防火扉や防火シャッターは、感知器が煙や熱をとらえると連動制御器を通じて自動的に閉鎖します。
ところが同じ「火災を感知して閉じる」設備でも、水幕設備(ドレンチャー等)は感知から作動までの経路や装置の呼び方がまったく異なります。
「火災感知装置」「加圧送水装置」「ポンプ付属装置」「開閉弁」という聞き慣れない用語も、水幕設備特有の給水の仕組みとセットで見れば整理できます。
この記事では、水幕設備の感知と給水を支える5つの用語を、防火扉や防火シャッターの仕組みと比べながら整理します。
うちには防火シャッターだけでなく、地下駐車場に水幕設備も付いています。
点検業者さんの説明を聞いても、シャッターの感知器の話と水幕設備の話がどう違うのか正直よく分からなくて。
防火シャッターは感知器が連動制御器を通じて閉鎖信号を出しますが、水幕設備は火災感知装置という独自の入り口から自動作動装置を経て、加圧送水装置がつくった水で幕を張ります。
まずは水幕設備だけが持つ装置の役割から整理していきましょう。
感知器の呼び方からしてもう違うんですね。
加圧送水装置やポンプ付属装置という言葉も初めて聞きました。
水を送るための装置が加わるぶん、水幕設備は用語の数も多くなります。
今日はその5つを、なぜ必要なのかという視点で順番に見ていきます。
- 熱感知器は差動式・定温式など複数の作動方式を持ち、周囲の温度変化で火災を感知する
- 熱煙複合式感知器は熱と煙の両方を検知できるよう、2つの感知器の機能を併せ持つ
- 火災感知装置は水幕設備だけの呼び方で、感知器のほか火災感知用ヘッドも使うことができる
- 加圧送水装置とポンプ付属装置はセットで備え、緊急時にポンプを確実に動かす
- 開閉弁は散水ヘッドより上流にあり、水幕を作るための水の流れを制御する
▼

目次
熱感知器はなぜ複数の作動方式があるのか

方式によって温度をとらえる仕組みが違うため、設置場所や用途で使い分けられています。
差動式は温度の変化そのものに反応するため、緩やかな温度上昇が起きる部屋にも向いています。
定温式はあらかじめ決めた温度に達したときだけ作動するので、厨房のように普段から温度が高い場所でも誤作動しにくい方式です。
どちらの方式を選ぶかは、感知器を設置する場所の温度環境によって決まります。
点検では、設置されている感知器がどの方式かを確認し、周囲の環境と食い違っていないかを見ることが大切です。
うちの感知器が差動式なのか定温式なのか、見た目では分からなくて。
点検表のどこを見れば分かりますか。
感知器の側面や検査結果表の型式欄に方式が記載されています。
次回の点検で、設置場所の温度環境と方式が合っているかも一緒に確認しますね。
熱煙複合式感知器はなぜ熱と煙の両方を見るのか

片方の感知だけでは見落としやすい火災の初期段階も、両方の情報を組み合わせて判断します。
火災の初期は煙だけが先に発生することも、温度上昇が先に起きることもあり、どちらか一方の感知器では検知が遅れる場合があります。
熱煙複合式感知器は両方の情報を組み合わせて判定するため、単独の感知器より早い段階で火災をとらえやすくなります。
防火扉や防火シャッターの連動機構でも、煙感知器や熱感知器と並んでこの複合式が使われることがあります。
点検では、複合式が設置されている場所ほど、両方の機能が正常に働くかを確認することが重要です。
熱と煙の両方が分かるなら、複合式だけ付けておけばいいのでは、と思ってしまいます。
実際にどの方式を選ぶかは設計段階で決まっていて、あとから種類だけ変えることはできません。
点検ではあくまで、設置済みの方式が正常に働くかを確認します。
火災感知装置はなぜドレンチャー等だけの呼び方なのか

これは、水幕設備が感知器以外の機器も感知に使えるためです。
防火扉や防火シャッターの連動機構は、煙感知器や熱感知器からの信号を連動制御器が受け取る一本の経路で閉鎖まで進みます。
一方、水幕設備は感知器に加えて、スプリンクラーヘッドを火災感知用に転用した火災感知用ヘッドからの信号でも自動作動装置を起動できます。
感知の入り口が複数あるぶん、点検では実際にどちらの機器が設置されているかを検査結果表で確認する必要があります。
火災感知装置からの信号を受け取って動き出すのが、自動作動装置です。
うちの水幕設備には、スプリンクラーヘッドみたいなものが付いているのですが、あれが火災感知用ヘッドということもあるんですね。
可能性はあります。
検査結果表に記載がありますので、次回一緒に確認しましょう。
加圧送水装置とポンプ付属装置はなぜセットで備えるのか

そのための主役が加圧送水装置で、いざというときに止まらないようポンプ付属装置が支えています。
ポンプ付属装置には、ポンプの呼び水を確保する呼水装置が含まれます。
そのほかにも性能を確認する性能試験装置や、長時間の運転による水温上昇を防ぐ逃し配管などが含まれます。
これらはふだん目立ちませんが、火災という一度きりの場面でポンプを確実に動かすための備えです。
点検では、加圧送水装置本体だけでなく、こうした付属装置が揃っているかどうかも確認の対象になります。
水を送る力が確保されて初めて、次に説明する開閉弁が意味を持ちます。
ポンプ室にある機械類、どれが加圧送水装置でどれが付属装置なのか、正直見分けが付きません。
点検では検査結果表と照らし合わせながら機器の対応をご説明します。
普段は見分けが付かなくても心配いりません。
開閉弁はなぜ散水ヘッドの上流に必要なのか

このため、水を流すか止めるかを決める役目は、ヘッドではなく別の場所にある弁が担っています。
火災感知装置からの信号を受けた自動作動装置は、この開閉弁を開くことで初めて散水を始めさせます。
つまり、感知から放水までの最後のスイッチが開閉弁ということになります。
点検では、開閉弁が確実に開閉できる状態にあるか、手動での操作性も含めて確認します。
ここまでの5つの用語がそろって、水幕設備は感知から放水まで一連の動きを完成させます。
散水ヘッドさえ点検すれば十分だと思っていましたが、開閉弁も見てもらう必要があるんですね。
はい、開閉弁が固着していると散水ヘッドが正常でも水幕は張れません。
点検では両方をあわせて確認します。
よくある質問
まとめ
感知の入り口も、水を送る仕組みも、防火シャッターとはまったく別物だと分かりました。
次の点検では、水幕設備側の用語も意識して聞いてみます。
火災感知装置や加圧送水装置は、水幕設備ならではの大切な仕組みです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条・第112条第19項第2号
- 昭和48年建設省告示第2563号
※本記事は執筆時点の法令等に基づき一般的な情報を解説するものであり、個別の建築物における判断を保証するものではありません。実際の点検・報告に際しては、必ず最新の法令及び所管行政庁の指導によってご確認ください。





