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廃タイヤ集積事業所の消火設備になぜ泡消火薬剤が求められたのか|RDF火災に同じ効果が出なかった検証結果を解説

タイヤ火災の泡消火剤はなぜRDFに効かないのかを解説する記事のアイキャッチ画像

古タイヤを大量に積み上げた事業所で火災が起きると、消火に何日もかかることがあります。
消防庁は危険物保安技術協会に検討を委託し、タイヤ火災とRDF火災の消火効果を比較する実験を行いました。
その結果は、タイヤ火災には効く対策が、RDF火災にはそのまま通用しないという意外なものでした。
本記事では通知が示した検証結果と、施設側が明日から確認すべきことを解説します。

うちはタイヤの加工品を扱っていて、火が出たらすぐには消えないと聞いたことがあります。

その心配は正しいです。
実は消防庁が実際に検証した結果が通知として出ています。

その結果、どんな内容だったんですか。

タイヤ火災とRDF火災で、効く対策が違うと分かったんです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • タイヤ火災には泡消火薬剤等を混ぜた水が効果的だと消防庁の検証で確認されました
  • 根拠は平成17年3月31日 消防予第70号・消防危第66号の通知です。
  • 対象はタイヤ製造工場や古タイヤ加工工場などタイヤ屑を大量に集積する事業所です。
  • 同じ薬剤をRDF火災に使っても水との間に有意な差は見られませんでした
  • 設置を検討する際は報告書に示された実験データを参考にする必要があります。

タイヤ火災とRDF火災で分かれた消火効果を示す図解。タイヤ屑の集積事業所、泡消火薬剤等の混合、タイヤ火災は効果向上、RDF火災は有意差なしという流れを整理

廃タイヤ火災はなぜ消防庁の検証を招いたのか

大量に積み上げられたタイヤの山から炎と黒煙が上がり消防車が放水するイメージ
大きなタイヤの山に一度火がつくと、簡単には消えません。
なぜ消防庁がわざわざ検証に乗り出したのかを確認します。
近年、大規模自然災害に加え、企業災害の発生が目立っているところであり、これらに適切に対応することが消防防災行政の緊急の課題となっています。特に、平成11年1月2日に発生した「佐野市赤見町廃タイヤ火災」、平成15年8月14日に発生した「三重県ゴミ固形燃料発電所爆発事故」、平成15年9月8日に発生した「ブリヂストン栃木工場火災」は、いずれも消火困難性が高く火災が長時間にわたり継続し、社会に与える影響も大きな火災でした。また、最近では本年3月14日に「秋田県タイヤチップ貯蔵庫火災」も発生しています。(「タイヤ・RDFに係る消火のあり方に関する調査検討報告書」の送付及び留意事項について 平成17年3月31日 消防予第70号・消防危第66号)
連続した消火困難な火災が検討のきっかけです
平成11年から平成17年にかけて、タイヤや廃棄物由来燃料が絡む大きな火災が相次ぎました。
中でも佐野市赤見町の廃タイヤ火災は、消火に長期間を要したことで知られています。
これを受け消防庁は危険物保安技術協会に検討を委託し、平成16年度に検討会を設置しました。
通知はその検討結果を踏まえ、全国の消防機関に指導内容を周知するために発出されました。

