定期検査報告書には、毎年すべてを検査しなくても構わない「3年までの間に1回行う検査項目」という区分があります。
換気設備・排煙設備・給水設備及び排水設備のあわせて14項目がこの対象で、東京都では専用の年度別実施状況表を使って計画的に報告します。
どの項目が対象になるのか、そして実施状況表をどう埋めればよいのかを整理していないと、報告の抜け漏れにつながります。
本記事では、制度の位置づけから換気・排煙・給排水それぞれの対象項目、年度別実施状況表の記入方法までを解説します。
換気や排煙の点検はどれも毎年やってもらっていますが、「3年に1回でいい項目」があると聞きました。
うちの建物も対象になるのでしょうか。
建物によりますが、換気・排煙・給排水のあわせて14項目が対象です。
まずはどの項目が当てはまるかを確認しましょう。
実施状況表という書類も別にあるみたいで、書き方がよく分かりません。
はい、3年間の検査計画を記録するための書式です。
今回の記事で記入のポイントまで整理しますね。
- 「3年までの間に1回行う検査項目」は、施行規則第6条第1項が定める国土交通大臣指定の検査項目のことで、報告の間隔を1年から3年まで延ばせる
- 対象は換気設備の8項目、排煙設備の5項目、給水設備及び排水設備の1項目、あわせて14項目に限られる
- 換気設備は各居室の換気量や温度・湿度など、排煙設備は排煙風量や中央管理室の監視など、いずれも数値測定や複数箇所の確認に手間がかかる項目が選ばれている
- 東京都は「3年以内に1回全数検査」または「3年以内に分割して全数検査」のいずれかの方法で実施することを求めている
- 実施状況表には初年度から終年度までの3年間について、実施箇所数と指摘の概要を年度ごとに記入する
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目次
「3年までの間に1回行う検査項目」とはどんな制度なのか

けれども、一部の項目だけは検査の間隔を延ばせる特別な扱いがあります。
東京都は東京都建築基準法施行細則第13条第2項の規定により、この大臣指定項目を「3年までの間に1回行う検査項目」として運用しており、対象があれば年度別実施状況表の提出が必要になります。
対象になる項目は全部で14項目で、換気設備・排煙設備・給水設備及び排水設備の3つの検査結果表にまたがっています。
どの項目が対象かは平成20年国土交通省告示第285号第1に具体的に列挙されており、次の見出しから設備ごとに見ていきます。
対象項目があるかどうかは定期検査報告書第一面の備考欄に記入する仕組みになっているため、まずここで見落とさないことが大切です。
うちは毎年全部の項目を検査してもらっていますが、それでも問題ないんですよね。
はい、毎年全数検査しても問題ありません。
大臣指定項目は「延ばしてもよい」という扱いなので、毎年実施している分には支障ありません。
換気設備で対象になる8項目とは何か

設置状況や取付けといった外観の項目は、この扱いに含まれません。
各居室の換気量はV=20Af/Nという式で求める必要有効換気量が基準になり、詳しい算定方法はほかの記事でも解説しています。
中央管理室における制御及び作動状態の監視の状況は、設備を集中管理している建物特有の項目です。
残る温度・相対湿度・浮遊粉じん量・一酸化炭素含有率・二酸化炭素含有率・気流の6項目は、いずれも計測器を使って居室ごとに測る性能項目のため、全数を毎年測ると負担が大きく抽出検査になじみます。
これらの項目に該当するかどうかは、まず中央管理方式の空気調和設備を含む機械換気設備が設けられているかどうかで判断します。
換気量の計算式は、別の記事で見た気がします。
そうですね。
詳しい算定方法はそちらの記事にゆずり、この記事では「どの項目が3年周期の対象か」を中心に整理しています。
排煙設備で対象になる5項目とは何か

大臣指定項目は、このうち2つの方式にまたがって指定されています。
機械排煙設備では検査事項(18)排煙口の排煙風量と検査事項(19)中央管理室における制御及び作動状態の監視の状況が対象です。
特殊な構造の排煙設備でも、同じ内容が検査事項(37)(38)として別途指定されています。
加圧防排煙設備は遮煙開口部の性能(排出風速)である検査事項(24)だけが対象で、給気送風機の外観や吸込口といったほかの項目は毎年の検査が必要です。
同じ「排煙風量の測定」でも排煙機側は大臣指定項目ではないため毎年検査が必要になる点は、記録表の記入方法を扱った記事で詳しく解説しています。
排煙口の風量は3年に1回でいいのに、排煙機の風量は毎年なんですね。
はい、同じ「風量測定」でも対象が違いますので、記録表を作るときは根拠条文まで確認しておくと安心です。
給水設備及び排水設備でなぜ雑用水の用途だけが対象なのか

そのなかで大臣指定項目にあたるのは、たった1項目だけです。
受水槽や高置水槽の設置状況、給水管の材質や防錆といった項目は、劣化や損傷の進み方を早期に把握する必要があるため毎年の確認が求められます。
一方、雑用水の用途表示は配管や水栓に誤用防止の表示があるかという確認が中心で、経年劣化の速さが問題になる項目ではありません。
このため3つの設備のなかで唯一、抽出検査になじむ項目として指定されています。
対象になる建築物でも、雑用水設備そのものがなければこの項目自体が該当しません。
うちのビルは雑用水を使っていないので、この項目は関係ないんですね。
そのとおりです。
該当する設備がなければ、実施状況表にも書く必要はありません。
年度別実施状況表はどうやって記入すればよいのか

3年間の検査計画を年度ごとに記録する書式です。
各年度の欄には「全数を実施」「実施せず」「一部実施(次年度に繰越)」のいずれかにチェックを入れ、実施箇所数を分子分母の形で記入します。
分割して検査する場合、2年目・3年目の欄には「当年度で全数実施」を選べる欄もあり、最終年度には検査が完了したことが分かる印が付きます。
指摘があった場合は指摘の概要欄に内容を記入し、備考欄にも必要な情報を書き添えます。
定期検査報告書第一面の備考欄で「国土交通大臣が定める検査項目の有無」に記入したうえで、この実施状況表をあわせて提出する流れになります。
チェックの種類がいろいろあって、迷ってしまいそうです。
最初の年に全部終わらせるか、3年かけて分けるかを決めてから記入すると迷いません。
迷ったときはご相談ください。
よくある質問
まとめ
どの項目が対象で、実施状況表をどう書けばいいかがよく分かりました!
まずは自分の建物にあてはまる項目を確認してみます。
対象項目の見きわめや実施状況表の記入でお困りの際は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行規則第6条第1項(定期検査報告の時期。e-Gov法令検索)
- 平成20年国土交通省告示第285号第1(建築設備の定期検査報告における検査の項目等を定める件。最終改正:令和7年1月29日国土交通省告示第53号)
- 東京都建築基準法施行細則第13条第2項(東京都における「3年までの間に1回行う検査項目」の運用根拠)
- 東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版(年度別実施状況表の記入例)
※本記事は公表されている法令および東京都の実務マニュアルにもとづく一般的な解説です。実施状況表の様式や運用は特定行政庁によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門業者にご確認ください。




