消火薬剤や消火設備は「性能が同等なら認められる」と思われがちですが、実際の照会では認められたものと認められなかったものがはっきり分かれています。
建物全体が危険物施設なら消防法第17条の基準は要らないのか。
規格に適合しない消火器は使えないのか。
金属ナトリウムに使える薬剤を性質の似た金属粉にも流用できるのか。
実際の質疑応答をもとに、何をもって認められるのかを解説します。
工場1棟まるごとが危険物製造所やねん。
ほんなら消防法第17条の消防用設備等も、工場としてぜんぶ入れなあかんの?
消防法第10条第4項のみでよいとされています。
この規定は第17条に対して特別法たる地位を有するという整理です。
ほんなら消火薬剤も、性質が似てる危険物になら流用できるやんな。
金属ナトリウムに使えるんやったら金属粉にもいけるやろ。
それは認めることはできないとされました。
消火効果が明らかでないという理由です。この記事でまとめて解説します!
- 危険物施設に設置すべき消防用設備等に関する消防法第10条第4項の規定は、消防法第17条に対して特別法たる地位を有する
- 工場の一部分に危険物製造所がある場合は、その部分は法第10条第4項により設置し、これを除いた部分に法第17条による消防用設備等を設置する
- 消防法第21条の2第2項の技術上の規格に適合しない消火器は、当該危険物に適応する消火設備として認めることはできない
- ただし乾燥砂と同等以上の消火性能を有すると認められる消火薬剤は、政令第23条により乾燥砂に代わるものとして認められる(金属ナトリウムに対して30キログラムで1能力単位)
- 性質が類似していても、消火効果が明らかでない危険物への流用は認められない
- 固定泡放出口を上下に2個設けて片方をメクラ止めし、種類や数量の変更に応じて位置を変える方法は認められない
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目次
危険物施設の消防用設備等は法第10条第4項が優先する

危険物製造所等の消防用設備等は、消防法第10条第4項にもとづき危険物の取扱または貯蔵の数量(指定数量の倍数)によって設置基準が定められています。一方で消防法第17条にもとづき、防火対象物である工場等には建物の延面積によって消防用設備等の設置基準が定められています。この関係について照会がありました。
まず、工場1棟全部が危険物製造所(または一般取扱所)である場合、消防用設備等は法第10条第4項にのみ適合すればよいか、または法第17条の規定と双方に適合すべきかという問いです。
危険物施設に設置すべき消防用設備等に関する法第10条第4項の規定は、消防用設備等の設置に関する一般規定たる法第17条に対し、特別法たる地位を有するものである
一般法と特別法の関係で説明されている点が重要です。危険物施設については専用の基準があるため、一般の防火対象物の基準は適用されません。
あわせて、危険物製造所等であるために一般の工場等より設備の基準が軽減されることもあるが差し支えないかという問いにもお見込みのとおりと回答されています。
工場の一部だけが危険物施設なら残りは法第17条による

同じ照会では、工場の一部分に危険物製造所(または一般取扱所)がある場合の扱いも問われています。危険物製造所の部分は法第10条第4項により設置し、これを除いた部分には工場として法第17条の規定による消防用設備等を設置すべきか、または工場全体に法第17条の基準を適用すべきか、という内容です。
特別法が及ぶのは危険物施設として許可を受けた範囲だけです。建物の中に危険物施設があるからといって、建物全体が特別扱いになるわけではありません。
実務では、この境界がそのまま2つの基準の適用範囲の境界になります。施設の範囲をどこまでとするかが消防用設備等の設計にも直結します。
規格に適合しない消火器は消火設備として認められない

第三類危険物である金属ナトリウムの消火薬剤について、実験結果のナトレックスの消火器は第三類危険物に適応するものと認めてよいか、という照会がありました。
実験で消火効果が確認されていても、消火器としての規格に適合していなければ消火器にはなりません。
同じ考え方は他の照会にも表れています。移動式粉末消火設備が政令第20条でいう第三種の消火設備に該当するかという問いには該当しないと回答されています。
また、第三種泡消火設備の泡薬剤として従来は動物性蛋白質を主剤とするものが使われてきたところ、界面活性剤を主剤とする泡薬剤を屋外タンク貯蔵所の消火設備用に使用したいという願い出についても適用できないと回答されました。なお、この点については目下検討中であるので、その取扱いについて結論が出次第おって通知する予定であると付記されています。
乾燥砂と同等以上の性能なら政令第23条で代替できる