うちの近くにもタイヤの集積場があります。
あんなに大きな火事になるものなんですね。

長時間燃え続けると近隣への影響も大きくなります。
だからこそ検証が行われました。

どんな施設の消火設備が対象になるのか

タイヤ加工工場とRDF貯蔵倉庫を並べて示すイメージ
通知が名指ししているのは、一般のビルではありません。
どんな事業所が対象になるのかを確認します。
合成界面活性剤泡消火薬剤又は水成膜泡消火剤(以下「泡消火薬剤等」という。)を水に一定の比率(報告書P7表3.3.1及び表3.3.2参照)で混合したものは、タイヤ火災に対し、水に比べて大きな消火効果が期待できるため、タイヤ製造工場、古タイヤ加工工場など、タイヤ屑を大量に集積する事業所には、水に泡消火薬剤等を混入して消火することができる消防設備を積極的に設置するよう指導すること。(「タイヤ・RDFに係る消火のあり方に関する調査検討報告書」の送付及び留意事項について 平成17年3月31日 消防予第70号・消防危第66号)
対象はタイヤ屑を大量に扱う事業所です
通知が名指ししているのは、タイヤ製造工場や古タイヤ加工工場のように、タイヤ屑を大量に集積する事業所です。
一般のビルや店舗が対象になるものではなく、産業廃棄物としての廃タイヤやゴム屑を大量に保管・処理する現場が主な読者になります。
同じ検討会はRDF(ごみ固形燃料)を製造・貯蔵する施設もあわせて検証しており、こちらもこの通知の対象に含まれます。
まずは自分の事業所がどちらか、あるいは両方に当てはまるかを確認することが出発点です。

うちはタイヤではなくRDFを扱っています。
それでも対象になりますか。

はい、含まれます。
ただしこのあと説明する対策の効き方はタイヤと同じではありません。

検証実験はタイヤ火災に何を明らかにしたのか

混合装置とノズルでタイヤの山に放水し火勢が弱まるイメージ
薬剤を混ぜるだけで、消火効果はどう変わるのでしょうか。
検討会の実験結果を見てみましょう。
タイヤ火災が発生した場合の消防活動においても、水に泡消火薬剤等を混入して消火すると消火効果が高くなるので、留意されたいこと。(「タイヤ・RDFに係る消火のあり方に関する調査検討報告書」の送付及び留意事項について 平成17年3月31日 消防予第70号・消防危第66号)
泡を混ぜた水はタイヤ火災に効果を発揮します
検討会は合成界面活性剤泡消火薬剤又は水成膜泡消火剤を一定の比率で水に混合し、実際にタイヤへ放射する実験を行いました。
その結果、水だけで消火するよりも消火効果が高くなることが確認され、通知はこの設備を積極的に設置するよう消防機関に指導を求めています。
希釈の比率は薬剤の種類や製造業者によって変わるため、報告書に示された実験データが参考資料として添えられています。
つまり「泡を混ぜれば早く消える」という単純な話ではなく、比率まで含めて検証された結果だということです。

薬剤を混ぜるだけで、そんなに効果が変わるんですね。

そうです。
ただし比率が重要なので、思いつきで混ぜるものではありません。

RDF火災ではなぜ同じ対策が効かないのか

泡消火薬剤で消えるタイヤの山と燃え続けるRDF燃料の対比イメージ
タイヤに効くなら、RDFにも同じように効くはずだと思うかもしれません。
ところが検証結果はそうなりませんでした。
RDF火災に対しては、今回の実験では、水に一定の割合で泡消火薬剤等を混入しても水に比べ消火効果に有意な差が見られなかったが、全ての消火薬剤の消火効果について検討してはおらず、今後、消火薬剤製造業者等の実験・研究等により、水より消火効果の高い消火薬剤の開発がなされることも想定されることから、その場合は、当庁予防課又は危険物保安室に連絡願いたいこと。(「タイヤ・RDFに係る消火のあり方に関する調査検討報告書」の送付及び留意事項について 平成17年3月31日 消防予第70号・消防危第66号)
RDF火災には同じ対策が通用しませんでした
同じ実験でRDFに水と泡消火薬剤等の混合水を放射したところ、水単独との間に有意な差は確認されませんでした。
タイヤと同じ発想で設備を導入しても、RDF火災では期待した効果が得られない可能性があるということです。
通知はこの結果を全ての薬剤を検討したわけではないと留保しており、将来の薬剤開発によって状況が変わる余地も残しています。
現時点でRDF施設に泡消火薬剤等を導入する場合は、効果を過信せず消防機関に相談することが欠かせません。

