絶え間なく水を送り続ける必要があります。
そのための主役が加圧送水装置で、いざというときに止まらないようポンプ付属装置が支えています。
問4 加圧送水装置とポンプ付属装置にはどのような関係があるか。
答4 加圧送水装置は水幕設備の散水ヘッドに加圧水を供給する装置で、ポンプ・電動機・制御盤等を組み合わせたものをいい、ポンプ付属装置はポンプ方式を採用した場合に緊急時も確実に運転できるようにするための付属装置をいう。
加圧送水装置は単体では働かず、ポンプ付属装置に支えられて初めて緊急時に動きます。
ポンプ付属装置には、ポンプの呼び水を確保する呼水装置が含まれます。
そのほかにも性能を確認する性能試験装置や、長時間の運転による水温上昇を防ぐ逃し配管などが含まれます。
これらはふだん目立ちませんが、火災という一度きりの場面でポンプを確実に動かすための備えです。
点検では、加圧送水装置本体だけでなく、こうした付属装置が揃っているかどうかも確認の対象になります。
水を送る力が確保されて初めて、次に説明する開閉弁が意味を持ちます。

ポンプ室にある機械類、どれが加圧送水装置でどれが付属装置なのか、正直見分けが付きません。

点検では検査結果表と照らし合わせながら機器の対応をご説明します。
普段は見分けが付かなくても心配いりません。

開閉弁はなぜ散水ヘッドの上流に必要なのか

開閉弁を確認する女性検査員のイラスト
水幕設備の散水ヘッドは、多くの場合ノズルが常に開いた状態になっています。
このため、水を流すか止めるかを決める役目は、ヘッドではなく別の場所にある弁が担っています。
問5 開閉弁とはどのような役割を持つ弁か。
答5 散水ヘッドに供給する配管の上流にあって管路を開閉し、散水ヘッドに供給する水を制御する弁をいう。
散水ヘッドが開いたままでも、開閉弁が閉じていれば水幕は形成されません。
火災感知装置からの信号を受けた自動作動装置は、この開閉弁を開くことで初めて散水を始めさせます。
つまり、感知から放水までの最後のスイッチが開閉弁ということになります。
点検では、開閉弁が確実に開閉できる状態にあるか、手動での操作性も含めて確認します。
ここまでの5つの用語がそろって、水幕設備は感知から放水まで一連の動きを完成させます。

散水ヘッドさえ点検すれば十分だと思っていましたが、開閉弁も見てもらう必要があるんですね。

はい、開閉弁が固着していると散水ヘッドが正常でも水幕は張れません。
点検では両方をあわせて確認します。

よくある質問

Q火災感知装置と熱感知器は同じものですか?
Aいいえ、火災感知装置は水幕設備における感知の仕組み全体を指す呼び方で、その中に熱感知器や熱煙複合式感知器、火災感知用ヘッドが含まれます。熱感知器はあくまで火災感知装置を構成する部品の一つです。
Q熱煙複合式感知器はどんな場所に向いていますか?
A熱と煙のどちらか一方だけでは判定が遅れやすい場所で、早期の火災感知に役立ちます。ただしどの感知器を選ぶかは設計段階で決まっており、設置後に種類を変えることはできません。
Qポンプ付属装置が壊れていても、水幕設備は動きますか?
A加圧送水装置本体が動いても、ポンプ付属装置の不具合により緊急時にポンプを起動できないおそれがあります。定期検査で呼水装置や性能試験装置の状態もあわせて確認することが必要です。
Q開閉弁は誰が操作するものですか?
A通常は火災感知装置からの信号を受けた自動作動装置が自動的に開閉弁を操作しますが、手動作動装置による手動操作も可能です。点検では自動・手動の両方の操作性を確認します。

まとめ

熱感知器は差動式・定温式など複数の作動方式で温度変化をとらえる
熱煙複合式感知器は熱と煙の両方の機能を併せ持つ
火災感知装置は水幕設備だけの呼び方で、感知器と火災感知用ヘッドの両方を含む
加圧送水装置は散水ヘッドに加圧水を供給する装置である
ポンプ付属装置は緊急時にポンプを確実に動かすための備えである
開閉弁は散水ヘッドより上流で水の流れを制御する
5つの用語がそろって、水幕設備は感知から放水までの流れを完成させる

感知の入り口も、水を送る仕組みも、防火シャッターとはまったく別物だと分かりました。
次の点検では、水幕設備側の用語も意識して聞いてみます。

火災感知装置や加圧送水装置は、水幕設備ならではの大切な仕組みです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条・第112条第19項第2号
  • 昭和48年建設省告示第2563号

※本記事は執筆時点の法令等に基づき一般的な情報を解説するものであり、個別の建築物における判断を保証するものではありません。実際の点検・報告に際しては、必ず最新の法令及び所管行政庁の指導によってご確認ください。

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