一方で、消火器として認められない場合の次の道が示されています。ナトレックスについて、消火薬剤のみ乾燥砂に代わるものとして認めて差し支えないかという問いです。
設問の消火薬剤は、第五種の消火設備のうち乾燥砂と同等以上の消火性能を有するものと認められるので、危険物の規制に関する政令第23条の規定を適用し、乾燥砂に代わるものとしてさしつかえない
さらに能力単位まで示されています。金属ナトリウムに対する能力単位は当該消火薬剤30キログラムをもって1能力単位とされました。
同種の消火薬剤であるマイラックスについても、同じく乾燥砂に代わるものとして差し支えなく、能力単位も30キログラムで1能力単位と回答されています。
ここが実務上の分かれ道です。消火器としては規格に適合しなくても、第五種の乾燥砂の代替として政令第23条で認められる余地があるということです。求める立て方を変えれば道が開けます。
性質が似ていても消火効果が不明なら流用できない

ナトレックスが金属ナトリウムに対して30キログラムで1能力単位と認められたことを受けて、第三類危険物である金属ナトリウムと性質の類似している第二類危険物の金属粉AおよびBに対しても同様に認められるか、認められる場合は何キログラムをもって能力単位1とするかという照会がありました。
判断の軸はその危険物に対する消火効果が確認されているかの一点です。性質が類似しているという理由では足りません。対象となる危険物ごとに消火効果を示す必要があるという整理です。
あわせて、屋外タンク貯蔵所で危険物の比重が変わる場合について、固定泡放出口を上下に2個設けて片方をメクラ止めし、種類や数量の変更に応じてノズル位置を上下させることで変更を認めてよいかという照会もありました。回答は認められないです。設備を可変にしておいて運用で切り替えるという方法は取れません。
よくある質問
まとめ
- 危険物施設の消防用設備等に関する消防法第10条第4項は、法第17条に対して特別法たる地位を有する
- 工場の一部分だけが危険物施設の場合、その部分は法第10条第4項、残りは法第17条による
- 消防法第21条の2第2項の技術上の規格に適合しない消火器は、危険物に適応する消火設備として認められない
- 移動式粉末消火設備は第三種の消火設備に該当せず、界面活性剤を主剤とする泡薬剤も当時は適用できないとされた
- 乾燥砂と同等以上の消火性能を有する消火薬剤は、政令第23条により乾燥砂に代わるものとして認められる(金属ナトリウムに対して30キログラムで1能力単位)
- 性質が類似していても消火効果が明らかでない危険物への流用は認められず、固定泡放出口を上下2個設けて切り替える方法も認められない
消火器としてはあかんけど、乾燥砂の代わりとしてなら通るんやな。
そのとおりです。
求める立て方を変えれば道が開けます。ただし対象の危険物ごとに消火効果を示すことが前提です。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条第4項・第17条・第21条の2第2項 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第20条・第23条 e-Gov法令検索
- 消防用設備等に関する消防法第17条防火対象物と危険物施設との関係について(昭和42年11月29日付け自消丙予発第102号 予防課長から佐賀県総務部長あて回答)
- 第三類危険物(金属ナトリウム)の消火薬剤(ナトレックス)について(昭和45年5月26日付け消防予第104号 予防課長から茨城県総務部長あて回答)
- 第二類危険物(金属粉A・B)に対する消火薬剤ナトレックスの能力単位について(昭和47年1月6日付け消防予第2号 予防課長から埼玉県総務部長あて回答)
- 固定消火設備として使用する泡薬剤の種類について(昭和47年1月8日付け消防予第14号 予防課長から愛知県総務部長あて回答)
- 金属ナトリウムの消火薬剤について(昭和47年6月22日付け消防予第112号 予防課長から富山県あて回答)
- 移動式粉末消火設備について(昭和52年3月7日付け消防危第28号 危険物規制課長から新潟県あて回答)
- 危険物の規制に関する照会について(昭和56年7月22日付け消防危第91号 危険物規制課長から愛媛県あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)消火設備の基準に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