てっきりタイヤと同じように効くと思っていました。

多くの方がそう考えます。
ですが今回の検証ではRDF火災に有意な差は出ませんでした。

施設側は明日から何を確認すればよいのか

担当者が書類を手に混合弁設備を確認するイメージ
最後に、施設側で明日からできることを整理します。
難しい手続きではなく、確認と相談が中心です。
泡消火薬剤等の種類、製造業者等が異なると、有効な希釈容量濃度が異なる可能性があるので、設置に当たっては、必要に応じ、報告書P4からP6に示す実験のデータ等に準じた試験のデータ等を参考にすること。また、指導の結果、当該設備が設置されることとなった場合は、必要に応じ、当庁予防課又は危険物保安室に連絡願いたいこと。(「タイヤ・RDFに係る消火のあり方に関する調査検討報告書」の送付及び留意事項について 平成17年3月31日 消防予第70号・消防危第66号)
導入前に報告書のデータを確認しましょう
泡消火薬剤等の種類や製造業者が変わると、有効な希釈容量濃度も変わる可能性があります。
設置を検討する際は、報告書に示された実験データに準じた試験データを業者に確認してもらうことが求められています。
そのうえで、指導の結果として設備が設置されることになった場合は、必要に応じて消防庁予防課又は危険物保安室への連絡が想定されています。
RDF施設の場合は、既存の水系設備を前提にしつつ、新しい薬剤の開発状況を定期的に確認しておくとよいでしょう。

うちの設備の薬剤が何の種類か、まず確認してみます。

それが第一歩です。
報告書のデータと合わせて業者に確認してもらいましょう。

よくある質問

Qタイヤ火災に泡消火薬剤を使えば必ず消火できますか?
Aいいえ。通知が示すのは水単独より消火効果が高くなるという検証結果であり、確実な鎮火を保証するものではありません。
QRDFを貯蔵する施設ではどんな対策を取ればよいですか?
A通知の時点では泡消火薬剤等の効果に有意な差が確認されていません。既存の水系消火設備を前提に、新しい薬剤の開発状況を消防機関に確認しながら運用するのが現実的です。
Qこの通知は消防法令上の設置義務を新しく定めていますか?
Aいいえ。通知は消防機関が事業所を指導する際の参考として示されたもので、法令上の設置義務そのものを新設するものではありません。
Q平成17年の通知なので今の設備選定には使えないのではないですか?
A通知が示すのは薬剤と可燃物の組み合わせによる消火効果の実験結果であり、条文改正の影響を受けない内容です。ただし薬剤の性能自体は更新されるため、最新の情報は製造業者や消防機関に確認してください。

まとめ

通知は「タイヤ・RDFに係る消火のあり方に関する調査検討報告書」の送付及び留意事項について(平成17年3月31日 消防予第70号・消防危第66号)です
背景には佐野市赤見町廃タイヤ火災など消火困難性の高い火災の連続がありました
合成界面活性剤泡消火薬剤又は水成膜泡消火剤を水に混合すると、タイヤ火災の消火効果が高まることが確認されました
対象はタイヤ製造工場や古タイヤ加工工場などタイヤ屑を大量に集積する事業所です
RDF火災では同じ薬剤を混合しても水との間に有意な差は見られませんでした
泡消火薬剤等の種類や製造業者によって希釈濃度が変わるため、設置前に報告書のデータを確認する必要があります
設備を設置した場合は、必要に応じて消防庁予防課又は危険物保安室へ連絡することとされています

タイヤとRDFで対策の効き方が違うなんて知りませんでした。
報告書のデータも確認してみます。

はい、薬剤の種類や比率は事業所ごとに変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「タイヤ・RDFに係る消火のあり方に関する調査検討報告書」の送付及び留意事項について(平成17年3月31日 消防予第70号・消防危第66号 消防庁予防課長・消防庁危険物保安室長)
  • 危険物保安技術協会「タイヤ・RDFに係る消火のあり方検討会」報告書(平成16年度 財団法人消防試験研究センター委託事業)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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